研究課題/領域番号 |
21H04692
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大北 英生 京都大学, 工学研究科, 教授 (50301239)
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研究分担者 |
山本 俊介 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70707257)
KIM HYUNGDO 京都大学, 工学研究科, 助教 (80837899)
玉井 康成 京都大学, 工学研究科, 助教 (30794268)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,810千円 (直接経費: 33,700千円、間接経費: 10,110千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2021年度: 30,030千円 (直接経費: 23,100千円、間接経費: 6,930千円)
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キーワード | 電荷生成 / オフセットレス / エントロピー / エンタルピー / 自発的対称性の破れ / 結晶性共役高分子 / 非晶性共役高分子 / 局所秩序性 / 界面電荷移動状態 / ヘテロ接合界面 / エネルギーカスケード / 縮環系共役分子 / 一重項励起子 / 凝集状態 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、有機薄膜半導体に生成した電子-正孔対である励起子がクーロン引力を打ち破って自由電荷キャリアへとエネルギーオフセットが無い(オフセットレス)条件でも電荷生成を実現している光電変換の学理を探究するものである。具体的には、レーザ分光法を駆使してオフセットレス条件での電荷生成ダイナミクスを解明し、空間的に対称性が破れたヘテロ接合場におけるエントロピー効果やエンタルピー効果といった従来モデルの実験的検証と、振電相互作用に起因する自発的対称性の破れに基づくまったく新しい電荷生成機構の探求という二つの観点から核心をなす「問い」の学理を探究する研究である。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、以下の研究項目ついて検討し、後述するような成果を挙げた。 【エントロピー効果】研究協力者の尾坂らにより開発された新規共役高分子PSTz2は、非フラーレンアクセプター(NFA)分子であるIT-4Fとのブレンド膜では明瞭なX線回折像を示さず非晶性であるものの高い発電効率を示す。電場吸収スペクトルにより励起子の非局在性を評価したところ、X線回折像を示すPSTz2/PC71BMブレンド膜よりPSTz2/IT-4Fブレンド膜においてより励起子が非局在化していることを見出した。この結果は、結晶構造をとらなくとも局所的な秩序性によって高い電荷生成効率を実現できることを示しており、エントロピー効果を考えるうえで新たな分子設計指針を与えるものである。 【エンタルピー効果】ヘテロ接合界面においてエネルギーカスケード構造を有する二元ブレンド系として、側鎖構造の異なるPTzBT-BOHDならびにPTzBT-12ODとLUMO準位の異なる種々のフラーレン誘導体を用いたブレンド膜における電荷生成ダイナミクスを界面CT状態の直接励起によって観測し、電荷生成のオフセット依存性について検討した。オフセットの違いによる電荷生成の違いが見られたが、フラーレン誘導体のLUMO準位が上昇するにつれてポリマー励起子が生成するため定量評価が困難であった。 【自発的対称性の破れ】縮環構造が発達したNFA分子であるIT-ICの励起子物性について研究協力者の佐藤らとともに量子化学計算を行ったところ、二量体状態では縮退した励起状態が自発的な対称性の破れにより、双方に励起状態が非局在化したエキシマ―状態から一方に励起状態が局在した分子間電荷移動状態を形成することを明らかにした。この結果は、自発的な対称性の破れにより分子間電荷移動状態を形成することにより、高い電荷解離効率を実現していることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、非晶性を示す共役高分子/非フラーレンブレンド膜においても局所的な秩序構造があれば高い電荷解離効率を示すという新たな分子設計指針を得ることができた。また、ヘテロ接合界面におけるカスケード構造のオフセットの違いにより電荷解離効率にも違いが見られることを確認した。縮環系共役分子の励起子ダイナミクスについては、量子化学計算による自発的な対称性の破れにより分子間電荷移動状態が形成されることを明らかにした。このように、当初計画どおり着実な進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初計画通りに研究を推進する予定であるが、各種分光測定の実績のある研究分担者を1名追加することにより研究の展開をさらに加速する。また、研究協力者との連携もより一層強化することにより新規材料の導入や理論計算を拡大し、本研究の展開に資する共同研究の実施を積極的に進めていく。
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