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縄文人iPS細胞の構築とその応用に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 21H04779
研究種目

基盤研究(A)

配分区分補助金
応募区分一般
審査区分 中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
研究機関東京大学

研究代表者

太田 博樹  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40401228)

研究分担者 石田 貴文  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20184533)
立石 敬介  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20396948)
田辺 秀之  総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 准教授 (50261178)
野崎 智義  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (60198588)
和久 大介  東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (60793578)
竹沢 泰子  関西外国語大学, 国際文化研究所, 教授 (70227015)
覚張 隆史  金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
大橋 順  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80301141)
今村 公紀  金沢大学, 医学系, 准教授 (80567743)
研究期間 (年度) 2021-04-05 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
キーワードiPS細胞 / 縄文人 / ゲノム / 集団遺伝学 / 肝細胞 / 適応的表現型 / アレル / 薬剤添加 / エタノール / アセトアルデヒド / トランスクリプトーム解析 / オルガノイド
研究開始時の研究の概要

狩猟採集民であった縄文人は、東アジア大陸から隔離され、日本列島固有の環境に適応してきた。縄文人と現代日本人との遺伝形質の多くが異なっているのは、おそらくこのためである。しかし、この“狩猟採集生活に適応した縄文人ゲノム及びエピゲノム”が表現型とどのように結びつくか、まだほとんど研究されたことがない。本研究の目的は、縄文人由来ゲノム断片をもつiPS細胞を樹立し、分化誘導させ、網羅的かつ経時的に遺伝子発現及び代謝プロファイルを分析し、現代日本人のそれと比較することにある。これにより、ゲノムの一次情報だけからは理解が困難な縄文人が獲得した適応的表現型をin vitroで解析する実験系を構築する。

研究実績の概要

培養リンパ球の薬剤添加実験(1)と不死化リンパ球由来iPS細胞から肝細胞分化誘導実験(2)をおこなった。

(1)不死化処理した現代日本人由来のリンパ球(8ライン)を使用した。添加薬剤は、エタノールとアセトアルデヒドである。それぞれ、先行研究の臨床的にヒト生体で、中度から高度の酔い状態になる濃度を添加し、RNA シークエンシングによるトランスクリプトーム解析を行った。得られたリードの解析は、ブラウザ上の解析プラットフォームであるRaNA-seqを使用し発現量の変動を示す遺伝子の検出を行なった。さらにブラウザ上の解析ツールであるMetascape をもちいてGene Ontology(GO)解析をおこなった。エタノール添加後に発現量の変動を検出した遺伝子数は38個で、免疫関連遺伝子の発現量が減少する傾向が見られた。アセトアルデヒド添加後に発現変動が検出された遺伝子数はたった4個であった。
(2)Katagamiら(2020)の方法を部分的に変更したプロトコルで胚体内胚葉への分化、さらに肝細胞hの分化誘導実験をおこなった。分化の確認は、マーカータンパク質による免疫染色およびqPCRでおこなった。マ肝細胞への分化のマーカーとしてCYP3A4およびALBの一次抗体をもちいた。その結果、ALBは発現を確認することができなかった一方、CYP3A4は発現を確認することができた。このように、分化効率は100%ではないものの、肝細胞への誘導がある程度は達成されたことが示唆された。さらにqPCRによりALB、CK18、TDO2、およびシトクロムP450スーパーファミリーに含まれる3個の遺伝子(CYP3A4、CYP1A2、CYP3A7)の6個の肝細胞マーカー遺伝子をもちい確認をおこなった。その結果、CYP1A2の発現量が未分化状態に比べ減少したものの、他の遺伝子は発現量の上昇が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験(1)では、私たちの研究室の先行実験の結果と同様に、免疫関連遺伝子の発現量の減少が観察された。しかし、先行実験との間で再現性をとることができない結果もいくつかあった。発現変動遺伝子の種類は、再現性がみられたものの、一番大きな違いは、発現変動遺伝子の数である。この原因は複数考えられるが、薬剤添加実験までの細胞培養日数の違いなどが、関係している可能性がある。
実験(2)の目標である肝細胞分化手法の確立は、肝細胞に分化した細胞の存在を示すことができことで、部分的に達成されたと考えられる。しかし分化誘導後の細胞には、成熟した肝細胞以外の細胞が多く含まれていた可能性が高い。分化していない細胞がノイズとなりRNAシークエンシングとその先の解析結果に影響を与える可能性が大きい。このように、分化効率や成熟度に課題が存在する。これらの課題を克服するために、今後はまず内胚葉分化誘導の播種細胞数、分化誘導を行う期間に注目し改善する必要がある。

