研究課題/領域番号 |
21H04839
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分56:生体機能および感覚に関する外科学およびその関連分野
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
藤岡 正人 北里大学, 医学部, 教授 (70398626)
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研究分担者 |
岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60160694)
水足 邦雄 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 耳鼻咽喉科, 講師 (40338140)
岡野 ジェイムス洋尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)
小島 博己 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60234762)
細谷 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30645445)
栗原 渉 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90826926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2021年度: 18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)
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キーワード | 内耳性難聴 / IoTセンシング / hiPS細胞 / 聴覚医学 / 霊長類モデル / iPS細胞創薬 / 聴覚障害 / 橋渡し研究 / 霊長類研究 / バイオインフォマティクス / 内耳再生 / 耳科学 |
研究開始時の研究の概要 |
霊長類難聴モデルの知見を基盤に、我々は、ヒトiPS細胞創薬とIoTセンシングによる連日自宅検査から得るビッグデータという全く異なる表現形解析を内耳領域で開発し組み合わせ、内耳再生医療とiPS細胞創薬において、世界初の難聴治療薬導出に成功してきた。本研究ではこの研究基盤を用いて、聴覚に関するビッグデータを取得し、難聴の表現形分類に挑戦する。同時に、遺伝学的な網羅的解析データと統合することで、そのエンドタイピングを目指す。ヒトを含む霊長類での内耳性難聴の病態生理の理解に基づく次世代型創薬を実現することにより、治療法不在と言わてきた感音難聴に対する革新的治療法を切れ目なく創出し続けることを目指す。
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研究実績の概要 |
霊長類in vivoモデル研究とヒトiPS細胞研究の統合的in silico解析を本年度は進めた。研究チームでの過去の内耳iPS細胞誘導プロトコル3法(①Hosoyaら2017, ②Kuriharaら2022, ③Saeki ら2022)に加えて①の改良法を報告し(④Okuraら2023)、①,②,④の多段階分化誘導における段階毎のサンプルでシングルセル網羅的遺伝子発現解析を行い、これを昨年度に構築した⑤胎生期マーモセット内耳発現データベースと比較検討した。⑤から血球系の細胞系譜を除き、遺伝子発現クラスターの経時的変化を抽出してin vitroの3法との差分を検討し、感覚上皮への分化誘導にはWntシグナルやTGF-betaシグナルが一部不足していること等を予備データレベルで取得した。 成体マーモセット難聴モデル研究(慈大チーム: 岡野(J), 小島両教授)では、難聴個体における行動変化や社会性の変化、脳内ネットワーク構造とストレスホルモンの変化を投稿中である (Hirabayashi M et al)。Notch情報伝達系阻害剤の音響外傷内耳への治療効果機序について最終データを取得し、2023年度中に論文化する予定である。 IoTセンシングによる連日自宅検査については、頭位動揺と(院内汎用医療機器である)重心動揺の同時取得・比較を行い、自宅頭位動揺測定でも院内測定と同様の生体量が取得可能なことと、その平衡生物物理学的意義とを海外誌に報告した(Yamanobeら2023)。 全ゲノム難聴体質予測研究については、聴力関連SNPsについてのinformatics解析から、inflammagingの重要性を見出し、共同研究ベースでの外部対照研究を開始する。既報の難聴遺伝子に関連する領域については、iPS細胞創薬研究と並行し、治療効果量推定のための遺伝子改変マウスを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の異動により、研究室引越期間とその後の立ち上げ期間を要し、研究が全体的に若干遅れている。また、IoTセンシング研究はセンサリングの信号処理に関する技術的困難から研究が遅れている。 それ以外についてはほぼ予定通りの進捗であり、新規性・進歩性の高い知見を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
動物愛護の観点から、海外での基礎・臨床一体型研究のスタンスに大きな変化が一層生じている。海外の公的資金配分にも3Rが厳しく評価され、海外論文誌の査読過程でも検討されるようになり、FDAも創薬研究に動物モデルを要求しなくなった。霊長類研究は大きな曲がり角にあり、研究の推進方策を決定づけるための大局的見地として考慮を要する。マーモセットは飼育環境下でも言語コミュニケーションを取る数少ない動物種であり、高次機能や社会性などのモデルとしては今後も活用していく方向になると考えられ、本研究課題の今後の研究の方向性に考慮したい。 動物実験の代替手法という観点からも、ヒトiPS細胞などを活用したorganoid(ミニ臓器)研究は一層強化していく必要がある。内耳領域のヒト細胞分化誘導法は国内外で複数の手法が濫立する現状だが、どの手法も一長一短で、実用性の観点から決め手を欠いている。このような“手探り感”の強い研究領域の現状の中で、私たちはひきつづき網羅的遺伝子解析を含めた最新のinformatics技術を駆使して粘り強くアプローチしていく。 IoTセンシングによる連日自宅検査については、自宅検査用汎用化センシング機器の開発が喫緊の課題である。技術的な壁に当たっている現状と研究推進のタイムラインを考えると、研究体制の見直しも視野に研究推進方策を検討する。全ゲノム難聴体質予測研究はようやく軌道に乗ってきた。論文化に必要な(サイエンスとしての)robustnessに留意した追加データ取得と、治療法開発研究を念頭に置いた橋渡し研究向けの基盤モデル構築を進める。特に高齢者GWAS研究から示唆された「難聴とinflammaging」は今後の一つの研究領域を切り拓く可能性を秘めた新規軸と考えられ、丁寧に仮説検証のプロセスを詰めていきたい。
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