研究課題/領域番号 |
21H04834
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有馬 隆博 東北大学, 医学系研究科, 名誉教授 (80253532)
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研究分担者 |
柴田 峻 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40885670)
小林 枝里 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70634971)
小林 記緒 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10803885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
41,990千円 (直接経費: 32,300千円、間接経費: 9,690千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2021年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | ヒト胎盤 / 胎盤幹細胞 / オルガノイド / 妊娠高血圧症候群 / 母体ー胎児間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ヒト胎盤幹(TS)細胞と母体細胞を共培養し、子宮内環境を高度に模倣した世界初の三次元オルガノイドモデルを作製し、母体-胎盤間のシグナル相互作用について学術的な理解を深める。また、妊娠高血圧症候群(HDP)を対象とした疾患TSオルガノイドを作製し、多階層オミックスと細胞特性の解析により、エピゲノム変異と母体とのシグナル分子機構について検討する。その際、少数細胞のエピゲノム解析を可能にする高精度、高感度の技術を応用する。さらに、多数例の蓄積したHDP疾患エピゲノムデータを、機械学習・数理モデリングに適用することで、疾患予測モデルを構築し、診断や予防に役立てる。
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研究実績の概要 |
近年の晩婚化と高齢出産の増加により、胎盤のエピゲノムに異常を示す流産や妊娠高血圧症候群(HDP)の周産期疾患の発症頻度が、年々増加傾向を示している。本研究では、これら疾患の原因となる胎盤のエピゲノム特性の異常が、いかなる分子機構を介して、発生するのか明らかにすることを目的としている。そのため、正常なヒト胎盤発生オルガノイドモデルとHDP由来胎盤オルガノイドモデルを作製し、モデル内のエピゲノム制御機構について解析し、母体と胎盤間のシグナル伝達経路の違いについて明らかにする。具体的には、1)ヒト胚盤胞様構造物と母体細胞(子宮内膜細胞)を共培養し、母体内の胎盤形成と分化を高度に模倣する三次元モデルを作製し、母体-胎盤間の分子ネットワークを包括的に理解する 2)エピゲノム異常を示すHDPの病態を再現するモデルを作製し、エピゲノム異常を明らかにする。本年度(2年目)は、着床後の胚モデル(ブラストイド)と子宮内膜モデルを共培養し、網羅的なシングルセルの遺伝子発現解析(scRNA-seq)を基に、胎盤形成・分化に重要なシグナル経路とリガンド-受容体相互作用の予測を行った。次に、HDP由来TS細胞株の樹立と多階層オミックス解析を行った。分娩後のHDP由来の胎盤より、未分化な細胞性栄養膜細胞を純化精製し、その細胞を用いて疾患由来TS細胞株を樹立した(10例)。また、この疾患由来TS細胞の遺伝子発現(RNA-seq法)、DNAメチル化(WGBS法)、ヒストン修飾(Cut&Tag法)のデータを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ヒト胚発生オルガノイドモデルの作製:胎盤形成現象を再現可能な至適培養条件下に、胚様構造物と子宮内膜の網羅的な遺伝子発現解析(scRNA-seq)を行い、vivoの細胞と類似性について比較した。発現データを基にパスウェイ解析にて、胎盤形成・分化に重要なシグナル経路を予測した。 2)HDP由来TS細胞の樹立:まず妊娠満期の栄養膜細胞からTS細胞を樹立するためには、転写因子SALL4が必要であることを明らかにした。樹立した満期由来のTS細胞は、11番染色体長腕部分に高頻度にインプリント遺伝子領域のLOHを認めた(7/11)。この領域の遺伝子発現は、KIP2により制御されているためShRNA(KIP2)を遺伝子導入した結果、こLOHを回避し、ゲノム解析でもTS細胞と類似の遺伝子発現パターンを示すことが判明した。またHDPのマーカーとして、VEGFやPGF(胎盤成長因子)の血管新生因子は減少し、そのレセプターである遊離型ソルブルFLT1(sFLT1)は増加する。このうち、PGFの分泌減少は妊娠13週ごろから始まり、sFLT1の分泌増加は、妊娠33週以降に認められる。28週未満の超早発型のHDP-TS細胞では、PGFの分泌量は有意に減少し、sFLT1はわずかな増加しか認められず、HDPの病態の特徴を表していることが判明した。現在、これらの疾患TS細胞のゲノムおよびエピゲノム取得と解析に加え、細胞特性についても検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の研究内容をさらに進め、以下の2項目についての研究を計画している。 まずヒト胎盤形成における母体-胎盤間シグナル伝達クロストークについて抗体やマイクロRNAなどを用い、機能的な解析を行う。 次に疾患HDP由来胎盤のエピゲノム異常と母体-胎盤間シグナル伝達制御では、引き続きHDP疾患由来TS細胞の遺伝子発現、DNAメチル化、ヒストン修飾についてデータを取得し、その疾患特異性について解析する。また、エンハンサー・プロモーター間の相互作用に起因する転写制御は、Hi-ChIP法を用いたゲノム高次構造解析を行い、立体的相互作用とエピゲノム修飾異常との関連性についても解析を進める。
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