研究課題/領域番号 |
21H04728
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
辻 寛之 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (40437512)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
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キーワード | フロリゲン / メリステム / イネ / 茎頂メリステム / フロリゲン活性化複合体 / 花成 |
研究開始時の研究の概要 |
生殖成長相の全過程におけるフロリゲンの分布とその変化を一細胞解像度3Dイメージングで解明する。またフロリゲンの分布変化に伴って変化する下流の標的遺伝子の発現や植物ホルモンの応答を一細胞解像度で解明する。さらにフロリゲンの特徴的な分布である濃度勾配について、その機能と形成メカニズムを解明する。 独自に開発した茎頂メリステムの微細単離・解析技術を最大限活用し、遺伝子発現の制御に直結するクロマチンのアクセシビリティと核内DNAの立体配置をフロリゲンの到達前後の茎頂メリステムで解明する。メリステムのエピゲノミクスの全情報を統合解析し、フロリゲンによる核内変化と遺伝子発現制御の全容を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的はフロリゲンによる茎頂メリステム (shoot apical meristem, SAM)の成長相転換に関する2つの大きな問いに答えることである。それらの問いは(1)SAMにおいてフロリゲンはどのように時空間的な分布を変化させながら成長相転換を誘導するのか、(2) SAMにおいてフロリゲン活性化複合体はどのような分子機構で花芽分化遺伝子の発現を誘導するのか、である。 (1)SAMにおいてフロリゲンはどのように時空間的な分布を変化させながら成長相転換を誘導するのかという問いに対して、私たちは独自の材料と独自の技術を開発して取り組んだ。フロリゲンのレポーター形質転換イネ、フロリゲン標的遺伝子のジーンタゲティングイネなど独自の材料を開発し、SAMの一細胞解像度の3Dイメージングを実施した。今年度までに、フロリゲンが特有の濃度分布でSAMに存在し、そのSAMの分布に伴って植物ホルモンのオーキシンとサイトカイニンの分布が変化することを解明した。今年度はフロリゲンの標的遺伝子の詳細な解析を実施し、フロリゲンの標的遺伝子の一つがSAMの全域的な成長相転換を誘導する重要な役割を果たすことを明らかにした。また(2) SAMにおいてフロリゲン活性化複合体はどのような分子機構で花芽分化遺伝子の発現を誘導するのか、に対して、私たちは独自の微細組織単離と微量核酸、クロマチンのマルチオミクス技術を開発して取り組んだ。今年度までにSAMの大量純粋単離と、ATAC-seq及びHi-Cによるクロマチンアクセシビリティの解析を実施した。これらの解析を統合することにより、フロリゲンによるSAMの成長相転換の理解を深める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)SAMにおいてフロリゲンはどのように時空間的な分布を変化させながら成長相転換を誘導するのかという問いに対して、フロリゲンの分布と植物ホルモンのオーキシンとサイトカイニンの分布を解明し、さらにこれらによって制御される標的遺伝子が重要な役割を果たすことを明らかにした。2) SAMにおいてフロリゲン活性化複合体はどのような分子機構で花芽分化遺伝子の発現を誘導するのか、という問いに対して、フロリゲンがクロマチンアクセシビリティの変化を誘導し、また3Dゲノムの全体像を描出することに成功した。これらの結果から、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)SAMにおいてフロリゲンはどのように時空間的な分布を変化させながら成長相転換を誘導するのかという問いに対しては、これまでに見つけた標的遺伝子の産物が植物ホルモンとフロリゲンの機能をSAMで統合する可能性を追求する。このために、標的遺伝子の機能解析とイメージングを詳細に進めている。すでに観察のための形質転換レポーター系統、ゲノム編集系統などの材料は複数回の形質転換を実施しており、来年度には材料が完成して使用可能となる。先行して開発できた形質転換イネを用いた予備的な実験では、標的遺伝子とフロリゲンが重なり合いながらも異なる分布を示すことにより、複合的に成長相転換を誘導する可能性が見出されつつある。レポーター系統の高精細なイメージングと細胞解像度の表現型解析を組み合わせた解析を実施する。
(2) SAMにおいてフロリゲン活性化複合体はどのような分子機構で花芽分化遺伝子の発現を誘導するのか、という問いに対しては、SAMのATAC-seqとHi-Cの情報解析を推進する。SAMのATAC-seqによって、フロリゲン活性化複合体がSAMのゲノム中でクロマチンアクセシビリティを変化させる領域を見出しつつある。これらの領域と、SAMにおけるフロリゲン活性化複合体の標的遺伝子のの関係を精査する。また、SAMのHi-Cについてもデータが得られたので、イネSAMの3Dゲノム構造をはじめて解明する。これらの統合的な解析から、フロリゲンによって引き起こされるSAMのエピジェネティックな変化を解明する。
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