研究課題/領域番号 |
21H04683
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小西 克明 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (80234798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2024年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2022年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
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キーワード | 金属クラスター / 配位子 / 自己組織化 / 界面活性剤 / 動的共有結合 |
研究開始時の研究の概要 |
様々な配位子保護金属クラスターを用いて、配位子間ではたらく分子間相互作用を戦略的に利用して自己組織型クラスター集積体の設計を試みるともに、可逆な共有結合の動的性質を利用した高分子型クラスター組織体の構築、MOF骨格への導入を機軸とする集積組織化を検討し、集積構造の評価と戦略的な配向・組織化のための方法論の確立、金属コア間の電子的相互作用を支配する組織構造、配向性の特定を行う。さらにその結果を元に、集積構造、周辺環境の変化に駆動される刺激応答材料系の構築を検討し、選択的な環境センサーなどに応用するための基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では、構造が一義的に規定された配位子保護クラスターを単位コンポーネントとして用い、クラスターが単一分子として示す優れた特性と超分子化学を融合させることで、複数クラスター間でのシナジー効果によって発現する創発的機能を開拓することを目的としている。初年度にはクラスター集積組織体を配向・距離が制御された形で精密設計する手法をいくつか検討し、その結果、1)外部構造制御剤を用いる方法、2)配位子間相互作用を用いる方法が有効であることが見出された。本年度にはこれらについて引き続き検討をすすめた。 1)界面活性剤を構造制御剤とするクラスター集積化:自己組織性をもつアニオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)共存下で、カチオン性8核金クラスターを集積化させ、さらにここに外部エネルギーとして超音波を注入すると、著しい凝集誘起型の発光増大が起こることを見出した。この発光増大の前後の状態について透過型電子顕微鏡でモルフォロジーの検討を行ったところ、超音波照射前には100nm程のサイズの球状ミセルが形成される一方で、照射後には同程度のサイズのナノ結晶が生成することが判明した。この結果から、超音波照射前後での著しい発光増大はミセル内部でのクラスターの結晶化の結果であると結論した。 2)配位子間相互作用に基づくアプローチ:金属クラスター表面に多数配置された配位子間での相互作用を分子間で制御できれば、特定の形態をもつ組織構造が得られる可能性がある。本年度は両親媒的なオリゴエチレングリコール修飾長鎖アルカンチオラートで修飾されたクラスターを用いて、会合状態でのナノ構造を観察したところ、discreteなナノサイズの会合体が形成されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、配位子保護金属クラスター自体がもつ優れた特性に注目し、有機配位子・対イオンの自己組織化、金属間相互作用、動的共有結合特性等を活用して、配向・距離が規定されたクラスター組織構造を戦略的に構築、制御する方法論を確立し、複数クラスター間でのシナジー効果によって発現する創発的機能を開拓することを目的としている。第2年度にあたる本年度は、昨年度に見出した1)外部構造制御剤となる界面活性剤を用いたクラスターナノ集積構造、2)配位子間での分子間相互作用によるクラスターナノ集積構造、を中心にさらに検討を進めたが、上述のとおり、今後に展開可能な興味深い知見、成果が得られており、おおむね計画通りに順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間の研究で見出したクラスター集積組織系を中心に、構造同定を進めるとともに、「組織化された集積体ならではの特性」として、複数クラスター間でのシナジー効果によって発現する創発的機能を進める。外部構造制御剤となる界面活性剤としてSDSを用いて形成させたクラスター集積体については、形成にともない顕著な凝集誘起発光の増大を示すが、同時に透過型電子顕微鏡上でナノ結晶の形成が確認されている。そこでSDS以外のアルキル鎖長、構造が異なるアニオン界面活性剤、CTABなどのカチオン性界面活性剤、トリトンX-100などの中性界面活性剤の存在下で集積化を行い、ナノ集積体のモルフォロジー、凝集誘起発光特性などに対する、構造制御剤の影響を考察する。また、ナノ結晶化をもたらす外部エネルギーとして、超音波にくわえ熱、光、マイクロウエーブなども検討する。加えて、ナノ結晶の構造についてX線散乱等から情報取得するとともに、発光特性(寿命、量子収率等)についても合わせて検討し、ナノ結晶のサイズ、構造との相関について洞察を深める。一方、配位子間での分子間相互作用を駆動力として生成するクラスターナノ集積構造についても、引き続き構造同定を透過型電子顕微鏡、X線散乱を中心に用いて進める。さらに、吸収、発光などの分光学的性質を精査し、超分子集積体の形成、解離を制御することで、クラスター固有の電子構造、光特性情報に転写、変換、出力するシステムの構築を検討する。
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