研究課題/領域番号 |
21H04939
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 伸吾 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (90202043)
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研究分担者 |
脇谷 量子郎 東京大学, 大気海洋研究所, 特任准教授 (00816069)
笠井 亮秀 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (80263127)
萩原 聖士 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80704501)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
42,380千円 (直接経費: 32,600千円、間接経費: 9,780千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2021年度: 17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
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キーワード | ウナギ / 河川生態 / 輸送分散 / 環境変動 / 成長生残 / 放流 / ウナギ属魚類 / 生残成長 / 資源保全 / テレメトリー調査 / 環境DNA / 分布 / 河川構造物 / 地球環境変動 / 数値シミュレーション / 行動 |
研究開始時の研究の概要 |
温帯ウナギと熱帯ウナギの合計8種を対象に産卵海域から成育水域に至る仔稚魚の輸送分散過程と、そのうち2種のニホンウナギとオオウナギを対象とした淡水・汽水の成育水域での成育過程を、数値シミュレーションと現場調査、および生態学的解析に基づき、同位体や環境DNAなどを用いた最新の分析手法も駆使して明らかにする。成育水域では、ダムや堰などの河川横断構造物、垂直護岸や三面護岸、揚水施設などの物理的環境改変によって生態系の空間的な連続性が失われ、生活史の分断と生息地の喪失が問題となっており、その影響を定量的に評価することを目指す。資源の減少が著しいウナギ属魚類を保護する観点からも本研究の社会的意義は大きい。
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研究実績の概要 |
[ニホンウナギ幼生の分布特性] ニホンウナギ幼生の分布特性を明らかにするために、北赤道海流の産卵域における7回の調査航海のデータに基づき解析を行った。その結果、塩分フロントの変動と対応した分布が認められ、ニホンウナギを含むレプトセファルス幼生となる魚種の摂餌特性は二分されることが分かった。 [オオウナギ孵化仔魚期の周年にわたる経験水温と水深の推定] オオウナギの産卵海域の環境をより高解像度で推定するため、台湾南部で採集された稚魚標本を元に耳石による微量元素分析を昨年度とは異なるアプローチで行った。SIMSを用いて酸素安定同位体比分析を実施したところ、耳石核δ18O 値から、経験水温は19.2-29.1℃、分布水深は53-217mであり、季節間による有意な差は見られないことが明らかとなった。この結果は、ニホンウナギの卵および孵化仔魚が分布する範囲に比べて有意に大きいことから、他種との競争を軽減し、生存率を高めるための分散戦略である可能性が示された。 [奄美大島におけるオオウナギの基礎生態] オオウナギの非致死的な食性調査手法の確立や回帰能力の実態把握を目的とした野外実験を行った。非致死的な手法開発では、全胃内容物重量の約80%が採取可能となり、食性を継続的に追跡する手法であることが明らかとなった。また、河川から海への移送放流実験では、海への移送から河川へと回帰することが明らかとなり、洪水などで海へ移送されても河川へと回帰できることが分かった。 [養殖ニホンウナギの放流後の河川生態] 静岡県の深田川および鹿児島県の網掛川におけるPITタグ標識を施した養殖個体の放流追跡調査から、調査水域からの移出を含んだ生存率は、深田川では放流後1日目で0.734、1ヵ月で0.462、網掛川では放流後4日目で0.661、2ヵ月で0.363であり、放流直後に大きく移出・死亡していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仔稚魚の産卵海域から生息海域に至る輸送分散過程と海洋環境との対応について、既往の学術研究船白鳳丸の観測データに基づき解析を行い学術論文として公表するなど順調に研究を進めている。また、ニホンウナギやオオウナギを対象とした河川におけるテレメトリー調査や採集も順調に行えており、放流効果や生息域の固執性に関する研究が進んでいる。オオウナギについては、SIMS酸素同位体比を用いて孵化仔魚期の経験水温および経験深度を明らかにしており、学術論文として取りまとめ中である。さらに、得られた成果の学術誌への投稿や学会発表も順調に行えていることから、全体としておおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンウナギとオオウナギを対象とした成魚の採集およびテレメトリー調査を行い、水域における固執性や放流効果の影響を評価する。とくに、ウナギが適切な生息水域と認識するメカニズムや、体サイズ・栄養状態が分布に与えるメカニズムに焦点を当てて解析を進める予定である。また、ウナギ属魚類だけでなく同所的に生息する他魚種との競合関係についても評価することを目的に、生物採集と胃内容物調査を継続して実施する。今年度が最終年度にあたるため、これまでに得られた成果を取りまとめることに傾注すると同時に、学会の研究発表大会などで発表と学術雑誌への掲載を目指し成果公開を継続して行う予定である。
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