研究課題/領域番号 |
21H04673
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五神 真 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (70161809)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,680千円 (直接経費: 33,600千円、間接経費: 10,080千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
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キーワード | 光物性 |
研究開始時の研究の概要 |
界面において生じる光と物質の相互作用は光による物質制御の基礎となる本質的な課題である。本研究では、我々が整備した光励起状態観測に最適化された光電子分光装置を活用して界面敏感な光電子分光測定を行う。更にストリークカメラを用いた時間分解発光計測など従来の分光手法との同時測定を組み合わせることで、固体の光励起電子状態探索の新手法の確立と界面での光励起電子ダイナミクスの新たな学理解明を目指す。
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研究実績の概要 |
A. 層状半導体を対象とした高密度励起状態の光電子分光測定: 層状半導体であるGaSeを対象とした光励起状態の光電子分光を進めた。GaSe結晶の光励起状態では励起子が形成され、かつ高強度に光励起した場合には励起子状態から電子正孔プラズマ状態に遷移するモット転移が生じると分光測定から報告されている。しかし励起子から電子正孔プラズマ状態に遷移する際に生じる励起電子の変化を光電子分光等の手法を用いて直接的に見た実験報告は未だない。本年度我々は、再生増幅器を光源としたポンプ・プローブ光電子分光測定(ポンプ光3.2 eV プローブ光6.4 eV)によって得られたGaSe結晶の光励起状態の光電子信号の解析を進めた。その上で並行してストリークカメラを用いて取得した、GaSe結晶からの時間分解発光をもとに励起子寿命を評価し、得られた光電子信号が励起子信号に対応することを見出した。さらに現在の実験配置においてモット転移を観測するのに必要な高密度光励起の条件を探った。 B.3次元半導体を対象とした測定: 3次元半導体の典型物質である亜酸化銅を対象としたポンプ・プローブ光電子分光測定を目標としている。本年度は、亜酸化銅に固有な長寿命の励起子を光電子分光測定で検出するために、亜酸化銅を光励起してから励起子が蓄積されるまでの時間スケールを時間分解発光測定をもとに評価した。 C.光触媒物質を対象とした測定:代表的な光触媒物質であるTiO2やSrTiO3等を対象として研究を進める。本年度は対象物質にプローブ光を照射の上、光電子信号の検出の条件を探った。 D.光源開発: 我々が開発している誘電体ナノメンブレンを用いた真空紫外領域における円偏光3倍波発生法は多様な励起光源に適用でき、特に光電子分光用の光源として期待される。本年度は光電子分光への活用を目指し、導入のための光学系の設計を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 項目Aとしては目標としていた、GaSe結晶の光励起状態の光電子信号から電子正孔系由来の信号を解析、評価することができた。これはポンプ・プローブ光電子分光信号と、並行して取得した時間分解発光測定結果とを照らし合わせて、相補的な議論によって実現された。 項目BとCについては、対象とする物質の光電子分光測定に必要な条件出しを進めることができた。 項目Dついては、本光源を光電子分光に実際に用いるために必要な条件を明らかにし、光電子分光装置への光導入の道筋を立てた。 以上の点を総合して、当初の計画どおり進められているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
項目Aについては、層状半導体であるGaSeを対象とした高強度光励起状態の光電子分光を進め、時間分解発光測定で得られた情報と合わせて解析を行い、その結果をまとめて報告する。項目BとCについては、これまで進めてきた試料準備を元に光電子分光測定を試み、得られた結果についての解析を行いその結果をまとめる。 項目Dについては、光電子分光装置に本手法を用いた光源を導入し、光電子分光測定における本手法の有用性を明らかにする。
以上を今後の研究の推進方策とする。
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