研究課題/領域番号 |
21H04815
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
尾崎 紀夫 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (40281480)
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研究分担者 |
財津 桂 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (30700546)
大野 欽司 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (80397455)
野田 幸裕 名城大学, 薬学部, 教授 (90397464)
和氣 弘明 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 教授 (90455220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2023年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2021年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
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キーワード | 精神疾患 / 免疫 / 腸内細菌叢 / 神経回路 / ミクログリア / 22q11.2欠失 / 全ゲノム解析 / 患者死後脳 / 短鎖脂肪酸 / 周産期免疫活性化 / 炎症性メディエーター / 神経発達過程 / 新生仔期免疫活性化 / 高次脳機能障害 |
研究開始時の研究の概要 |
脳と免疫系相互作用の観点から精神疾患病態解明の達成を目指し、ゲノム変異を同定した患者由来試料と同一変異に基づくモデル細胞・マウスを用いた多階層的研究を実施する。具体的には、患者ゲノム解析及びゲノム変異患者由来末梢血・腸内細菌・死後脳の解析及びiPS細胞由来神経細胞・オルガノイドの解析。新生仔期免疫活性化状態を経た遺伝子改変マウスの行動解析。ミクログリアと神経細胞の相互作用による神経回路病態解明を目指した、モデルマウスのin vivoイメージング解析。腸内細菌と脳の連関解明を目指した、ヒト・マウスの解析。脳病態と末梢病態との関係の明確化を目指した、ヒト・マウスのインフラマソーム解析。
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研究実績の概要 |
代表尾崎は、ゲノム因子と免疫系の相互作用による脳病態を解明するため、22q11.2欠失を代表的なモデルとし、①当該バリアント等の精神疾患患者を対象とした全ゲノム解析・臨床表現型解析、②当該バリアント患者由来iPS細胞由来ミクログリアの機能解析、③当該バリアントモデルマウスを対象とした全脳c-fos解析、④当該バリアント患者死後脳収集を引き続き実施した。 分担和氣は、統合失調症の周産期免疫活性化モデル(胎児期TLR7注入モデル)を確立し、ストレスを付加することによる行動異常の観察に成功、現在神経回路解析を進めている。一方で感覚統合のメカニズム解明のため、ミクログリアの異種感覚の統合に対する寄与を明らかにし、論文化した。 分担大野は、22q11.2欠失を有する患者、睡眠障害や摂食障害の患者便からDNA抽出後、MiSeqを用いて16S rRNA V3-V4のamplicon-seqを行い、QIIME2パイプラインによる細菌叢解析を実施。さらに便中短鎖脂肪酸分析により摂食障害の患者便ではイソ酪酸およびイソ吉草酸が上昇しており、腸内細菌叢の変化が示唆された。 分担野田は、ポリイノシン:ポリシチジル酸(PolyI:C)を投与した仔マウスにおいて増加していたプロスタグランジンE2(PGE2)の高次脳機能障害への影響を検討した。その結果、PolyI:Cによる新生仔期免疫活性化をおこなったマウスにおいて、TNF-αやIL-6、MCP-1、COX-2の遺伝子発現が増加。PGE2による新生仔期の免疫を活性化させたマウスでは、成体期において社会性、認知機能および感覚情報処理などの高次脳機能の障害が認められた。 分担財津は、PiTMaPメソッドの見直しを行い、キヌレニン経路代謝物の分析条件を検討した。LPSで炎症惹起したマウスの脳試料等を採取し、腹腔内液中IL-1βの上昇が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム解析・iPS細胞解析・モデルマウス解析・死後脳解析のいずれのパートも新たな検体及びデータが得られ、論文化もできていることから概ね順調に進んでいると考えている。また異種感覚統合についても成果を論文化することができ、さらに研究を進めている。22q11.2欠失モデルマウスの解析については、繁殖に遅れが生じていたため、野生型マウスの脳内免疫活性化したモデルマウス(新生仔期免疫活性化マウス)の分子病態の検討に切り替えた。現在、22q11.2欠失モデルマウスの繁殖が安定し、当該マウスに対する新生仔期免疫活性化を順次実施し行動解析を進めている。次年度中旬までに全ての解析を終えることを目標に計画することでこれまでの遅れを取り戻していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
代表尾崎は、精神疾患患者のゲノム・血液・死後脳・臨床表現型については引き続き収集し、適宜解析を進める。22q11.2欠失等の発症に関連するゲノムバリアントを有する患者からはiPS細胞を樹立するとともに、表現型解析についても進めていく。モデルマウスについても空間トランスクリプトーム解析等新しい研究手法を取り入れながら機能解析を進めていく。 分担和氣は、今後異種感覚の統合領域における免疫学的なミクログリアのシナプスに対する寄与を明らかにする。さらに免疫学的な観点から統合失調症の免疫モデル(胎児期TLR7注入モデル)の感覚統合に対するメカニズムの変化を明らかにしていく。 分担大野は、22q11.2欠失を有する患者、睡眠障害、摂食障害の患者において変化をする腸内細菌叢と短鎖脂肪酸の変化の臨床的な意義づけを今後探る。 分担野田は、22q11.2欠失モデルマウスの新生仔期に脳内免疫系を活性化させ、各種行動試験を用いて情動・社会性・認知機能・感覚情報処理機能を計画にしたがって検討する予定である。
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