研究課題/領域番号 |
21H04863
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松井 利郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
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研究分担者 |
岩崎 克典 福岡大学, 薬学部, 教授 (10183196)
長岡 利 岐阜大学, 高等研究院, 特任教授 (50202221)
道具 伸也 福岡大学, 薬学部, 教授 (60399186)
田中 充 九州大学, 農学研究院, 准教授 (70584209)
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 教授 (90281568)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2024年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2021年度: 18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
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キーワード | 認知症予防 / アルツハイマー / ペプチド / 食品機能因子 / アミロイドβ / アルツハイマー型認知症 / ジペプチド / アセチルコリン系 / in silico / ドッキング / エネルギー代謝 / in silicon / 認知症 / LC-MS / ポリフェノール / 脳機能改善 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、食品因子による未病段階での認知症の改善・予防を実現することである。すなわち、認知機能低下を未病段階で予防・改善する食品因子を予測し、実践できる認知症予防食品科学を構築する。血液脳関門(BBB)を透過できる、腸管吸収性が保証される、標的受容体へ結合し、脳機能を改善できる食品因子を明示し、食生活からの認知症発症予防の可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、食品因子による未病段階での認知症の改善・予防を実現することである。これにより、脳機能低下を未病段階で改善できる食品因子を予測・実践解明し、「認知症予防食品科学」を世界に先駆けて構築する。本年度は、in silico予測されたAdipoR1アゴニストジペプチドの生理作用と生体利用性を検討した。 ICRマウスに対して10 mg/kgあるいは100 mg/kgのTyr-[13C5, 15N]Proの単回投与試験を実施し、2時間までの時間ごとに全血採血および脳摘出してAPDSアミン誘導体化LC-qTOFMSによって吸収量を定量した。その結果、経口投与したTyr-Proが15分後にはそのままの形で脳実質まで到達するとの初めての知見を得ることに成功した。血液系への吸収率は0.15%であり、その2.5%が脳まで到達していることが判明した。次いで、直接的に認知症を改善できる、すなわちアセチルコリン系機能の維持、活性化を評価できる脳神経細胞NE-4Cについて、1 microMレチノイン酸刺激(48時間)を用いて分化させ、Tyr-Proによるアセチルコリン系活性化の有無を評価した。その結果、アセチルコリンを直接LC-MS定量したところ、Tyr-Proは有意に細胞内アセチルコリンの産生を促し、アセチルコリン産生促進にその合成酵素の活性化が関わっていることを明らかにした。 脂肪蓄積抑制・エネルギー代謝亢進の視点から認知症進行を「間接」予防する食品因子の検証を引き続き進めた。その結果、大豆タンパク質と運動の併用、クルクミンと運動の併用、さらに乳酸やフェルラ酸が単独で褐色脂肪細胞化を誘導することをその機構も含めて成果を発信することができた。この結果から、食品因子による認知症進行を「間接」予防することをさらに追及・深化できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroおよびin silico評価された認知症改善ペプチドが経口摂取後に脳まで到達したとの知見は、食品としての認知症予防作用の達成が可能なことを強く示唆する知見であり、脳機能改善食品の創製の基幹となる成果であると判断できるため。
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今後の研究の推進方策 |
認知力減弱を決定する神経伝達物質(アセチルコリン)の低下を防ぎ、アセチルコリン系を賦活させることが抗認知症ペプチドの必須生理機能の一つとなる。そこで、前年度までに明らかにした脳到達可能なジペプチドについて、経口投与後の脳蓄積部位を誘導体化LC-qTOF/MS法により明らかにする。また、血液脳関門輸送経路は未だ不明なことから、BBB初代培養細胞を用いた透過試験系を確立し、透過経路の特定化と、この知見をもとにした新たな脳透過食品成分についての情報収集を図る。 BBB透過ペプチドを長期摂取させ、行動学的に認知改善作用が認められた41週齢老化促進マウス(SAMP8)について、脳(特に海馬)でのアミロイドβ産生挙動に注視して、in vivoでの認知症予防作用を明らかにする。 脳神経幹細胞NE-4C細胞を用いて、神経細胞へと分化誘導したのち、AdipoR1を起点とするアセチルコリン系賦活作用の全容を明らかにする。 「脳移行しなくても」糖代謝改善、体脂肪蓄積抑制・エネルギー 代謝亢進を介して認知症が予防できる食品因子として乳酸に着目し、NE-4C細胞を用いて作用機構の全容を明らかにする。
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