研究課題/領域番号 |
21H04942
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
比嘉 充 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30241251)
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研究分担者 |
田中 俊彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00179772)
奥村 哲也 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (10380817)
杉本 悠 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (30848841)
松本 英俊 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (40345393)
通阪 栄一 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40363543)
木村 睦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60273075)
Jiang Fei 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (60734358)
垣花 百合子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 学術研究員 (90592014)
鈴木 祐麻 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00577489)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,900千円 (直接経費: 33,000千円、間接経費: 9,900千円)
2023年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2022年度: 12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2021年度: 21,970千円 (直接経費: 16,900千円、間接経費: 5,070千円)
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キーワード | 塩分濃度差エネルギー / イオン交換膜 / 逆電気透析 / 再生可能エネルギー / 逆電気透析発電 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではRED発電の実用化を目指して (1)超薄膜・超低抵抗イオン交換膜、(2)凹凸流路一体型セルで構築された高効率SGE変換セル、(3)RED前処理に特化した陽・陰イオン交換ナノファイバーろ過装置、(4)スタック無解体洗浄法、(5)大型化のためのRED性能を予測するREDシミュレータおよび原型モジュール、(6)RED用パワーコンディショナー の開発を行う。これらに基づいて実証型RED発電システムの試設計を行ことでRED発電システムを飛躍的に高性能化・大型化し、国産の再エネ型ベースロード電源となり得るRED発電システムの実用化を加速する。
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研究実績の概要 |
本研究では国産の再エネ型ベースロード電源となり得るRED発電システムの実用化を目指して超薄膜・超低抵抗イオン交換膜(IEM)、 凹凸流路一体型セルで構築された高効率SGE変換セル、 RED前処理に特化した陽・陰イオン交換ナノファイバーろ過装置、 スタック洗浄法、 REDシミュレータおよび原型モジュールを開発する。 水溶性PVAフィルム上へ化学気相蒸着(CVD)による膜厚50 nm以下の荷電パリレン膜を成膜し、その後不織布へ転写することで超薄膜・超低抵抗IEMの開発を進めた。REDスタックの流路形状(出入口数)が圧力損失に及ぼす影響について数値シミュレーションを行った結果、出入口数によって圧力損失が異なることが判明した。また膜表面に凹凸構造を形成したプロファイル(PF)膜を作製し、このPF膜を積層したREDスタックを用いることで、通常の平膜と比較して大きな出力密度を達成した。 RED用前処理装置を構築するために生産性に優れたナノファイバー製造方法である溶液ブロー紡糸法を用いてイオン交換ナノファイバー(IE-NF)を作製し、このIE-NFを熱プレスすることで機械的強度を向上させた。REDスタック内に付着したバイオフィルムの洗浄法を検討するために、従来の酵素洗浄に界面活性剤と高濃度塩水を組み合わせた結果、洗浄効率が向上することを確認した。 REDシステムを系統連携するために、RED の連系システムの実験装置構築に着手し、汎用直流電源とノートパソコンから構成される模擬 RED を構築した。また絶縁型 SEPIC を用いて模擬REDの最大発電電力追従制御を実現した。 大型REDスタックの発電性能を調べるために、膜を300対、有効膜面積90 m2のスタックを作製し、模擬塩水と実海水を用いて発電評価を行った。 これらの結果より10kW級REDシステムの試設計を行うための基本技術の確立を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超薄膜・超低抵抗IEM の開発においてCVDによる荷電膜の不織布上への成膜方法を検討し、水溶性PVAフィルム上への膜厚50nm以下の荷電パリレン膜の成膜、その後の不織布への転写法を成功させた。さらに架橋構造の導入により機械的強度が飛躍的に向上し、欠陥の発生を大幅に抑制することで本方法の実用化に大きな進展を得た。 REDスタックの流路形状と圧力損失の関係について数値シミュレーションにより、溶液の出入口数の構造最適化により圧力損失が低減することが判明した。また流路内イオン分布において凹凸構造IEM(プロファイル:PF)膜は平膜よりも、濃度分極に起因する電気抵抗の低減が数値シミュレーションで確認された。PF膜の大面積化に成功し、このPF膜を使用したREDスタックで、通常の平膜と比較して1.6倍高い、出力密度が得られることを実証した。 REDに特化した前処理法を開発するために、溶液ブロー紡糸法によるイオン交換ナノファイバー(IE-NF)を作製し、この作製したNFは、電界紡糸法NFと比較して、配向結晶化が促進されること、また熱プレス処理によりNF交点を熱融着させることでIE-NF膜の機械的強度が向上することを確認し、実用化に大きく進展した。バイオフィルムに有効である酵素洗浄と界面活性剤と高濃度塩水の組み合わせによる新規の洗浄法を開発した。 REDシステムを系統連携するために、汎用直流電原とパソコンから構成される模擬 RED を構築し、構築した模擬 RED は実際のREDと同等の発電特性を示すことを確認した。 膜を300対積層し有効膜面積90 m2の大型スタックを作製し、模擬塩水と実海水を用いて発電評価を行い、模擬塩水では出力100 W、実海水では出力63 Wを達成し、REDスタックの大型化への課題を明確にした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作製した超薄膜・超低抵抗イオン交換膜は98%以上の阻止率が得られているが、不織布との密着性が低い部分が存在する。この課題を解決するために、不織布密度を変化させ転写後の安定性向上を検討し、REDスタックでの発電試験を行う。REDの大型化における問題点を解決するために、これまでに開発した計算モデルをベースに改良を行う。特にイオン交換膜での水の浸透やイオン選択性を考慮した計算モデルの開発、電流とREDスタック内の塩濃度分布の関係、流路形状が濃度分布に及ぼす影響について検討する。また大型スタックにおいてさらに膜対数を増やし、模擬塩水と実海水を用いて発電性能評価を行う。より高効率なSGE変換セルを実現するために、これまでに開発した解析手法に基づいてPF膜形状の最適化を行い、新規PF膜を作製する。作製したPF膜の形状安定性をレーザー顕微鏡で評価するとともに、PF膜を積層したREDスタックの発電性能を評価する。 前年度開発したRED前処理用のIE-NF膜を大型化し提供する。このIE-NF膜を用いて実海水の前処理を行う。RED装置内流路を模倣した微小流路にバイオフィルムを形成させ、酵素、界面活性剤、高濃度塩水の洗浄作用を評価する。また、画像解析により洗浄メカニズム解明し、より効果的な洗浄技術を確立する。 REDシミュレータを開発するために、これまでに構築した模擬REDと連系インバータを用いて模擬REDの連系システムの完全構築を行う。
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