研究課題/領域番号 |
21H04733
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 継之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90533993)
|
研究分担者 |
小林 加代子 京都大学, 農学研究科, 助教 (00806416)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,600千円 (直接経費: 32,000千円、間接経費: 9,600千円)
2024年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2023年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2022年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2021年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
|
キーワード | セルロースナノファイバー / 結晶性 / 欠陥 / 熱伝導率 / 構造解析 / 原子間力顕微鏡 / 固体核磁気共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
近年はセルロースナノファイバー(CNF)の量産体制が整い、学術分野においてもCNF関連の論文数が飛躍的に増加している。しかし、そのほとんどがCNFを応用した材料研究であり、CNFの構造理解を進めた論文はわずかである。結果的に当該分野では、確証のない「もっともらしい構造」がCNF1本の構造として浸透しており、仮説に仮説を重ねた議論が散見され、実用化に向けた課題解決や機能開拓にも支障をきたしている。そこで本研究では、「CNF固有の機能・性能に係わる構造(断面形状・表面構造・欠陥分布・結束構造)」を解明し、CNF研究の基盤的知見を整備する。
|
研究実績の概要 |
2022年度までの研究で、セルロースナノファイバー(CNF)の断面寸法は、平均すると18本鎖モデル(CNF1本を分子鎖18本が構成するモデル)が妥当である一方、長軸方向の30%~40%の領域で、18本鎖モデルでは説明できない凹み欠陥を有することが判明した。2023年度は、この凹み欠陥の分布解析に注力した。その結果、凹み欠陥の約70%以上が、CNFの屈曲部や端点に局在化していることが判明した。また、屈曲部や端点の凹みは、その他直線部の凹みよりも、深い形状をしていた。さらに、CNFの長さが短くなるにつれ、屈曲部の割合が減少する傾向が見出された。一連の結果をもとに、CNFの生産工程における破断機構を考察した。まず、深い凹み欠陥が形成され、その領域が屈曲部となったのち、破断し、端点を形成するという機構を想定した。 表面構造の解析に関しては、試行錯誤が続いており、2024年度内に成果をまとめる計画である。現状、CNFを原子間力顕微鏡で液中観察する際、イオン化した官能基の水和構造が大きく、動きやすいため、観察しにくいことが判明している。 また、結束構造(結晶子合一)の解析についても、2022年度以降、継続して検討を進めてきた。結束構造の形成機構を理解するため、CNF分散液を徐々に脱水し、固形分率の異なるCNF試料を調製した。これらの試料について、CNFの結晶性を多角的に解析したところ、CNFの部分的な結束は、1%以下の低固形分濃度において著しく進み、1%に達すると安定なCNFの網目構造を形成すること、そして、さらに脱水を進めると、結束部を基点としてCNF間の会合が徐々に進んでいくことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欠陥部の解析に関しては、計画書に記載の通り、2023年度内に分布解析を完了することができた。分子量との相関については、2024年度にまとめる予定である。表面構造の解析がやや難度が高いものの、2023年度に糸口が見えたため、計画通り、2024年度内には達成できる見込みである。また、2022年度以降も継続して検討を続けてきた結束構造の解析に関しても、当初の計画よりも踏み込んだ成果が得られており、CNF材料の理解をさらに深めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、CNFの表面構造解析と、欠陥と分子量の相関を解析する予定である。
|