研究課題/領域番号 |
21H04823
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分53:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本多 政夫 金沢大学, 保健学系, 教授 (00272980)
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研究分担者 |
堀本 勝久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 招聘研究員 (40238803)
土居 信英 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (50327673)
岡田 光 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (50788916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,730千円 (直接経費: 32,100千円、間接経費: 9,630千円)
2024年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2022年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
2021年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 肝微小環境 / 類洞内皮細胞 / Sema6A / 肝再生 / 線維化 |
研究開始時の研究の概要 |
NASHは脂肪化・炎症・線維化を伴って進行し、肝不全や肝発癌発生の要因となる。本研究では肝微小環境の構造理解に基づく新たな代謝性肝疾患治療の確立を行う。肝類洞内皮で高発現するSema6AはSema6A-PlxnA2シグナルを介して肝星細胞の活性化を抑制し抗線維化治療分子として有用な可能性が示唆される。Sema6Aの肝類洞内皮における本来の生理機能を解き明かすことにより、肝再生機構、肝類洞の細動脈化機構、線維化、炎症の機転を解明する。類洞という肝微小構造の解剖学的特徴を利用し、効果的なSema6Aの投与方法を確立する。さらには、PlxnA2をターゲットとした新たな代謝性肝疾患治療を確立する。
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研究実績の概要 |
NASHは脂肪化・炎症・線維化を伴って進行し、肝不全や肝発癌発生の要因となる。本申請では、Sema6Aの肝類洞内皮における本来の生理機能を解き明かすことにより、肝再生機構、肝類洞の細動脈化機構、線維化、炎症の機転を解明することを目的とする。また、Sema6Aの発現低下と自律神経系路の分布異常との関連を明らかにし、自律神経制御異常によって引き起こされる肝の代謝障害の機序を解明する。 肝類洞内皮特異的Sema6A KOマウスに高脂肪食、動脈硬化高脂肪食及び高コレステロール高脂肪食を与え、scRNA-seqにて解析すると、線維化進行に伴い門脈周囲のSema6A陽性類洞内皮の脱落が起こっていた。Sema6A-PlxnA2シグナルの解析ではcanonicalなPlexin下流シグナルとは異なるシグナルの存在が示唆された。 自律神経特異的PlxnA2 KOマウスに四塩化炭素を連続投与すると、コントロールPlxnA2 flox/floxマウスと比較して、有意に肝線維化形成の亢進が認められた。自律神経におけるSema6a-PlxnA2経路の活性化が肝線維化抑制に寄与する可能性が示唆された。 抗肝線維化活性を有する新規抗体のスクリーニングに向けて、新たにヒトPlxnA2細胞外ドメインに結合するVH単一ドメイン抗体を複数取得することに成功した。さらに、肝細胞選択的なSema6Aのdeliveryシステムの開発のため、ヒトとマウスASGR(類似性80%)の両方に結合するVH単一ドメイン抗体を得た。HepG2細胞表面のASGRとの特異的を確認した。 Sema6A-PlxnA2シグナル関連パスウェイが亢進もしくは抑制される化合物を探索した。その結果、15既存薬候補を選定し、3候補について培養細胞を用いた検証で薬効が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高脂肪食(HFD)、動脈硬化高脂肪食(Ath+HFD)及び高コレステロール高脂肪食(GAN diet)を用いたMASLDモデルマウスの作成とscRNA-seq解析から、肝類洞内皮Sema6A、肝星細胞、クッパー細胞、肝細胞との関連の解析データの蓄積が得られた。 Phox2b-cre/ PlexinA2 floxed miceの繁殖は、動物実験に耐えうる数を揃えることができるようになった。MASLD/MASHモデルマウスの作成は、特殊飼料の投与期間が長いため、そのため実験結果を得るのに時間が掛かっている現状がある。 当初の計画で予定していたヒトPlxnA2細胞外ドメインに結合する新規のVH単一ドメイン抗体の創出に成功したこと、また、肝細胞選択的なdeliveryのために作成したASGR細胞外ドメインに結合するVH単一ドメイン抗体が、肝細胞表面のASGRに特異的に結合することを確認できたことから、おおむね順調に進展している。 これまで蓄積された知見及びそれに基づく計測データが、目的に沿っているため、それらに基づくデータ解析は、明快な結果を得ることができている。また、面談によって直接研究進捗を議論することで、方向性の修正/確認を実行できていることも、順調な進捗の要因と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
線維化進行に伴い門脈周囲のSema6A陽性類洞内皮の脱落が起こっていた。Sema6A陽性肝類洞内皮を投与することにより肝微小環境の改善を促し、MASLD/MASHの病態の改善、肝線維化の改善が期待できるかの検討を行う。 自律神経内のPlxnA2の発現抑制は、肝線維化形成に寄与することが肝線維化モデルマウスの検討から示唆された。自律神経特異的PlxnA2 KOマウスにMASHモデルであるメチオニン欠乏食(MCD), コリン欠乏メチオニン低減食(CDAA), 60%高脂肪食(HFD)を投与し、MASH形成に対する効果を評価する。 創出した複数の抗PlxnA2単一ドメイン抗体を組み合わせて二量体化することで、抗線維化活性を発揮するタンデム抗体を探索するためのスクリーニング系を構築する。さらに、肝細胞表面のASGRへの特異的な結合が確認できた抗ASGR単一ドメイン抗体クローンA1.1について、Sema6A(野生型または変異型H212N)または上記の抗PlxnA2単一ドメイン抗体との融合タンパク質を調製し、肝がん由来培養細胞や初代肝細胞の表面に選択的にdeliveryさせることで、より強い抗線維化活性を示す融合タンパク質の創出を目指す。 2023年度の結果に基づき、2つの既存薬剤に絞り込みが行われた。これら既存薬候補に関してChEMBL DBのBioACtivityデータを利用し、標的タンパク質候補の絞り込みを行う。さらに絞り込み結果による候補に対して、Moleculat-Dockingにより、最終的な標的タンパク質を推定する。また、メタボリズム変動データに関しては、データを遺伝子変動データに変換し既存薬推定を行うプラットフォームを利用する。
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