研究課題/領域番号 |
21H04924
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀川 恵司 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (40467858)
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研究分担者 |
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10281065)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (30509724)
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90274357)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2021年度: 22,750千円 (直接経費: 17,500千円、間接経費: 5,250千円)
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キーワード | 西南極 / 南極氷床 / 温暖化 / 鉛同位体比 / 鮮新世 / 西南極氷床 / 氷床融解 / 砕屑物の起源解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の海洋観測と衛星データから,西南極氷床の底面に暖水が流入し,棚氷の融解が加速していることがわかってきた.この暖水流入は,将来,南極氷床を融解させ,海面水位を10m以上上昇させる可能性がある.本研究では,海水準が10-23m程高かった鮮新世の温暖期を対象にして,暖水流入による南極氷床の大規模な融解があったかどうか,また実際にどの地域でどの程度,融解していたかを南極周辺の海底堆積物の化学分析から明らかにする。本研究を通して,温暖期における氷床の動態(脆弱域・融解量)について知見を深め,海水準の将来予測精度の向上に資する研究成果を創出する.
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研究実績の概要 |
本研究では,IODP379次航海で採取されたアムンゼン湾沖試料を対象として,Pb同位体比分析から氷床融解域の特定を研究目的としている。これまで研究対象とした時代(日射量,大気CO2濃度)および融解規模が異なるとされる9つの氷床崩壊イベント層(間氷期イベント)のうち,6つのイベント層について,約120層準でFe-Mn水酸化物の鉛同位体比と砕屑物のPb同位体比分析を行った。また,3つのイベント層では,砕屑物のSr同位体比とNd同位体比データも分析した。さらに,Sr-Nd-Pb同位体比データから氷床融解域を高精度に特定するために,南極基盤岩(約100試料)と西南極沿岸の表層堆積物試料(約30地点)についても,砕屑物のPb同位体比とSr-Nd同位体比を分析した。
南極大陸基盤岩の同位体比データに基づき,各地域の同位体比の地域特性を定義し,同位体比マップを作成した。また,西南極縁辺域の表層堆積物についても,アムンゼン沖コアの砕屑物の起源として,南極半島,ベリングハウゼン湾,アムンゼン東部,アムンゼン西部,マリーバードランド西部,スルツバーガー湾の6つの地域を認定し,それぞれの地域の砕屑物をNd-Pb同位体比を明らかにした。これらの基礎データをもとにアムンゼン沖コアの砕屑物の起源解析と氷床の融解域の解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究対象としたアムンゼン沖の鮮新世温暖期の氷期では,砕屑物の同位体比が現在のアムンゼン東部から供給される砕屑物の同位体比と一致しており,鮮新世の氷期においても現在の陸棚縁辺まで西南極氷床が発達し,陸棚縁辺からの重力流による砕屑物供給が卓越していたことが明らかになった。一方,間氷期には,ベリングスハウゼン海とアムンゼン東部からの砕屑物供給が増加しており,これらの地域における棚氷の融解に伴ってメルトウォータープリュームが増加していたと解釈された。また,間氷期から氷期に移行する堆積物には,大陸内陸部に起源を持つ砕屑物の寄与が見られることから,特に温暖な間氷期には西南極氷床が内陸まで大きく後退していたことが明らかになった。 西南極ではこれまでにないほどの時間解像度での分析,Sr-Nd-Pbといった3つの同位体トレーサーを使った砕屑物の起源解析,南極大陸内陸部の基盤岩を含めた同位体マップの作成を通して,鮮新世の氷期および間氷期の西南極氷床の動態が初めて明らかになってきた。氷期においてはGohl et a. (2021,代表者も共著)らの地震波データで示されたように,温暖な鮮新世においても西南極氷床が陸棚縁辺まで大きく拡大していたことが同位体比データからも裏付けられた。一方,間氷期には氷床が大きく後退していた。鮮新世の西南極氷床は氷期ー間氷期においてダイナミックに縮小拡大を繰り返していたことは間違いない。現在までに得られているデータ量と進捗度合いは当初の計画を大きく超えるものである。
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今後の研究の推進方策 |
南極縁辺域の表層堆積物試料のSr-Nd-Pb同位体比分析(追加試料,およそ10試料)とアムンゼン沖U1532コア試料のSr-Nd-Pb同位体比分析(論文化のための追加試料の分析)を進め,同時に,アムンゼン沖試料に見られる大規模融解イベントをウィルクスランド沖試料についても追跡し,東西2地域での融解イベントの連動性・地域性について詳細に解析する。 珪藻を比較的多く含む間氷期の堆積物を対象として,Zn/Si比の分析を行い,CDWの挙動解析の指標となるか検討する。
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