研究課題/領域番号 |
21H04950
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 守 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (70237949)
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研究分担者 |
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
新岡 宏彦 大阪大学, データビリティフロンティア機構, 特任准教授(常勤) (70552074)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2023年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2022年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2021年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
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キーワード | 非線形ラマン散乱 / 無標識イメージング / 顕微内視鏡 / 内視鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
色素の静脈投与なしに癌を内視鏡検査で確定診断するために,上部消化管内視鏡(胃カメラ)の 鉗子孔に挿入可能な非線形ラマン散乱プローブ顕微内視鏡を開発する.非線形ラマン散乱を用いることで,無染色・高空間分解能・高速な細胞,細胞核の形状観測を可能とし,内視鏡検査時の 確定診断を実現する.プローブヘッドを受動光学素子のみで構成することで直径3 mm 長さ 20 mm 以下に小型化して,曲がった胃カメラの鉗子孔にも挿入可能とする.さらに,光ファイバーを用いた光源を開発し,持ち運び可能な非線形ラマン散乱プローブ顕微内視鏡を実現する.
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研究実績の概要 |
色素の静脈投与なしに癌を内視鏡検査で確定診断するために,上部消化管内視鏡(胃カメラ)の 鉗子孔に挿入可能な非線形ラマン散乱プローブ顕微内視鏡の開発を目指している.非線形ラマン散乱の一種であるコヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)を用いることで,無染色・高空間分解能・高速な細胞,細胞核の形状観測を可能とする.本年は,CARSプローブ顕微内視鏡におけるキーデバイスである,2波長板(DWP)の設計を行なった.DWPは,直交する偏光を持つ2波長の励起光を,互いに平行な偏光へと変換するデバイスである.このために,709 nmnの励起光に対してはリタデーションをゼロとし,888 nmの励起光に対してはλ/2となるように設計する必要がある.2波長に対してこのような特性を持つ波長板は,2種類の1軸性結晶を用いれば可能であるが高コストとなるため,1種類の結晶で設計可能かシミュレーションした.結晶には水晶を用い,発生するCARS光強度を最大となるように結晶の厚さを最適化したところ,0.1980 mmで,完全に平行な光を用いて励起した際の99%のCARS信号が得られることが分かった.また,同様に90%以上のCARS信号が得られるラマンシフト領域は,2,530 to 2,980 cm-1であることが分かった.したがって,このDWPでCH伸縮振動に対応する高波数領域のCARS信号を十分取得できることが分かった.また,励起光源としてファイバーレーザーベースの光源を作成し1550 nmでのパルス発振を確認できた.これまでに開発してきた原理検証システムを用いて,ポリスチレンビーズや培養細胞やラット組織の観測を行なった.ポリスチレンビーズの観測は行えたが,培養細胞や組織のCARS信号を得ることはできなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織のCARS信号が得られなかった原因には,光ファイバーバンドルがマルチモードになっていること,光ファイバーから発光が生じることが挙げられる.現在使用している光ファイバーバンドルよりも,コア径が約半分(4.3 μm)のものを利用して,射出される光の品質(パルス幅,偏光の状態)を向上させ,よりCARSの発生効率を向上させる.また,光ファイバーからの発光を除去する手法を検討し,より低バックグラウンドでの観測を行うことで,組織の観測を可能とする.
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今後の研究の推進方策 |
本年は,1) 原理検証システムでのラット組織観察,担がんヌードマウスから取得した組織観察,ヒトから得られた組織の観察,2)ビーム走査時のCARS光強度の一定化,3)励起光源の開発,4) 微小プローブヘッドを用いた観察 を行う. 1)は,上記に記載の手法を用いて観測を行い,その後がん組織の観測の検証をおこなう. 2)は,光ファイバーバンドルの各コアから射出した光の偏光状態が異なるため,得られるCARS光の信号強度が一定とならないことが原因である.光ファイバーバンドルに入射する偏光の状態を高速に調整し,各コアから射出した光の偏光状態を一定にする機構の開発を行う.また,四光波混合発生だけでなく,光ファイバーから発生する光を除去する手法の開発も行う. 3)は,1550 nmで発振したフェムト秒レーザーを高非線形ファイバーに導入・増幅してえられる,1580 nmの倍波と1019 nmの光を用いたCARS励起光源を開発する. 4) は,微小光学系を構築し,これを用いたイメージングに挑戦する.まずは,3Dプリンターを用いたフォルダーで光学系を固定してイメージングを行う.これに成功したら,小型でかつ一体化したプローブヘッドの開発を行う.
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