研究課題/領域番号 |
21H04731
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
都木 靖彰 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (10212002)
|
研究分担者 |
浦 和寛 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90360940)
東藤 正浩 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10314402)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
|
キーワード | コラーゲン原線維コーティング / 再生医療チタン材料 / 表面加工 / 骨誘導 / 水産廃棄物利用 / コラーゲン線維コーティング / 再生医療用チタン材料 |
研究開始時の研究の概要 |
海外産と比べ高価ではあるが厳格な生産管理が可能な国産水産物由来コラーゲンの特長を活かし,高付加価値な医療利用を実現する。再生医療分野ではコラーゲン製の人工骨を用い,骨再生を効率的に誘導することが期待されているが,人工骨の機械強度がまわりの骨よりも小さく,機能性が低いことが課題となっている。本研究では,チョウザメの浮袋コラーゲンがもつ高い線維形成能を利用して哺乳類コラーゲンでは実現不可能な高配向性コラーゲン線維材料を形成し,これに骨と同等のリン酸カルシウム結晶を沈着させ,真に骨の構造を模倣した「骨ミメティック構造」の創出をめざす。
|
研究実績の概要 |
(a) 骨ミメティック構造の創出:ヒドロキシアパタイト (HA) 結晶の沈着を誘起した試料の断面をSEMおよびEDSで解析し,コラーゲン原線維内部へのHA沈着が進行した可能性を示唆した。加えて,HA非沈着のコラーゲン線維層の力学的特性評価のため,コーティング基材よりコラーゲン層を剥離し,コラーゲン線維層単体の引張負荷試験をおこなう試験機を開発した。光学顕微鏡画像から試験片表面に付したマーカーのゲージ長さを計測し,引張負荷中の変化から弾性率の算出することに成功した。作製した湿潤コラーゲンの弾性率は14.65~56.82MPa程度で,一般的なコラーゲン線維よりと低い値であり,ばらつきも見られた。 (b) チタン材料表面への骨ミメティックコート技術の開発:23年度には22年度の方法を改良し,アルカリSBFへの浸漬時間とその後のSBF溶液への浸漬時間,SBF溶液中のCa, P濃度を調整することで,チタン表面へのHA沈着量を飛躍的に増加させることに成功した。また,HA結晶表面の石灰化原線維コーティング技術を改良し,高い配向性を得ることに成功した。 (c) 骨ミメティック構造に対する幹細胞反応性の解明:前年度に続き非石灰化細線維コート上での試験を続け,hMSCの骨芽細胞への分化運命決定(骨芽細胞分化の初期過程)の際に発現する転写因子であるRUNX2, OSXの発現は,細線維コート上の培養1, 3日目に促進され,細線維コートがhMSCの骨芽細胞分化の初期段階(骨芽細胞への分化運命の決定),すなわち骨誘導の初期段階を促進したことを示唆した。次に,HA結晶を誘起した細線維コート上に骨芽前駆細胞MC3T3-E1を播種したところ,細胞接着に時間がかかること,細胞が原線維の走行方向に沿って伸展することが示された。このことは,細線維コートにHA結晶を誘起することで,細胞の反応が変化することを示す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り,(a) 骨ミメティック構造の創出に関してはほぼ研究目的を達成した。また,(b) チタン材料表面への骨ミメティックコート技術の開発もほぼ目的を達した。これらにより,(c) 骨ミメティック構造に対する幹細胞反応性の解明に関し,実際の骨ミメティック構造上での細胞培養をおこない,細胞反応を詳細に解析することが課題として残るのみとなった。23年度にMC3T3-E1細胞を用いた予備試験を終了しており,すでに細胞接着と細胞形態に関して,骨ミメティック構造上ではHA非沈着のコラーゲン原線維上と比べて細胞の反応性が異なることが明らかにされた。このことから,22年度終了時の「計画の若干の遅れ」を23年度に取り戻すことができたと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(a) 骨ミメティック構造の創出に関しては研究は計画通りに終了した。今後,コートの強度測定を続け,十分な強度があることを証明する。 (b) チタン材料表面への骨ミメティックコート技術の開発に関しては,チタン表面のHA結晶とコラーゲン原線維に沈着させたHA結晶とがうまく融合しているかどうかを断面の観察により解析する。 (c) 骨ミメティック構造に対する幹細胞反応性の解明に関しては,23年度に骨ミメティック構造上ではHA非沈着のコラーゲン原線維上と比べて細胞の形態が大きく変わることが示されたため,特に細胞形態に着目して解析を続ける。 また,(a) 骨ミメティック構造の創出に関して原著論文作成に取り掛かるほか,(b) チタン材料表面への骨ミメティックコート技術の開発に関し,学会発表をおこなう。
|