研究課題/領域番号 |
21H04691
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
前田 勝浩 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90303669)
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研究分担者 |
西村 達也 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (00436528)
廣瀬 大祐 金沢大学, 物質化学系, 助教 (60806686)
谷口 剛史 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (60444204)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,340千円 (直接経費: 31,800千円、間接経費: 9,540千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2021年度: 15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
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キーワード | 機能性高分子 / キラル高分子 / らせん / ポリアセチレン / 重合触媒 / 分子認識 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高い潜在性を秘めているにも関わらず未開拓のポリジフェニルアセチレン誘導体について、申請者らが最近初めて明らかにしたジフェニルアセチレン類の重合機構およびポリジフェニルアセチレンの構造に関する新知見を足がかりに、ポリジフェニルアセチレン誘導体の新規な精密合成法を開発する。また、その合成技術を基盤として、従来の合成法では成し得なかった構造の厳密に制御されたポリジフェニルアセチレン誘導体の合成を可能にすることで、ポリジフェニルアセチレンのマテリアルとしてのポテンシャルを最大限に引き出し、ラセン高分子とナノカーボンの機能と構造特性を融合させた多機能性ヘリカルナノカーボンの創出を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、構造の厳密に制御されたポリジフェニルアセチレン(PDPA)の簡便かつ適用範囲の広い新しい精密合成法を開発し(課題1)、その合成技術を基盤として、ラセン高分子とナノカーボンの機能と構造特性を融合させたPDPAの多機能性ヘリカルナノカーボンとしての機能を明らかにする(課題2)ことを目的としている。 (課題1) エステル基を有するジフェニルアセチレン類(DPA)の重合に有効なタングステン(W)やモリブデン(Mo)系触媒に焦点を当てて検討した。これまでに開発したMoCl5-助触媒およびWCl4-助触媒の重合触媒系を用いることによって合成が可能になった側鎖にエステル基を有する高分量の線状PDPAと環状のPDPAの側鎖を化学修飾し、側鎖に芳香族ボロン酸残基を導入した。当研究室で以前に開発したフェニルアセチレン類のリビング重合法を活用して、主鎖が線状または環状のPDAP鎖、側鎖がラセン状ポリフェニルアセチレン鎖からなるボトルブラシポリマーを合成することに成功した。 (課題2) 本年度は、「ラセン状ポリジフェニルアセチレンを用いた情報可視化システムの開発」と「ラセン状ポリジフェニルアセチレンを用いたスピントロニクス材料の開発」に注力した。前者では、一方向巻きのラセン構造を記憶として保持した側鎖にカルボキシ基を有するPDPAの側鎖にアミド結合を介して光学活性アミンを導入した誘導体を合成し、様々な水素結合阻害性キラルゲストに対するキラル識別能を評価したところ、非共有結合型の比色キラルセンサーとして機能することを実証することに成功した。後者では、保護されたチオール基を導入したスズ化合物を助触媒に用いた6価のW触媒系を用いて側鎖にエステル基を有するDPAを重合し、得られたPDPAの末端基の脱保護により、末端にチオール基(-SH)を有するPDPAを合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2つの研究テーマ群(課題1、課題2)に分けた研究体制で進めている。研究実績の概要にまとめたように、課題1と課題2の両方に関して、概ね研究計画に掲げた研究成果が得られている。 課題1では、エステル基を有するジフェニルアセチレン(DPA)の重合において、前年度までに開発したMo(V)-助触媒とW(IV) -助触媒の2つの触媒系を使い分けることによって、線状と環状の高分子量ポリジフェニルアセチレン(PDPA)をそれぞれ合成した。さらに、我々が独自に開発したRhベースの多成分触媒系によるフェニルアセチレン類のリビング重合法と組み合わせることによって、主鎖が線状または環状のPDPA鎖、側鎖がラセン状ポリフェニルアセチレン鎖からなるユニークなボトルブラシポリマーを合成することに成功するなど期待通りの一定の研究成果が得られた。 課題2では、ラセン状ポリジフェニルアセチレン(PDPA)の機能の開拓に関して、研究目的に3つの研究項目を掲げている。「PDPAラセン状PDPAを用いた情報可視化システムの開発」と「ラセン状PDPAを用いたスピントロニクス材料の開発」に関しては、今年度に予定していた成果が期待通り得られており、順調に進んでいる。一方、「ラセン状PDPAを用いたスイッチングマテリアルの開発」に関しては、来年度注力をして取り組む必要がある。 以上を総括し、全体的には概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2つの研究テーマ群(課題1、課題2)に掲げた研究項目に対して、今後の推進方策を以下に示す。 (課題1)構造の厳密に制御されたポリジフェニルアセチレン(PDPA)の精密合成法の開発 官能基許容性に優れ、分子量の制御された精密重合を可能にするジフェニルアセチレン類の重合触媒系の開発を行う。 これまでにエステル基などの官能基を有するジフェニルアセチレン(DPA)の重合に有効であったタングステンやモリブデンなどの遷移金属触媒ついて焦点を当てて検討を行う。また、重合活性を維持したまま活性種の安定性を向上させることを目指して、モノマーの配位空間を柔軟に調節可能な多座配位子を設計し、幅広いモノマーに適用可能なジフェニルアセチレン類の精密重合法を開発する。 (課題2)ラセン状PDPAの機能の開拓 ラセン状ポリジフェニルアセチレン誘導体を合成し、その構造特性を活用した次の3項目の機能開拓を行う。 「2-1. ラセン状PDPAを用いたスイッチングマテリアルの開発」:PDPAの末端修飾法を用いることで、共有結合を介して修飾シリカゲル上に1点でPDPA鎖を固定することによりPDPAをシリカゲル表面に固定化する新手法を開発する。さらに、ポリマーを固定化することによって、スイッチング可能なキラル固定相の実現を目指す。「2-2. ラセン状ポリジフェニルアセチレンを用いた情報可視化システムの開発」:キラルな炭化水素のキラル情報の色による可視化が可能なPDPAを用いたシステムの開発を目指す。「2-3. ラセン状PDPAを用いたスピントロニクス材料の開発」: PDPAを金/Ni基板上に配列させた単分子膜からなるデバイスを作製することにより、PDPAのスピントロニクス材料としての性能を評価する。
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