研究課題/領域番号 |
21H04724
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70282697)
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研究分担者 |
間野 吉郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, グループ長 (20355126)
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30285241)
高橋 秀和 福島大学, 食農学類, 教授 (00325937)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
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キーワード | トウモロコシ / テオシント / 耐湿性遺伝子 / 根圏微生物叢 / マッピング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、耐湿性の高いトウモロコシ属植物Zea nicaraguensis(ニカラグアテオシント)を遺伝資源として育種利用することで、トウモロコシの耐湿性の改善を目指す。まずは、ニカラグアテオシントの酸素漏出(ROL)バリア形成、地表根形成、還元耐性に関わる遺伝子に着目し、ROLバリア形成と地表根形成の制御機構の解明、還元耐性形質の責任遺伝子の同定と機能解明、還元耐性に寄与する根圏微生物叢の探索等を推進することによって、ニカラグアテオシントの耐湿性獲得機構の全容を明らかにする。さらに、これらの耐湿性遺伝子を全て集積した系統を作出し、耐湿性を強化したトウモロコシの品種育成を推進する。
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研究実績の概要 |
本研究では、耐湿性の高いZea nicaraguensis(ニカラグアテオシント)の持つ酸素漏出(ROL)バリア形成と地表根形成の制御機構を解明するとともに、還元耐性に寄与する責任遺伝子の同定と根圏微生物叢との関係性の解析を行うことで、ニカラグアテオシントの耐湿性獲得機構の全容を明らかにする。さらに、これらの耐湿性遺伝子を全て集積した系統を作出し、耐湿性を強化したトウモロコシの品種育成を推進することを本研究の目的とする。2023年度には、ROLバリア形成制御遺伝子であるRBF1/Qarf3.04による地表根形成制御機構を解明するために、RBF1/Qarf3.04を導入した形質転換トウモロコシと対照系統の根端部からRNA抽出後、RNA-Seqを実施した。また、ニカラグアテオシントの第9染色体短腕の還元耐性に関するQTL(Qft-rd9.01-9.04)の領域が分離しているF2集団を用いたQTL解析を行い、QTLのピークはbin9.03にあることを明らかにした。一方で、ニカラグアテオシントの還元耐性遺伝子を導入したトウモロコシ系統とその対照系統、ニカラグアテオシント、トウモロコシを材料に用いて、根の表面付近に分布している根圏微生物叢を調査した。その結果、還元耐性の高い系統に共通して存在する根圏微生物叢を特定できた。さらに、5つの耐湿性遺伝子を交雑により集積した高耐湿性のトウモロコシ系統を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RBF1/Qarf3.04を導入した形質転換トウモロコシと対照系統の根端部からRNAを抽出して、RNA-Seqを実施した。その結果、RBF1/Qarf3.04はPINタンパク質の配置を変え、オーキシンの局在を変化させることで、根の伸長角度を変化させている可能性と細胞壁と硬さを調節することで、根の角度を変化させる可能性が考えられた。 第9染色体短腕のQft-rd9.01-9.04の詳細マッピングについては、QTL(Qft-rd9.01-9.04)の領域で組換えを起こした系統のシリーズ (22系統) を作成し、ファインマッピングが進行中である。また、候補領域が分離しているF2集団を用いたQTL解析を行い、QTLのピークはbin9.03にあることを明らかにした。 ニカラグアテオシントの還元耐性遺伝子を導入したトウモロコシ系統およびニカラグアテオシント、トウモロコシの根微生物叢のアンプリコンシークエンスの結果をもとに、根微生物叢の潜在的な機能についての系統間の比較を試みた。 5つの耐湿性遺伝子を集積した系統の作出については、3つのQTLを持つ系統「#162-181」に第7染色体と第9染色体の2つのQTLを付与したF2集団でマーカー選抜を行った。選抜した個体を固定・採種して、5つの耐湿性遺伝子を集積した高耐湿性のトウモロコシ系統を作出した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、以下の研究を実施する。 (1)RBF1/Qarf3.04のターゲット遺伝子を同定するために、RBF1/Qarf3.04遺伝子を導入した形質転換トウモロコシと対照系統を材料に用いて、ChIP-Seq解析を行う。茎頂組織にアグロバクテリウムを感染させる方法で形質転換トウモロコシ(カルス)を作出した。2024年度はChIP-Seq解析を実施して、RBF1/Qarf3.04が直接結合するターゲット遺伝子を同定する。これらのRBF1/Qarf3.04のターゲット遺伝子の中から、ROLバリア形成に関わる遺伝子、あるいは根角度の制御に関わる遺伝子を同定する。 (2)第9染色体短腕に見出された還元耐性に関するQTL(Qft-rd9.01-9.04)のファインマッピングを完了させるとともに、RNA-seq解析によりQft-rd9.01-9.04領域の発現遺伝子を同定する。 (3)前年度までに得られた根圏微生物叢のシークエンスデータをさらに解析し、耐湿性遺伝子の導入と関連を示す微生物群の特定を試みる。新たな作出したトウモロコシ系統についてその根圏微生物叢・潜在的機能の解析を行う。 (4)5つの耐湿性遺伝子(QTL)をホモに持つ系統の幼植物における耐湿性を評価するとともに、Mi29とは異なる遺伝背景における5つのQTLの効果を検証する。
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