研究課題/領域番号 |
21H04827
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤司 浩一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80380385)
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研究分担者 |
加藤 光次 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20571764)
菊繁 吉謙 九州大学, 大学病院, 講師 (40619706)
森 康雄 九州大学, 大学病院, 助教 (90573345)
仙波 雄一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (90816787)
宮本 敏浩 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70343324)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2023年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2021年度: 15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / TIM-3 / 白血病幹細胞 / 代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは、ヒト急性骨髄性白血病 (AML) 幹細胞にTIM-3分子が特異的に発現し、AML幹細胞はTIM-3のリガンドGalectin-9を分泌することで恒常的なTIM-3シグナルが生じていることを報告した。現在では、TIM-3シグナルを遮断する抗ヒトTIM-3抗体によるAML/MDS治療は、その有効性を検証するPhase3 studyが始まっている。本研究においては、臨床応用が目前に迫ったヒト白血病幹細胞におけるTIM-3分子の機能について、白血病幹細胞特異的なTIM-3シグナル下流分子の同定および、幹細胞性維持に寄与する分子メカニズムの詳細な解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
申請者らは、ヒト急性骨髄性白血病 (AML) 幹細胞にTIM-3分子が特異的に発現し、AML幹細胞はTIM-3のリガンドGalectin-9を分泌することで恒常的なTIM-3シグナルが生じていることを報告した。現在では、TIM-3シグナルを遮断する抗ヒトTIM-3抗体によるAML/MDS治療は、その有効性を検証するPhase3 studyが始まっており、TIM-3シグナル阻害によるヒト白血病幹細胞を標的とした治療法の確立が目前となっている。そこで、本研究計画においては、未だ未解明であるヒト白血病幹細胞特異的なTIM-3シグナルの下流シグナル伝達分子群の同定にマルチオミクス手法を用いて取り組み、同時に、その下流で白血病幹細胞性維持に必須の分子メカニズム解明を行う。これらの研究遂行により、世界に先駆けてヒト白血病幹細胞におけるTIM-3分子の包括的機能解明を行うことを本研究の目的とする。2021年度はTIM-3シグナルの下流分子の探索および、TIM-3シグナルが制御する白血病幹細胞の代謝特性についての研究を中心的に取り組んだ。その結果、以下の2点について明確にすることができた。一つはヒト白血病幹細胞特異的なTIM-3下流エフェクター分子としてHCK ,p120cateninを同定した。これらのエフェクター分子はT細胞と異なりヒト白血病幹細胞に特異的な下流分子であり、下流のcanonical Wnt pathway活性化を効率的にgalectin-9 autocrine loopにより誘導していることを見出した。また、これらのシグナルに必須のリン酸化部位についても同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は当初の予定通り概ね順調に進捗できていると考える。研究計画に記載のあったTIM-3シグナルの下流エフェクター分子群については、ヒト白血病幹細胞に特異的な分子群の同定とシグナルに必要なリン酸化部位の同定を完了した。この研究の遂行により、同じTIM -3シグナルが白血病幹細胞では強力な自己複製シグナルになるのに対して、T細胞においては疲弊化を誘導するメカニズムについて、下流エフェクター分子群の違いによって理解することが可能になり論文発表を行なった(Sakoda et al., Blood Adv 2023)。また、TIM-3シグナルが制御する代謝特性については、分岐鎖アミノ酸以外にも新規代謝経路を同定し、2023年度はこれらの代謝経路が制御するミトコンドリア機能についても検討を行う予定としている。分岐鎖アミノ酸代謝についての研究も順調に経過しており、論文発表を行なった(Kikushige et al., Blood Adv 2022)。また、潜伏期白血病幹細胞研究については、single cell RNA-seqによる解析手法の確立およびデータ取得を数症例で完了し、現在、多数症例での解析を行い、潜伏期白血病幹細胞が特異的に高発現する分子群を同定した。これらの経過から2022年度は当初の予定通り概ね順調に進捗できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画においては、申請書に記載する通りに以下の3つの研究を本研究の柱とし、TIM-3を軸とした骨髄系腫瘍共通のがん幹細胞制御機構と、それを標的とする治療法開発の基盤を創出する。2023年度は下記について詳細に検討を進める。1. TIM-3シグナルが制御する自己複製、増殖機構の解明(β-cateninとmTOR) 2. TIM-3シグナルが制御する未分化性維持機構の解明 (ミトコンドリア代謝制御機構) 3. 治療抵抗性TIM-3+白血病幹細胞が、潜伏期に依存する分子機構の解明 1については論文化が完了したこともあり、次のTIM-3シグナル解明機構として新規リガンドCEACAM1について検討を行う。CEACAM1とTIM-3の関連性については、ハーバード大学のグループと共同研究に取り組んでおり、本年度はこの研究を拡充させることで、ヒトAMLにおけるTIM-3リガンドとしてのCEACAM1について世界に先駆けて研究に取り組む。2については、TIM-3シグナルの下流で制御を受けるユニークな代謝経路として異所性尿素サイクル活性化を同定しており、それがミトコンドリア制御に関与している可能性を昨年度に引き続き解析を行う。3については、潜伏期白血病幹細胞が特異的に高発現する分子を複数同定しており、その機能解析に取り組む。
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