研究課題/領域番号 |
21H04935
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者 |
丸本 幸治 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (90371369)
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研究分担者 |
丸尾 裕一 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 研究員・ポスドク (00975534)
近藤 文義 海上保安大学校(海上保安国際研究センター), 海上保安国際研究センター, 准教授 (40467725)
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 専任教授 (60311544)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)
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キーワード | 水銀 / フラックス / 緩和渦集積法 / 再放出 / 海洋 / 溶存ガス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、環境中の水銀循環において重要な役割を果たしている大気-海洋間におけるガス状水銀の沈着と再放出の交換量(フラックス)の観測に直接的な観測方法である緩和渦集積法(Relaxed Eddy Accumulation 法、以下REA法)を世界で初めて適用するものである。観測システムの開発を実施し、全球及び海域レベルでのより確度の高い水銀ガスフラックスの動態を明らかにする。従来法との比較検討も行い、海洋からの水銀放出量やその変動要因、地球規模の水銀循環量についての従来の知見を更新する。
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研究実績の概要 |
2023年6月から7月の約2ヶ月間に亘り実施された西部北太平洋亜寒帯域での学術研究船・白鳳丸による研究航海に参加し、これまで海洋上での適用実績がない緩和渦集積法測定システムを用いたガス状水銀フラックスの観測を行った(以下、REA-Hg法)。また、同システムによる観測法の妥当性を評価するため、比較として従来の連続方式の気液平衡法システム(以下、従来法)を用いた観測も実施した。REA-Hg法については、大気中水蒸気濃度の乱流変動値を用いた上向き風と下向き風の空気塊の判別方法を導入した。 従来法により算出したガス状水銀フラックスは測定期間中に常時正の値を示し、海洋から大気へ水銀が放出されていることがわかった。ガス状水銀フラックスの大きさを算出する上で重要なパラメータである海水中の溶存ガス状水銀濃度は平均16.3±5.3 pg L-1であり(6月の航海のデータのみ)、特に黒潮海流域において高い傾向がみられた。この期間中の放出フラックスの平均値は、親潮海流と黒潮海流の混合域と推定される北緯41度より北と南のそれぞれで0.77±0.59、2.5±1.7 ng m-2 h-1であり、南の海域の方が大きかった。なお、7月の航海で得たデータについては現在解析中である。一方、REA-Hg法で測定したガス状水銀フラックスについては現在解析を進めているところであるが、フラックスが放出か吸収かを決定づける上向き風時と下向き風時の空気塊の水銀濃度はほとんどの期間で上向き風時が高く、REA-Hg法でも海洋から大気に水銀が放出されていることが示唆された。濃度差の平均値は北緯41度以北で0.02±0.05 ng m-3、北緯41度以南では0.11±0.09 ng m-3であるため、海洋からの水銀ガス放出量が北の海域では小さく、南の海域では大きい可能性が示唆され、従来法による測定結果と整合的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発しているREA-Hg法及び連続方式の気液平衡法システムを用いた従来法の双方でガス状水銀フラックスの観測を行うことができ、北太平洋西部海域において2023年6月、7月の約2ヶ月に亘る観測データを得た。さらにREA-Hg法及び従来法で取得したデータの解析プログラムをPythonによって開発し、ガス状水銀フラックスの計算を進めている。従来法によって観測したフラックスは6月のデータについてすでに解析済であり、7月のデータについても近日中に解析が完了する見込みである。 REA-Hg法によってガス状水銀フラックスを算出するためには、緩和係数と鉛直風速の標準偏差を決定するために10 Hz(0.1 s)間隔で得た気温と風速の膨大なデータを解析する必要があり、解析に時間を要している。しかし、REA-Hg法においてフラックスが放出か吸収かを決定する上向き風時及び下向き風時の大気中水銀濃度の差は北の海域でほぼ0 ng m-3であるか、わずかに上向き風時の方が高く、南の海域では上向き風時の方が高かった。この傾向は従来法と整合的であり、過去に適用実績のない海洋上でのREA-Hg法による直接的な微量水銀フラックス観測技術の有用性が期待できるものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に得られた観測データの解析を進め、新規のREA-Hg法と従来法で得られるガス状水銀フラックス観測値の比較検討を行う。従来法については、水俣湾及び八代海、瀬戸内海における観測も引き続き実施し、クリーン採水とマニュアル分析法によるガス状水銀フラックス値と比較して、従来法で得られるフラックスの値の精度確認も適宜実施する。これらの方法では二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)のフラックスも同時に観測できるため、それらの観測値と気象、海象データを解析することでガス状水銀フラックスの変動要因を探索する。また、文献検索等により北太平洋西部海域で得られたガス状水銀フラックスの値と他の海域における値を比較し、有意な差があればその要因についてもさらなる調査を行う。一方、2023年度に実施した白鳳丸の研究航海では高濃度の溶存ガス状水銀およびCH4ガスが観測された海域があり、同海域における詳細な調査を2024年7月に実施する予定である。
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