研究課題/領域番号 |
21H04801
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 昌平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (50392113)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2023年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2022年度: 12,220千円 (直接経費: 9,400千円、間接経費: 2,820千円)
2021年度: 18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
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キーワード | 制御性T細胞 / 免疫制御 / 自己免疫疾患 / T細胞受容体 / 転写因子 / 免疫寛容 / 遺伝子発現制御 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫抑制機能を持つ制御性T細胞(Treg)は、組織環境の変化に応じて可塑的に遺伝子発現を変化させて適応的に応答することにより、様々な病的免疫応答から自己組織を守っている。我々はこれまでに、Tregが組織環境において適応的に免疫応答を制御するためには、Tregのマスター転写因子Foxp3とT細胞受容体シグナルが協同することが重要であることを見いだしている。本研究ではこの独自の発見を手がかりとしてTregの適応的免疫制御機構を解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、Tregが組織環境の変化に対して適応的に遺伝子発現を変化させて免疫応答を制御するメカニズムの解明を目指している。 (A) Foxp3とBATFの協同によるTCR依存的組織適応メカニズム:野生型Treg、Tconv、Foxp3 R397W変異Treg、BATF欠損TregのscMultiome解析を行い、Foxp3とBATFが協調的にエフェクターTreg特異的なオープンクロマチン領域とそれら遺伝子の発現を促進することを明らかにした。また、Foxp3とBATFが協調的にエフェクターTregの分化を促進するin vitro系を構築した:ナイーブCD4 T細胞にFoxp3とBATFを強制発現させてTCR刺激を加えることで、エフェクターTregと類似した遺伝子発現を示すことを明らかにした。 (B) TCR依存的Treg組織適応におけるFoxp3/c-Myc経路の役割とメカニズム:Foxp3 A384T変異がエフェクターTreg選択的にTCR刺激依存的なc-Myc発現誘導と増殖を障害することを明らかにした。そして、その分子機構を明らかにするためにCUT&Tag法のセットアップを進めた。 (C) Treg組織適応制御におけるエフェクターTregの不均一性とクローン選択の意義:これまでの一細胞RNA&TCR-seq解析により、Foxp3 A384T変異により強いTCRシグナルを受けて組織内に浸潤し増殖したエフェクターTregクローンが欠損することを明らかにし、それらTCRクロノタイプを4種類同定した。今年度、これらのうち1つによりA384Tマウスの肺の炎症を抑制する機能をTregに賦与できることを見いだした。そして、TCRレトロジェニックマウスを作製した結果、このTCRクロノタイプを発現する細胞はTregに分化し、肺所属リンパ節に集積して活性化することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A) Foxp3とBATFの協同によるTCR依存的組織適応メカニズム:scMultiome解析により、Foxp3とBATFが協同してエフェクターTreg分化をトランスクリプトームとエピゲノムのレベルで制御していることを詳細に明らかにしたことは重要な成果であると判断している。そして、エフェクターTreg分化を再現するin vitro系を構築することに成功したことは、Foxp3とBATFによるエフェクターTreg分化制御メカニズムを解明する上でマイルストーンとなる成果と考えている。 (B) TCR依存的Treg組織適応におけるFoxp3/c-Myc経路の役割とメカニズム:Foxp3 A384T変異が強いTCRシグナルを受けたTregのクローン増殖を障害するメカニズムを解明するうえで、少数細胞を用いてFoxp3の結合領域を全ゲノムレベルで同定することが鍵となる。Foxp3 CUT&Tag法のセットアップに目処がたったのは大きな一歩と考えている。 (C) Treg組織適応制御におけるエフェクターTregの不均一性とクローン選択の意義:Foxp3 A384T変異によりクローン増殖が障害される肺Treg特異的TCRクロノタイプが、変異マウスにおける肺の炎症を抑制したという結果は、Tregによる免疫制御の抗原特異性を解明するうえで重要な一歩であり、大きな成果であると考えている。 以上の経緯・結果から、研究は順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(A) Foxp3とBATFの協同によるTCR依存的組織適応メカニズム:今年度構築したin vitro系を利用してFoxp3とBATFによるエフェクターTreg分化メカニズムの解明を進める。具体的には、両者により発現が協調的に制御される遺伝子の一つであるCtla4に着目し、両者によりアクセシビリティーが促進されるオープンクロマチン領域がエンハンサーとして働くのか、そのためにはそこに含まれるFoxp3認識配列が必要であるのか検証する。また、Foxp3とBATFの機能的・物理的相互作用にIRF4が必要か明らかにする。 (B) TCR依存的Treg組織適応におけるFoxp3/c-Myc経路の役割とメカニズム:A384T Tregにおけるc-Myc経路の破綻が生体内におけるTregの組織集積障害に寄与するか検証する。また、A384T変異体によるc-Myc経路障害の分子機構を明らかにするために、活性化させたナイーブ型Tregとエフェクター型Tregを用いてFoxp3 CUT&Tag解析を進める。 (C) Treg組織適応制御におけるエフェクターTregの不均一性とクローン選択の意義:注目している他のTCRクロノタイプについても機能解析を進める。TCRレトロジェニックマウスとトランスジェニックマウスの作製を行い、これらのTCRによりTregがどの組織で分化し肺組織選択的に集積するか、炎症を肺組織選択的に抑制するか解析し、抗原特異性を明らかにする。
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