研究課題/領域番号 |
21H04717
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
和崎 淳 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (00374728)
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研究分担者 |
坪田 博美 広島大学, 瀬戸内CN国際共同研究センター, 准教授 (10332800)
丸山 隼人 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10633951)
西田 翔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40647781)
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
佐々木 孝行 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (60362985)
俵谷 圭太郎 山形大学, 農学部, 教授 (70179919)
廣田 隆一 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (90452614)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2021年度: 12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
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キーワード | クラスター根 / リン / 有機酸 / 分泌 / システムズ生物学 / 根圏 / ホスファターゼ / 低リン耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
低リン耐性を有する一部の植物は、クラスター根とよばれる特殊な形状の根を形成して適応しているが、その機能の詳細は未解明である。そこで、本研究ではクラスター根の形態形成イベントの制御、爆発的な根分泌の誘導によるリン吸収能の全容の解明に挑む。具体的には、クラスター根形成能の活用、クラスター根の示す爆発的分泌能の活用、新規なクラスター根形成種の探索と養分吸収特性の調査に取り組む。クラスター根の形成能と分泌能による強いリン吸収能力を活用することにより、低リン耐性作物を創出することを最終目標とする。
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研究実績の概要 |
クラスター根形成種ピンクッションハケアから同定したリンゴ酸トランスポーター候補のHlALMT1を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞を用いた電気生理試験を行ったところ、リンゴ酸の輸送に伴う有意な電位変化がみられ、Alイオン存在下でその輸送活性は亢進した。クラスター根を形成するシロバナルーピンと形成しないアオバナルーピン、キバナルーピンのリン酸輸送と有機酸輸送活性を調査したところ、アオバナルーピンで他より低かった。その一方でリン酸輸送活性はシロバナルーピンで最も低かった。以上よりシロバナルーピンの生存戦略としてリンの可給化が重要であることが示唆された。 シロイヌナズナのリンゴ酸輸送体AtALMT3について電気生理学的な測定で再検証を行った。リン酸化すると報告されているアミノ酸を変異させたコンストラクトを作製して測定したが、リンゴ酸放出にともなう電流の変化を測定できなかった。発現抑制系統へのAtALMT3遺伝子発現の相補でリンゴ酸放出がみられたことから、何らかの因子がAtALMT3の輸送機能に必要であると推測されるが、その因子はこれらのアミノ酸のリン酸化ではないことが示唆された。 シロバナルーピンの根分泌が多い特定根域における遺伝子発現をRNA-seqにより調査したところ、MATEおよびALMTファミリーに属する遺伝子の有意な発現上昇が確認された。また、複数種のクラスター根由来の浸出物のメタボローム解析を行い、低リン条件で分泌される代謝産物を特定し、それらの機能解析を行った。 クラスター根形成種が自生する宮島の複数地点で森林植生の調査を行うとともに、その場所の土壌中の細菌群集構造を解析したところ、在来生態系と移入種が定着した場所では異なっていた。リン栄養条件を変えて水耕栽培したナンキンハゼのRNA-seqの結果を解析し、遺伝子の発現パターンを比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果として、複数の関連論文の投稿や学会発表につながっており、概ね順調に進展している。2023年度は基本的にオンラインで分担者と進捗状況を確認しつつ今後の方針について意見交換を行った。今後もweb会議等で意見交換を行いつつ、具体の研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
シロバナルーピンのEMS変異株の作成をさらに進める。根分泌能の差異で分けて採取したシロバナルーピンのクラスター根に関してのRNA-seqデータの解析をさらに進め、実際の有機酸分泌と発現量に高い相関関係の見られる有機酸トランスポーター遺伝子を特定する。クラスター根の形状(シンプル型、コンパウンド型)が異なるヤマモガシ科植物の複数種を対象としてリン吸収能と可給化能の比較を行い、クラスター根の形状によるリン吸収能への影響を調査する。また、同様の栽培により土壌中の微生物群集に及ぼす影響を調査する。亜リン酸処理によるクラスター根誘導の可能性を調査するため、引き続きマメ科植物を材料として側根の形成と短い状態で停止する条件の検討を行う。 これまでにルーピンから複数単離したクエン酸とリンゴ酸のトランスポーター候補であるMATE, ALMT遺伝子について、アフリカツメガエル卵母細胞の遺伝子発現系を用いた電気生理試験およびシロイヌナズナの過剰発現系、変異株の相補試験による輸送の調査を継続して行う。また、前年までにクラスター根で機能することが示されたMATE, ALMT遺伝子について、レポーター遺伝子であるGFPやGUSを用いた発現部位局在性やタンパク質局在性の調査を進める。 クラスター根の形成に関わる遺伝子を同定するため、これまでのRNA-seqの結果を用いて複数の候補遺伝子を抽出した。これらについて、詳細に発現量の定量を行うとともに、ホルモンによる制御の影響を検証する。 花崗岩性貧栄養土壌の宮島を主な調査地として、根の同定のためのバーコーディングライブラリを引き続き構築する。これまでに実施してきたイオノーム解析のデータを取りまとめ、クラスター根形成種とその周辺に自生する植物群の栄養吸収特性を評価する。
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