研究課題/領域番号 |
21H04764
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木村 宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30241392)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2023年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
|
キーワード | クロマチン / 遺伝子発現 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 転写制御 / 染色体 / ヘテロクロマチン / エピジェネティクス制御 / 遺伝子発現制御 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子発現制御のメカニズムの解明は、生物学にとって最も重要な課題の一つである。転写の抑制にはヘテロクロマチンの形成が重要であるが、多細胞生物では「構成的ヘテロクロマチン」と「条件的ヘテロクロマチン」の2種類が存在する。これらの2種類のヘテロクロマチンはそれぞれに特徴的で排他的なヒストン修飾を持つが、この排他性の意義と形成メカニズムは謎のまま残されている。本研究では、誘導的エピジェネティック編集と生細胞イメージングを駆使して、ヒストン修飾の排他性の意義とメカニズムを明らかにする。これにより、多細胞生物の発生や分化の制御に重要な「条件的ヘテロクロマチン」形成機構を理解する。
|
研究実績の概要 |
H3K9me3とH3K27me3は共に転写抑制に関与する修飾であるが、排他的に存在し、それぞれ構成的ヘテロクロマチンと条件的ヘテロクロマチンの形成に働く。そこで、遺伝子発現の抑制に働くヘテロクロマチン構築機構の解明を目的として、H3K9me3とH3K27me3の排他性の生物学的意義と分子機構に関する解析を行った。 H3K27me3が濃縮する不活性X染色体をもつマウスMC12細胞を用いて、H3K27me3に結合する遺伝子コード型細胞内抗体(H3K27me3-mintbody)にH3K9のトリメチル化酵素であるSuv39H2の酵素活性ドメイン(SETドメイン)を融合したタンパク質(H3K27me3-mintbody-Suv39H2(SET))をドキシサイクリン(dox)依存的に発現させるための細胞株を樹立した。コントロールとして、メチル化酵素活性を持たないSETドメインの点変異体(H3K27me3-mintbody-Suv39H2(SET-Mut))を発現する細胞を樹立した。H3K27me3-mintbody-Suv39H2(SET)の発現誘導後1日で、H3K27me3が濃縮する不活性X染色体上へH3K9me3の局在が見られたが、SET-Mutではそのような濃縮は見られなかった。不活性X染色体上へのH3K9me3の濃縮は発現誘導後2-3日で最大に達した。この状態で、細胞は正常に増殖したが、不活性X染色体のDNA複製タイミングがより後期にシフトした。また、一過性の発現後にdoxを除去して発現を抑制したが、H3K9me3とH3K27me3の共局在状態は数日間維持された。これらの結果から、H3K9me3とH3K27me3の共局在は細胞にとって致死的ではないと考えられる。共局在がどの程度起こっているのかについて、今後調べていく必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H3K9me3とH3K27me3を共局在させる系を樹立できた。今後この系を用いて解析が進むと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
H3K27me3-mintbody-Suv39H2(SET)の発現により、H3K27me3が濃縮するクロマチンにH3K9me3がどの程度導入できたかについて、クロマチン免疫沈降により確認する。また、H3K9me3の導入効率を高めるために、SunTagなどを用いた増幅システムの使用を検討する。 一過性にH3K9me3とH3K27me3を共存させた後の変化について、時間経過を追って変動を解析する。その際、それぞれの脱メチル化酵素やメチル化酵素の局在性についても解析し、共局在から排他性に至る分子機構を明らかにする。
|