研究課題/領域番号 |
21H04681
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 (2022-2024) 金沢大学 (2021) |
研究代表者 |
大宮 寛久 京都大学, 化学研究所, 教授 (40508876)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2024年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 有機触媒 / ラジカル / 有機合成化学 / 有機分子触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機触媒によるラジカル反応を独自の手法で開発し、触媒を用いる有機合成の新たな地平を切り拓く。有機触媒を合理的に設計することにより、「1電子移動」や「ラジカルカップリング」のような各プロセスを能動的に制御し、従来の枠を超える触媒機能を引き出す。さらに、有機触媒によるラジカル反応を、その特性(高反応性・温和な条件)を活かして、複雑かつ嵩高い生体関連分子の化学修飾に適用することで、有機合成法としての地位を確立し、創薬研究などの発展に資する真の物質合成技術に繋げる。
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研究実績の概要 |
本年度は、以下に述べるような研究成果が得られた。 1)可視光駆動型プロトン共役電子移動(PCET) に基づくN-ヘテロ環カルベン触媒系を用いた、アルケンのアミドアシル化反応を開発した。可視光照射下、光酸化還元触媒と塩基を用いることで、分子内にアルケンを有するアミド化合物の窒素中心にラジカルが発生する(酸化的PCET過程)。生じた窒素中心ラジカルは速やかに分子内環化が進行し、アルキルラジカルを与える。一方で、カルボン酸から容易に調製できるアシルイミダゾールとNHC触媒から生じるアシルアゾリウム中間体に対する還元状態の光酸化還元触媒からの一電子還元により、ケチルラジカルが生じる。これら各々の触媒サイクルから生じた2種類の異なるラジカルがラジカル-ラジカルカップリングを起こすことで、かさ高いb-アミドケトン体がジアステレオ選択的に得られる。 2)可視光照射下、N-ヘテロ環カルベン(NHC)/有機光酸化還元(PC)協働触媒とアシルイミダゾールを用いた、電子豊富な芳香族化合物のメタ位選択的アシル化反応を開発した。本反応では、完璧なメタ位選択性が発現し、オルト位やパラ位選択性の生成物は得られない。本手法は、容易に入手可能で単純かつ電子豊富な芳香族化合物を利用できる。非熱的な条件かつ穏和な反応試薬を用いるため、官能基許容性に優れており、従来困難であった60種類以上の芳香族化合物をつくりだすことができる。本研究の成功の鍵は、NHC触媒とPC触媒それぞれの触媒サイクルを協働的に機能させることで、望みのラジカル反応を制御した点といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
有機触媒を合理的に設計することにより、「1電子移動」や「ラジカルカップリング」のような各プロセスを能動的に制御し、従来困難であった合成反応を開発することに成功した。具体的には、N-ヘテロ環カルベン触媒を光酸化還元触媒と協働的に作用させることで、新しい炭素-炭素結合形成反応を幾つか開発し、Nature Synthesiss誌やChem Catalysis誌などの複数の学術論文に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
1電子移動と続くラジカル介在型結合形成反応を可能とするラジカル型有機触媒の反応原理を格段に発展させていく。反応条件を実験的に数多く検討することで、N-ヘテロ環状カルベン触媒あるいは有機光硫黄触媒によるラジカル反応の基質一般性を昨年度に引き続き拡大していく。最終年度のため、これまで開発したラジカル型有機触媒を生体機能分子を基質とする結合形成反応に積極的に適用していき、高い付加価値をもつ化合物を合成していく。
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