研究課題/領域番号 |
21H04890
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
岩崎 敦 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (30380679)
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研究分担者 |
野田 俊也 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (70934727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
27,040千円 (直接経費: 20,800千円、間接経費: 6,240千円)
2024年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | メカニズム設計 / ゲーム理論 / 計量経済学 / アルゴリズム / 最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,制約付きマッチングや警備計画策定といった相異なる利害をもつ主体のインセンティブを調整しながら稀少なリソースを配分する仕組み(メカニズム)を実際のデータから評価・修正する,データ駆動型インセンティブ工学を構築する.従来の理論は定性的な分析から,現実の制度や慣習における課題を解決してきた.しかし,研究者が企業や政府の担当者を説得して新しいメカニズムを実践するには,その効果を定量的に示す方が望ましい.そこで最適化や学習のアルゴリズム技法を駆使し,データ駆動で新しいメカニズムを事前に評価する技術の理論的基盤を構築する.
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研究実績の概要 |
本研究では,制約付きマッチングや警備計画策定といった相異なる利害をもつ主体のインセンティブを調整しながら稀少なリソースを配分する仕組み(メカニズム)を実際のデータから評価・修正する,データ駆動型インセンティブ工学を構築する.令和4年度は以下の3つの項目を相互にフィードバックさせながら研究を推進した:項目1)不確実な環境下における動学ゲームの均衡計算アルゴリズム;項目2)制約付きマッチングの定量的分析;項目3)警備計画策定問題の定量的分析.ただし,項目3については,項目1が想定以上に成果が上がったため,先に求解アルゴリズムの設計に着手した.
項目1については,突然変異付きレプリケータダイナミクスの構造を利用した正則化先導者追従 (Follow the Regularized Leader) 法ベースの均衡計算アルゴリズムを開発に成功した.理論的にはN人単調ゲームという広いクラスを扱えることを証明した.項目2については,マッチング市場において特定のグループや参加者の属性に応じてマッチングを調整するための税金/補助金の決め方を提案した.
研究業績としては,人工知能系トップ会議の一つであるUncertainty in Artificial Intelligence (UAI)を筆頭に,3件のトップ会議に採択された.また,国内発表としては,2022年人工知能学会3件,2022年情報科学技術フォーラム3件,2023年情報処理学会全国大会4件がある.さらに経済系の学会として,第28回DCカンファレンスおよびゲーム理論ワークショップで発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和4年度は以下の3つの項目を推進した:項目1)不確実な環境下における動学ゲームの均衡計算アルゴリズム;項目2)制約付きマッチングの定量的分析;項目3)警備計画策定問題の定量的分析.ただし,項目3については,項目1が想定をはるかに成果が上がったため,先に求解アルゴリズムの設計に着手した.
項目1については,突然変異付きレプリケータダイナミクスの構造を利用した正則化先導者追従 (Follow the Regularized Leader) 法ベースの均衡計算アルゴリズムを開発に成功した.理論的にはN人単調ゲームという広いクラスを扱えることを証明した.この成果は私的観測でも利用できるようになっており,観測した不完全な(利得の)勾配情報を特定の方向へとわずかに変異させることで,均衡解に収束する特性をもたせることに成功した.この成果は第20回情報科学技術フォーラムFIT2021船井ベストペーパー賞を受賞し,人工知能分野のトップ会議であるUAI2022およびAISTATS2023に採録された.
項目2については,マッチング市場において特定のグループや参加者の属性に応じてマッチングを調整するための税金/補助金の決め方を考える.日本の研修医配属では,政策立案者が,都市部でマッチングされる医師の数を制限して、地方の医療サービスの最低基準を維持することが求められる.そこで,(1)観察されたマッチングパターンから研修医の選好を推定し、(2)制約を満たすために政策担当者が課す税金や補助金を計算する枠組みを提案した.この問題を凸計画法として定式化したとき,最適な課税水準が一意に定まることを明らかにした.さらに、計算機実験により、提案した税制が単純に上限を調整するよりも高い社会的余剰を実現することを示唆した.
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べたように,項目1の均衡計算アルゴリズムの開発は想定をはるかに越えた成果を挙げており,来年度も3つのプロジェクトを情報系トップ会議への投稿を目指して進めている.
項目2については,残念ながら情報系トップ会議への採択は実現しなかったが, 十分なフィードバックを得ることができた.また,経済学系の学会発表で世界的に著名な経済学者に高い評価を得たので,経済系のトップジャーナルへの投稿を目指していく.
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