今後の研究の推進方策

培養リンパ球をもちいた実験では、先行実験と再現性がない結果が一部みられた。これらの結果を再検討し、再現性が得られないかった原因を明らかにする必要がある。その上で、トランスクリプトーム解析の結果を再解析し、エタノールおよびアセトアルデヒド添加に際して普遍的に観察される細胞の変化を明らかにすることを今後の第1の課題と考えている。
iPS細胞から肝細胞への分化誘導実験は、まずは現在のプロトコルで再現性があるか、示す必要がある。今後はさらに、そのプロトコルの最適化も進める。また現時点では、不死化リンパ球から誘導したiPS細胞のゲノムや染色体が、正常な状態か不明である。今後は、これらを全ゲノムシークエンシングや核型解析で確認する。免疫染色は限られた数のマーカータンパク質をもちいて実施したが、より体系的に免疫染色とqPCRによる分化の確認を行う必要がある。現時点ではiPS細胞の未分化能の確認もおこなっていない。今後は、こうした課題を1つ1つ解決し、iPSC由来肝様細胞をもちいた薬剤添加実験を実施する。

報告書

(2件)
  • 2022 実績報告書
  • 2021 審査結果の所見
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Complete mitochondrial genome sequencing reveals double-buried Jomon individuals excavated from the Ikawazu shell-mound site were not in a mother–child relationship2022

    • 著者名/発表者名
      D. Waku, K. Koganebuchi, T. Gakuhari, M. Yoneda, O. Kondo, T. Masuyama, Y. Yamada*, H. Oota*
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 130 号: 1 ページ: 39-45

    • DOI

      10.1537/ase.220129

    • ISSN
      0918-7960, 1348-8570
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Ancient genome analysis of human remains in the Japanese archipelago2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Oota
    • 学会等名
      International Symposium: Insights into Human History in the Eurasian Stone Age: Recent Developments in Archaeology, Palaeoanthropology, and Genetics
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The spread of Homo sapiens into East Eurasia after the Out-of-Africa, and the subsequent Out-of-Eurasia2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Oota
    • 学会等名
      International Symposium “Human Dispersal from north Eurasia via Beringia into North America”
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Our ongoing projects based on ancient genome: coprolite, iPS, and transcriptome of Jomon people2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Oota
    • 学会等名
      SEBES Seminar
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Double-buried Jomon individuals were not in a mother-child relationship based on the whole mtDNA sequencing2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Oota
    • 学会等名
      “Societies of humans and other animals: meeting of minds” French-Japanese event for and with the public
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
  • [学会発表] ヒト進化と疾患(Human evolution and disease)2022

    • 著者名/発表者名
      太田博樹
    • 学会等名
      ゲノム創薬・創発フォーラム 第11回シンポジウム「中枢神経疾患におけるマイクログリア/血管系の役割と創薬への応用」
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ヒトiPS細胞を用いたエタノール刺激下でのトランスクリプトーム解析のための実験系の構築~予備実験報告~2022

    • 著者名/発表者名
      堀川武志、(中略)、太田博樹
    • 学会等名
      第76回日本人類学会大会・第38回日本霊長類学会大会連合大会(ポスター)
    • 関連する報告書
      2022 実績報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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