研究課題/領域番号 |
21H04700
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石原 達己 九州大学, 工学研究院, 教授 (80184555)
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研究分担者 |
ステイコフ アレキサンダー 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (80613231)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
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キーワード | デュアルイオン電池 / 水電解液 / 高濃度 / イオン性液体 |
研究開始時の研究の概要 |
デュアルイオン電池(DIB)は炭素へのアニオンとカチオンの挿入を利用した2次電池である。この電池は高濃度水系電解液を用いると、Liイオン電池並みの高エネルギー密度に到達できる。多成分系高濃度水系電解液では、電位窓が大きく広がるが、溶媒和構造を含めて、その機構は十分、解明されていない。また、多成分系電解液では、炭素中にアニオンが共挿入すると考えられるが、共挿入されたアニオンの状態についても明確になってない。本研究では、広い電位窓を実現する多成分高濃度電解液中の溶媒和構造やイオン伝導などの物性を、種々の機器分析、量子計算を用いて明確にし、2次電池のための基礎学理を構築する。
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研究実績の概要 |
デュアルイオン電池(DIB)は炭素へのアニオンとカチオンの挿入を利用した2次電池である。この電池は高濃度水系電解液を用いると、Liイオン電池並みの高エネルギー密度に到達できる可能性がある。本研究では、多成分系高濃度水系電解液では、電位窓が大きく広がるが、溶媒和構造を含めて、その機構は十分、解明されていないので、電位窓を広く取れる高濃度電解液の探索とその溶媒和構造を含めて、安定性が向上する機構を検討した。アセトニトリルまたはテトラグライム(G4)を添加すると耐還元性が大きく向上し、1.7-5.2Vという広い電位窓を到達することができた。このような電位窓が広がる機構をさらに検討したところ、ラマン分析からはG4を添加するとすべての水がLiFSI-LiTFSIという支持塩に溶媒和することが分かった。水系電解液を用いるDIBでは副反応により自己放電を行うことが課題であるが、自己放電を抑制できる方法について検討し、正極炭素の表面を酸化物でコートすると、自己放電を抑制できることが分かった。そこで、高濃度電解液中では炭素表面との副反応を生じており、Al2O3のような安定な被膜で覆うことで、抑制できること明らかにした。また負極としてFeNbO4-MoNb12O33の2成分系酸化物が優れた容量と繰り返し特性を示し、DIBとして機能できることを見出した。放電容量100mAh/gでクーロン効率91%を安定に示すことが分かった。実際にフルセルでの評価を行ったところ、2Vでの放電が可能で、70mAh/g程度の容量を300サイクルにわたり安定に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、目的としていた高濃度電解液による電位窓の拡張を目的に種々の添加物効果を検討し、テトラグライムが良好な正の添加効果を示すことを見出した。この電解液中での電池特性を検討したところ、自己放電を生じやすいことが分かった。そこで、濃厚電解液中でも使用できる正極について検討し、KS-6へのAl2O3の被覆が有効であることを見出した。そこで、当初の計画していた成果は得られており、ほぼ目的通りに進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、濃厚電解液中の溶媒和構造を検討するとともに、ハイブリッド系水電解液について、添加物が電位窓に与える影響を明確にする。また、新たにイオン性液体について、濃厚電解液への応用を検討し、特に対イオンとしてインターカレートが可能なTFSIなどを用いるイオン性液体について、その炭素へのインターカレーションの可能性を検討する。この電解液では支持塩が無くても電池になる可能性があることから、金属を用いない新しい概念の電池への展開を検討する。 一方で、従来より検討してきた高濃度電解液を用いる高エネルギー密度のDIBの創出については負極の開発が課題なので、負極への種々の材料の応用を検討する。とくにFeNbO4-MoNb12O33という2成分の複合酸化物が極めて優れた負極特性を有することを見出したので、本年度は、Liのインタ化レーションの挙動を詳細に検討するとともに、副反応についても検討する。とくに負極上では高濃度電解液が分解しやすいことから、副反応の有無とその抑制を検討する。 引き続き、有機―水系のハイブリッド電解液の溶媒和構造と誘電率やLiイオン伝導性などの基礎物性を明確にする。また新しい高濃度電解液へ展開が可能な有機溶媒やイオン性液体の展開を検討する。 正極用の炭素にも、多くの種類があることから、従来のハードカーボンであるKS6の代わりに、引き続いてソフトカーボンを中心に、濃厚電解液中での充電、放電の容量測定を行い、最も良好な特性を示す正極ホスト材料を探索する。インターカレートしたアニオンの状態分析としては、引き続きex-situ NMRおよび計算科学を用いて、インターカレーション状態を解析する。とくに高濃度電解液中での溶媒や複合支持塩の共挿入により、繰り返し特性が大きく向上する機構を明確にする。
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