研究課題/領域番号 |
21H04679
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
堀内 佐智雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (30371074)
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研究分担者 |
熊井 玲児 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00356924)
石橋 章司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (30356448)
五月女 真人 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40783999)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2022年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2021年度: 21,580千円 (直接経費: 16,600千円、間接経費: 4,980千円)
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キーワード | 誘電体 / 有機結晶 / 相転移 / 結晶構造 / 分光 |
研究開始時の研究の概要 |
強電場により相転移が生じ分極が急激に増加する性質(メタ誘電性)をもつ誘電体は、電気エネルギーの貯蔵や機械/熱エネルギーとの相互転換機能への利活用の観点から、近年熱い注目を集めている。本研究では、環境適合性の高いエネルギーエレクトロニクスを実現するため、高性能のエネルギー貯蔵・変換機能をもつ有機分子材料の開発を行う。多様な分子自由度を最大限活用し、相変化型誘電体物質の拡充と新奇相を含む多様な強電場相の創出を図るとともに、強電場オペランド計測も活用し、相転移の微視的機構と構造-機能相関を明らかにする。これにより、強電場物質科学の学理の構築と、将来のデバイス開発を加速する材料設計指針の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
結晶構造データベース解析を併用した誘電体探索により、幾何学上2種類の分極反転機構が可能な、特異な水素結合型材料2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA) を見出した。頭尾結合状に配置した水酸基の一次元鎖は極性をもち、その反転にはプロトン移動と水酸基のフリップフロップの二通りの経路が想定された。密度汎関数理論(DFT)計算におけるBerry位相から得た自発分極は、その向きと大きさが両者で全く異なることが示された。分極ヒステリシス、熱物性、回折実験、光二次高調波測定などにより、分極状態や相転移に関する実評価を行った。その結果、自発分極値の大きさの理論値との整合性、同位体効果の弱さ、水素結合長に対する抗電場の小ささ、いずれにおいても、フリップフロップの機構で説明できた。 一連のフェニルテトラゾール類やイミダゾール類について単結晶構造解析、分極ヒステリシス測定、密度汎関数理論(DFT)計算を行った結果、極性(FE)や反極性(AFE)の基底状態がほぼ縮退(競合)状態を伴っている場合、常に無秩序な水素結合が生じることが明らかになった。また、水素の乱れとして、2つの異なる起源(FE状態とAFE状態が競合するケースと複数の異なるAFE秩序状態が競合するケース)を見出した。前者の場合、強誘電体特有のシングルP-Eループと反強誘電体特有の二重P-Eループのハイブリッド状の分極履歴が得られた。一方、複数のAFE秩序状態が競合し合う場合には、反強的な長距離秩序を失っているにもかかわらず、反強誘電体と変わらぬ二重ループ型の分極履歴特性が得られ、良好なエネルギー貯蔵機能が得られた。ただし、FE状態に比べAFE状態のエネルギー準位の安定化が著しい場合には、水素位置の乱れの有無にかかわらず電場誘起相転移が困難となることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のターゲットとは、強電場により相転移が生じ分極が急激に増加する性質(メタ誘電性)をもつ誘電体であり、電気エネルギーの貯蔵や機械/熱エネルギーとの相互転換機能に優れるとされる。その典型例は四角酸に代表されるように、電場により双極子の反平行秩序状態から平行秩序状態へ転換し、二重ループ型の分極履歴特性を示す反強誘電性であるが、本研究開始前は、有機分子反強誘電結晶の例さえ極めて少なかった。その中、前年度の開発では新たな反強誘電体を続々と開拓でき、今年度も引き続き、さらなる新規の強誘電体や反強誘電体を見出すことができた。加えて、水素の秩序状態の切り替えを伴う新たな電場誘起相変化も発見し、反強誘電体以外にもエネルギー貯蔵機能をもつ相変化型誘電体を得るための材料設計指針を得ることもできた。一連の水素結合鎖型分子結晶については、結晶構造データに基づく理論計算により、分極反転性能の正確な予測ができるほか、仮想的なFE状態とAFE状態の相対安定性を評価することによって、分極スイッチングモードと長距離秩序の有無も首尾一貫して説明できるようになった。これにより、構造―物性相関の理解と材料設計へのフィードバックが一気に進むこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
相変化型誘電体物質の強電場物質科学の学理を構築に向けて、以下の3項目に取り組むとともに、最終年度としてこれまでに得られた成果を総括したい。 (1)結晶構造と理論計算による物性・状態予測: プロトン移動、局所的なフリップフロップや分子回転、分子変形など、多様な動作モード型の材料にも探索範囲を拡張し、候補抽出を目指す。抽出した有力候補について、密度汎関数法に基づく理論計算による各種秩序構造のモデル化を行ない、相対的安定性を吟味する。相変化実現の可能性に加え、構造パラメータの電場依存性に関わる知見を得る。誘起強誘電相について、分極値や圧電定数などの性能指標を予測する。さらに、実験との比較により、動作メカニズムあるいは動作阻害要因について考察する。 (2)材料合成と実特性評価: 上記で抽出した有機分子の入手、精製、単結晶化を行い、必要に応じて誘導体化や多成分化にも取り組む。ブレードコート法などの各種塗布成膜実験による単結晶の薄膜化を試みる。室内系または放射光X線回折装置を用いて、様々な温度での単結晶X線構造解析により精度の高い原子座標を入手する。分極―電場履歴特性測定を行い、相転移現象の有無、誘起分極やスイッチ電場、エネルギー貯蔵機能、相変化前後の電気ひずみ効果の評価も併せて行う。分極値や電気ひずみについては理論計算と照合し、妥当性を吟味する。熱分析評価や誘電率、インピーダンスの温度特性の計測なども活用し、温度相図と各相の誘電状態を明らかにする。 (3)強電場下の構造-機能相関の評価: 放射光X線を用いた強電場下のオペランド回折実験を行い、強電場下で見出したメタ誘電転移に伴う結晶構造変化や電気ひずみとその微視的構造起源を明らかにし、理論予測とも比較考察を行う。また、強電場オペランド分光の評価設備を活用し、強電場下で誘起される強誘電相の電子状態の変化や分極状態の三次元分布を可視化する。
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