研究課題/領域番号 |
21H04748
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分41:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 史彦 九州大学, 農学研究院, 教授 (30284912)
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研究分担者 |
田中 良奈 九州大学, 農学研究院, 助教 (80817263)
今泉 鉄平 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30806352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
43,030千円 (直接経費: 33,100千円、間接経費: 9,930千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2021年度: 22,880千円 (直接経費: 17,600千円、間接経費: 5,280千円)
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キーワード | 農業工学 / 画像解析 / モデリング / 品質評価 / AI / シミュレーション / 品質・健全性評価 / Digital Twin |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ナノ・マイクロでの多面的アプローチによって青果物細胞組織の健全性の診断と品質の評価を行うものである。ここでは、(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」の3つのアプローチを行い、AI解析等によって(4)青果物細胞の健全性を診断し、品質評価の深化を行うものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、生体内の時空間的な4D動態を「見える化」することを目的とする。(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」では、青果物組織の健全性評価手法として電気インピーダンス法の有用性評価を進めた。青果物が収穫前後に経験する細胞膜損傷や糖、酸などの内在成分の変動が、計測される誘電緩和の挙動に影響を及ぼし得ることを明らかとした。また、青果物組織内の空隙をX線μCTで撮影し、解析ソフトAvizoによって空間内の分布を可視化した。スプラウト類では、栄養供給が減少した状態で新調した茎部で気泡厚および気泡間距離の増大が確認された。(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」では、細胞-空隙間の移動現象をより厳密にモデル化したり、細胞組織レベルでの解析において計算領域サイズが異方性の評価に与える影響について検討したりするなど、より現実に近いモデルに深化させた。この他にも、果実内の各部位で呼吸速度を計測し、空隙率との関係を明らかにするなど、モデルベースとGC-MSMSによる代謝推定も行った。(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」では、ナシの健全果判別に資する技術として、心腐れ病の非破壊判別の可能性について考究した。心腐れ病は外観からその判別が難しく、商品としての価値・信頼性を著しく損なわせる原因となる。Phomopsis fukushiiを植菌することで罹患させたナシと自然に罹患したナシについてバイオスペックル特性値の変化を計測し、スペックル動画の周波数解析を行った。機械学習法により周波数ごとの振幅累積和を入力とし、罹患の有無を判別する数理モデルを構築した結果、分類再現率90%の精度を得ることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、昨年度に引き続き、(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」、(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」、(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」の3中課題で構成し、いずれでもダイナミックに変化する青果物の特性・品質を評価する新たな解析フレームワークの確立に資する成果をあげている。(1)では、研究計画予定通り、先端的な観察機器による微細構造解析と電気インピーダンス法の応用によって青果物組織の健全性評価に関する研究を進め、両者間の密接な関係性を明らかにするなど十分な成果を得た。(2)では、青果物内部における諸現象をより厳密に予測するための数値解析法の検討や解析場の厳密化を行うなど、より現実に即したモデルの構築を進めるとともに、これを利用して呼吸活動を青果物の部位ごとに模すことを可能にした。(3)では、バイオスペックルの周波数分析と機械学習を組み合わせることで、ナシの健全果判別を可能にするなど研究計画以上の大きな進展を得た。すでに、前倒しで(4)青果物細胞の健全性を診断し、品質評価の深化を行う段階に達しており、さらには、青果物の鮮度保持を可能とする部分可食コーティング処理「守り」の中課題を追加できるなど、研究の進捗状況は極めて良好であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)青果物細胞組織のナノ・マイクロ構造の観察と解析「造り」では、引き続き、マルチスケールでの画像取得と解析を進めるとともに、青果物の貯蔵や生長段階における構造や形態の変容を分析する。微細構造の健全性を評価する手法としては画像観察とインピーダンス法による電気的特性を計測することで、引き続き、構造変化と電気的特性の関係を明らかにする。また、青果物の健全性維持を目的とし、新たに「守り」の小課題を設定し、バイオマス由来可食コーティング処理による品質保持効果について化学分析も含めて考究する。(2)マルチフィジックス・シミュレーションによる細胞組織諸物性値の推算「模し」では、昨年度までに開発したn次元物性値配置モデルを用いたマルチフィジックス解析を行い、青果物構造や変容を含む諸現象予測を行う。特に、化学反応を伴う熱・ガス拡散解析について重点的に解析を行う。(3)バイオスペックル法による細胞アクティビティの計測と活性度マッピング「活き」では、より有効な機械学習数理モデルを選定し、日持ち選果や健全果選果の実用化に向けた検討を行う。
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