研究課題/領域番号 |
21H04860
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 大地 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70360683)
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研究分担者 |
門田 宏 高知工科大学, 情報学群, 准教授 (00415366)
平島 雅也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究マネージャー (20541949)
萩生 翔大 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90793810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
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キーワード | 運動制御 / 運動学習 / 多自由度 / 冗長性 / 身体運動制御 / 身体運動学習 / 到達運動 / 道具使用 / 内部モデル / 多関節動作 / フィードバック制御 / フィードフォワード制御 |
研究開始時の研究の概要 |
実験室で行われる単純な到達運動などを用いた制御・学習課題によって得られた知見を、より実践的で複雑な身体運動に接続するためには、その「多自由度性」を取り入れた研究を行う必要がある。本研究は、新たに開発する多自由度運動制御・学習課題や、歩行運動、ゴルフスイング動作、投球動作などの実際の身体運動の解析を行うことにより、脳の身体運動制御・学習系が、身体全体の多自由度の動きをどのように協調させながら、運動の成否に直接関わる低次元の量に対して動作修正を行っているかを明らかにすることを目的とする。また、この動作修正メカニズムを応用した動作変容システムの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
運動系が身体全体の多自由度にわたる動きをどのように協調させながら、制御・学習を行っているのかを明らかにすることを目的として、今年度の主な成果は以下のとおりである。 多自由度身体運動の制御・学習機序:VR環境下でスティック状の物体を両手で操作し、その先端を様々な位置のターゲットに向かって到達させる多自由度運動課題を用いて、スティック先端位置、スティックの角度、およびその両方に外乱を加えたときに試行内で生じるフィードバック応答、次試行で生じる運動学習応答を調べた。脳が、課題の成功に直接影響しない自由度の動きをうまく活用しながら、運動コストが最小になるように制御・学習を行う機序が見出された。また、冗長自由度を有する新たな運動の技能の獲得を目指したde novo運動学習課題を構築し、学習中の限られた運動経験が他の状況でどのように適用されるのかという運動の汎化に焦点を当てて実験を実施した。その結果、課題達成に直接関連する運動よりも、課題に非関連の運動のばらつきが、汎化を促進する上で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 制御・学習機序を調べるための方法の開発:視覚外乱による適応パラダイムを、多自由度のトレッドミル歩行に応用した歩様変容システムを構築してきたが、本年度はより実践的な地面歩行で行えるよう、慣性式モーションキャプチャとVRヘッドマウントディスプレイを用いた可搬型システムの構築を行った。C-Stretchセンサ・慣性センサを用いて計測した身体動作パターンに応じて刺激強度を変化させ、複数の筋に電気刺激を加えるシステムを開発した。このシステムを用いることで、刺激中のみならず刺激後も持続するような身体のキネマティクス変化を促せることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多自由度運動課題の実験については、カーソル位置およびスティック角度に外乱を加えて修正応答、学習応答を見る実験についてはほぼ終了している。メインの結果については、レベルが極めて高いことで知られる、北米神経科学学会(SfN)のサテライトシンポジウムMLMCに採択され口頭発表し、大きな反響を得た。さらに、この発表時にもらったフィードバックを考慮に入れて執筆した論文がeLife紙に掲載された(Kobayashi & Nozaki, eLife 2024)。他にも、視覚フィードバックの冗長性を扱った論文(Makino et al., Comm Biol 2023)、de novo課題における冗長次元の変動性が運動学習の汎化に及ぼす影響を明らかにした論文(Kawano et al., Front Sports Act Liv 2024)が掲載されるなど、研究成果を順調に発表できている。 全身運動の動作変容システムについては、2022年度までに開発したセンサーから取り込んだ身体運動データに基づいてリアルタイムで筋電気刺激強度を変化させるシステムを歩行運動に適用することによって、歩行運動時の脚の身体運動パターンを変化させることができるという画期的な結果を得ている。視覚的な外乱を加えるためのヘッドマウントディスプレイを用いたVRシステムについても開発がほぼ終了しており、実際の効果検証を待つばかりの状況となっている。他にも、実践的な多自由度運動の制御・学習過程を調べるために、バッティング時のバットの軌道、身体の動きを1スイング毎に詳細に調べることができるシステムの構築も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究計画は以下のとおりである。引き続き本プロジェクトに集中して取り組んでくれる特任研究員を雇用する。 (1)多自由度身体運動の制御・学習機序の解明:スティック操作課題中のフィードバック応答、学習応答を扱った論文を投稿する。冗長次元(スティック角度)で生じる無駄な動きが、ミスやスランプに関連しているという仮説を検証する。 (2)実践的な動作の検討:バッティングにおけるバットと身体の制御の関連を調べ、1スイング毎に両者がどのように調節されているかを明らかにする実験を継続して行う。 (3)動作変容システムの開発と動作変容の実証:歩行中の視覚外乱、筋電気刺激外乱による歩行運動の変容を扱った論文の完成を目指す。歩行中の視覚外乱については、フィールドでの実験を可能にするヘッドマウントディスプレイを用いたVRシステムを導入した実験を実施する。 (4)多自由度身体運動制御・学習に関与する脳活動の同定:スティック操作課題をfMRIスキャナで行えるようにし、課題に直接関連する次元、関連しない次元での動きと脳活動の関連を明らかにする実験に着手する。
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