研究課題/領域番号 |
21H04773
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
竹内 秀明 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (00376534)
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研究分担者 |
鹿島 誠 東邦大学, 理学部, 講師 (10780562)
安齋 賢 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (20779467)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 10,920千円 (直接経費: 8,400千円、間接経費: 2,520千円)
2021年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
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キーワード | 社会認知 / Familiarity recognition / 異性認知 / 同種認知 / scRNS-seq / カルシウムイメージング / 光遺伝学 / ソーシャルビジョン / 視覚 / シングルセルRNAseqアトラス / 視蓋 / セレベスメダカ / 体色変化 / 社会シグナル / シングルセルトランスクリプトーム / 最初期遺伝子 / バイバリーシステム / 配偶者戦略 / 社会脳 / 分子遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではソーシャルビジョンで機能する一連の遺伝子群を世界に先駆けて解明し、ソーシャルビジョンの進化的起源とベーシックデザインをメダカ脳の分子的基盤から探ることを目指す。具体的には同種他個体からの視覚入力によって賦活化するサブセットニューロンとそのネットワークを体系的に検索・同定し、シングルトランスクリプトームを用いてサブセットニューロンの遺伝子発現プロファイルを明らかにする。これによりサブセットニューロンを特徴付けるマーカー遺伝子を同定する。さらにメダカで条件的ノックダウン法および神経興奮制御技術を確立して、ソーシャルビジョンにおけるサブセットニューロンの機能を解明することを目的にする。
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研究実績の概要 |
(1)メダカ脳シングルセルRNAseqアトラスの完成 一次視覚中枢(視蓋)と終脳のアトラスを完成させた。雌雄の終脳データを統合してクラスタリングを行った結果、終脳は30個、視蓋は31個のクラスターに分類された。各クラスターを特徴づけるマーカー遺伝子を同定した。昨年度開発したTet-ONシステムを介したバイナリーシステムを応用し、いくつかのマーカー遺伝子のプロモーター制御下でrtTAを発現するドライバー系統を作成した。rtTAを発現するドライバー系統とTetプロモーター制御下のレポーター系統を交配することで、薬剤投与依存的にレポーター遺伝子を発現誘導することが可能であることを確認した。これまでにレポーター遺伝子としてチャネルロドプシンやGCaMPがメダカ脳で機能することを確認している。 (2)メダカソーシャルビジョンの新規研究モデルの開発 (A)セレベスメダカのオスの黒色模様が急速に変化する現象に着目し、体色変化と攻撃行動が再現性良く観察可能な実験条件を確立した。その結果、セレベスメダカの体色変化はカモフラージュとコミュニケーションの両方の機能を持つことを発見した。黒色化したオスと一緒にいたライバルオスの攻撃行動と性行動が完全に抑制されることから、体色という視覚情報が社会シグナルとして処理される神経機構の解析にこのモデルを使用する予定である。 (B)オスがメスを視覚的に見失ったときに惹起される探索行動を発見した。オスとメスを瞬間調光パネルで仕切り、透明から不透明に切り替えると、オスはメスを探索するがメスは探索しないことがわかった。このことから、オスは視覚刺激のみで異性を認知していることが明らかになった。今後は、オスが視覚だけでメスを認知する神経機構の解析ツールとしてこのモデルを活用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 一次視覚中枢(視蓋)と終脳のアトラスが完成したため。昨年度までに確立したバイナリーシステムと組み合わせ、ドライバー系統を系統的に作成することで、 一次視覚中枢(視蓋)と終脳のどの細胞タイプがソーシャルビジョンに関わるか検定できるようになった。(2) 新しい研究材料(セレベスメダカ)を用いて体色変化を介したコミュニケーションに関わる機構、日本メダカでは視覚による異性認知に関わる機構が新たに解析できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
((1) メダカ脳の体系的バイナリーシステムの確立:メダカでは、CRISPR-Cas9を用いたノックイン技術(Watakabe et al., 2018) とTet-ONシステムを組み合わせたバイナリーシステムが確立しており(Kayo et al., 2023)、ショウジョウバエのGAL4システムのようにドライバー系統とエフェクター系統を掛け合わせることで特定の神経サブタイプにレポーター遺伝子を発現できる。メダカ脳のシングルセルトランスクリプトームを用いて、終脳、視蓋の神経細胞を遺伝子発現プロファイルを足場にそれぞれ30, 31種類の細胞タイプに分類したので、次は各細胞タイプのマーカー遺伝子座にrtTAをノックインしたドライバー系統を体系的に作成する。またレポーター系統として、光遺伝学(チャネルロドプシン)、カルシウムイメージング(GCaMP)に加え、細胞毒素(テタヌス毒素)を加える。これにより細胞タイプ特異的な抑制実験が可能になり、どの細胞タイプがソーシャルビジョンに関わるか検定できるようにする。(2) シングルセルトランスクリプトームによる賦活化した細胞タイプの検索:これまでにメダカ脳を用いてシングルセルトランスクリプトームの細胞分離の過程で遺伝子発現変動が起きないプロトコルの確立に成功している。このプロトコルでは、最初期遺伝子の発現誘導を指標として賦活化した細胞タイプを検出できる。次は同種、異性、見知った個体、体色などの社会的な視覚刺激や性行動に依存して活性化するニューロンの細胞タイプを同定し、バイナリシステムを用いてその機能を検証する。
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