研究課題
基盤研究(A)
循環器疾患の終末像である心不全は、患者数、死亡者数が世界的に急増しており、その病態解明が喫緊の課題となっています。我々は、DNA損傷およびp53シグナル活性化が心筋細胞の老化・不全化を招き、最終的には心不全を誘導すること、さらにDNA損傷の程度は心不全患者の重症度・治療応答性を規定していることを世界に先駆けて明らかにしてきました。そこで本研究では、心筋細胞でDNA損傷が生じる機序、DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序、老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋リプログラミングによる健常化の機序を解明して、心筋細胞のDNA損傷と老化による心不全発症機序の解明を目指します。
本研究では、心筋細胞でDNA損傷が生じる機序、DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序、老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋リプログラミングによる健常化の機序、について研究を行った。Step 1. 心筋細胞でDNA損傷が生じる機序の解明: 我々はまず、マウス心不全モデルおよびヒト心不全患者の心臓組織検体を空間的シングルセル解析し、心不全病態と関連するDNA損傷関連遺伝子を特定した(関連する2本の論文を投稿し、現在リバイズ中)。続いて、CRISPR/Cas9とシングルセルRNA-seq解析を統合してin vivo Perturb-seqシステムを構築し、このシステムでワークするためのgRNAを設計して心筋細胞に届けるためのAAV9ベクターを作成した。そして、このシステムによって心筋細胞で標的遺伝子を効率的にノックダウンできることを確認するとともに、多数のgRNAライブラリを心筋に届けた後に、シングルセルRNA-seqでその細胞の表現型(全遺伝子発現)を解析する仕組みを構築した。Step 2. DNA損傷・p53シグナルが心筋細胞機能を破綻させる機序の解明: 心筋細胞でDNA損傷が誘発される動物モデル・iPS細胞由来心筋を用いて、シングルセルRNA-seq・シングルセルエピゲノム解析により背景に存在する分子機序を解明した(関連する1本の論文を投稿予定)。さらにCUT&RUNによって、心筋細胞の細胞核内でDNA損傷が生じる遺伝子座や領域を同定することに成功した。Step 3. 老化・不全化心筋が心不全を誘導する機序と心筋健常化リプログラミング機序の解明: 心筋シングルセル解析の結果、肥大心筋細胞の特徴的な転写因子を同定することに成功し、この転写因子を用いて不全型心筋を健常化リプログラミングできる可能性を見出した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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