研究課題/領域番号 |
21H04791
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 飛鳥 東北大学, 薬学研究科, 教授 (50525813)
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研究分担者 |
加藤 英明 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (80805961)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2022年度: 16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2021年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | GPCR / G12 / DREADD |
研究開始時の研究の概要 |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は既存薬の約3割の作用標的となる重要な膜タンパク質である。このうち、G12とG13へとシグナル伝達を行うGPCRは解析が進んでおらずこれを標的とした薬は開発されていない。本研究では、G12やG13を自在にシグナルを誘導可能な人工GPCRを開発し、これを疾患モデルにマウスに発現させることで、G12シグナルやG13シグナルが疾患治療効果を有するかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
G12共役型デザイナーGPCR(G12D)を肝細胞特異的に発現させたHep-G12Dマウスの個体レベルの代謝変化について、代謝ケージを用いて酸素消費量と二酸化炭素排出量を測定した。デザイナーリガンドを1週間前処置したHep-G12Dマウスにおいて呼吸商が低下していたことから、エネルギー源として脂質が使われることがわかった。ミトコンドリア活性が上昇していることを想定し、デザイナーリガンドを投与したHep-G12Dマウスの肝臓からミトコンドリアを単離し、電子伝達系複合体の活性を測定した。その結果、複合体IVの活性上昇が確認された。さらに、肝臓のRNA-seq解析を行ったところ、酸化的リン酸化が有意に変動する経路として見出された。G12Dを脂肪細胞に特異的に発現させたAdipo-G12Dマウスについて、初代培養脂肪細胞のベージュ誘導系を試したところ、個体での表現型と同様に、デザイナーリガンド処置により脱分化因子Ucp1の発現上昇が見られた。シグナル阻害剤を試したところ、G12経路下流のROCK阻害剤でUcp1発現が抑制された。 アセチルコリンM1受容体とGq複合体の構造情報から、M1骨格デザイナーGPCR(M1D-G12)とGタンパク質のC末端ヘリックスの複合体の分子動力学計算を行ったところ、G12とG13のC末端の結合様式に差異が見られた。Gタンパク質の点置換コンストラクトによる変異体解析により、G12とG13の選択性に関わるGタンパク質の残基を絞り込んだ。さらに、受容体側の変異体解析を行い、G12とG13の活性バランスが変化する変異体を見出した。GPCRの構造解析については、性状のよいFFAR2コンストラクトを構築することができ、Giとの安定的な複合体形成が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に沿って研究を実施し、計画通りの研究成果を得ることができた。当初計画外の成果として、GPCRとGタンパク質の共役選択性のインフォマティクス解析(Matic et al., Nucleic Acids Research 2022; Hauser et al., eLife 2022)、アレスチンの機能制御(Janetzko et al., Cell 2022)、Gs/G13共役型受容体GPR174の構造解析、Giサブタイプ選択性の解析手法の確立(Ono et al., Commun Biol 2023)などの成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
Hep-G12Dマウスについて全身でのエネルギー変化が観察されたことから、肝臓におけるG12D活性化により、肝臓由来の代謝制御ホルモンが産生されるという仮説を立て、ヘパトカインに着目した解析を行う。また、肝臓からのリポタンパク質分泌についての解析を進め、初代培養細胞でG12D活性化によるリポタンパク質分泌を評価する実験系を構築する。Adipo-G12Dマウスにおける脂肪細胞のベージュ化について、個体レベルの熱産生に与える役割を寒冷刺激や高脂肪負荷時の体重増減を指標に解析を進める。また、表皮G12D発現マウスを作出し、表皮におけるG12シグナルの機能を探索する。 G13共役型DREADDの開発については、前年度に得られた構造情報を元にした変異体解析を進める。最近報告されたM3D-Gq構造を元にしたG12Dの分子動力学計算を実施する。FFAR2及び他の脂質受容体の構造解析を進め、G12/G13を含めたGタンパク質選択性の構造基盤の解析に取り組む。
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