研究課題/領域番号 |
21H04833
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
|
研究機関 | 昭和大学 (2024) 和歌山県立医科大学 (2021-2023) |
研究代表者 |
山上 裕機 昭和大学, その他部局等, 特任教授 (20191190)
|
研究分担者 |
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40398459)
岡田 健一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50407988)
勝田 将裕 和歌山県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (50464673)
尾島 敏康 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60448785)
廣野 誠子 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60468288)
宮澤 基樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90549734)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
2024年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2023年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2022年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2021年度: 14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
|
キーワード | がんワクチン / iPS細胞 / 樹状細胞 / ネオアンチゲン / ペプチド / 膵癌 / Neoantigen / CTOS |
研究開始時の研究の概要 |
がんワクチン治療効果の乏しい膵癌に対して,免疫応答亢進のアクセル作用にブレーキの解除を付加したがんワクチン療法を構築する.具体的には膵癌患者よりiPS細胞を誘導し,樹状細胞へと分化させ,免疫原性の高いneoantigen遺伝子を導入する.さらにこのワクチンシステムにPD-1/PD-L1遺伝子改変を付加することで,腫瘍微小環境での免疫寛容を消失させる.また,実際のワクチン効果は膵癌細胞をのみならず,Organ-on-a-chipによる微細加工チップを用いて精緻に解析することで,殺腫瘍効果を可視化する.本研究は膵癌ワクチン療法の治療限界を打破する画期的なワクチンシステムを構築することを目的とする.
|
研究実績の概要 |
PD-L1 siRNAによるiPS-DCの機能解析をorgan-on-a-chipを用いて行った。iPS-DCのPD-L1をノックダウンすることで、インターフェロンγやIL-2産生が増加することが明らかにでき、さらに、PD-L1分子の発現はepigeneticに制御されていることから、3'末端の3'-UTRに結合するマイクロRNA(miRNA)によりPD-L1の発現が抑制されることを明らかにできた。とくにPD-L1発現が低下したiPS-DCで刺激・誘導されたCTLがCTOS法で樹立した自家腫瘍細胞をいかに傷害するかをOrgan-on-a-chip法で詳細に解析した。Organ-on-a-chipは富士フィルム柿沼千早博士および大阪大学薬学部辻川和丈教授から供与された。抗CD4抗体,抗CD8抗体,抗classI抗体を用いてMHC拘束性およびCTLのfunctional phenotypeを解析し、PD-L1分子のノックダウンによる効果を検討した。つぎに、iPS-DCの所属リンパ節への遊走能は亢進するかについて、Organ-on-a-chipを用いて、膵癌患者で抑制されているiPS-DCの遊走能が亢進するかを検討した。われわれは遊走ケモカインの中で、SLC,Lptn,Migの発現が低いことを明らかにした。そこで、iPS からDCを樹立する過程では容易に遺伝子改変できる利点を生かせて、SLC,Lptn,Migの3遺伝子を導入し、AdRGD- SLC/Lptn/Migを作製した。iPS-DCに遺伝子改変を行い、PD-L1分子のノックダウンによるDC遊走能はorgan-on-a-chipによる遊走能と遊走ケモカインの発現により解析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌切除標本からのCTOS細胞の確立に難渋していたが、培養法を改良することにより作成が可能で可能になった。また膵癌患者3ドナーから順調にiPS樹状細胞の誘導ができている。また、本研究の特長であるOrgan-on-Chipによる解析が可能となったので、研究は計画通りに進んでいる。今後は研究計画にしたがって免疫学的解析を行うことで研究は完遂する.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定は下記である。 腫瘍(CTOS)および正常組織(PBMCs)を次世代シーケンサーによりwhole exome解析し、腫瘍特異的な遺伝子変異を同定する.遺伝子変異により発生しうる変異ペプチドをin silicoにて予測する。これらの予測された変異ペプチドの中から、HLA分子との親和性が高くRNAシーケンスにより発現量が多いと予測されたペプチドを選出し合成を行う。1ドナーから20~30種類のNeoantigen由来ペプチドを想定している。 選出した変異ペプチドに対して、ELISpot assayを用いたバリデーションスタディを行う。ELISpot assayでは腫瘍由来のRNAを導入したiPSDCs (iPSDCs-CTOSivtRNA)により誘導されたCTLsが。変異ペプチドに対して免疫応答するかを検証する。また、選出した変異ペプチドをiPSDCsに直接パルスすることでiPSDCsneoantigenpeptideを作成し、これにより誘導したCTLsが変異ペプチドに対し免疫応答するかについても検討する。この解析で良好な結果が得られれば膵癌ネオアンチゲンに免疫応答するiPS樹状細胞ワクチン療法の現実可能性が立証される。 本研究は樹状細胞による免疫療法の問題点を一気に解決できるiPS細胞・Neoantigen・PD-1/PD-L1 axis抑制の全く新しい免疫療法を開発するものであり、そのProof of Conceptが検証されれば、膵癌患者iPS-DCを用いた第I相臨床治験を行う。iPS細胞には癌化の危険性が示唆されているが、本研究では成熟DCに完全に分化誘導させるので、癌化の危険性はきわめて低い。すなわち、本計画はきわめて現実的であり、日本発のバイオ医薬製剤に繋げることが本研究の将来計画である。
|