研究課題/領域番号 |
21H04960
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
成瀬 恵治 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40252233)
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研究分担者 |
西山 雅祥 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10346075)
高橋 賢 岡山大学, 医歯薬学域, 研究准教授 (50432258)
片野坂 友紀 金城学院大学, 薬学部, 准教授 (60432639)
森松 賢順 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (70580934)
入部 玄太郎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90284885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
43,290千円 (直接経費: 33,300千円、間接経費: 9,990千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2021年度: 25,480千円 (直接経費: 19,600千円、間接経費: 5,880千円)
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キーワード | メカニカルストレス / 高圧力環境 / 圧力刺激 / 伸展刺激 / 剪断応力 / 細胞内カルシウムイオン / 活性酸素種 |
研究開始時の研究の概要 |
生体各所で、メカニカルストレス応答不全が疾患発症に直結することが実証され、疾患の成因解明・治療にメカニカルストレスを考慮に入れたメカノメディスンを我々が提唱してきた.開発した伸展や剪断応力を負荷する装置は、現在までに汎用的な技術として確立されてきたが、生体組織でのメカニカルストレスはより複雑であるため、解明したい生命現象に沿ったメカニカルストレス負荷装置の開発が急務であった.そこで本研究では、より複雑な生体環境を模倣するメカニカルストレス刺激装置を開発する.さらにこれを用いて、これまで不明であった分野へメカノメディスン研究を発展させ、生体のメカニカルストレス応答やこれに基づいた治療へ貢献する.
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研究実績の概要 |
静水圧下ストレッチシステムの開発に関し、高圧力下における蛍光分光器の構築を行なった. 心筋細胞に対するマルチメカニカルストレスへの応答解析に関し、以下の3つの成果を得た.①圧力刺激への応答:Ca2+濃度指示薬を用いた観察から、筋細胞は高圧力下では細胞内のCa2+濃度を増加することなく収縮することが示された.この結果を検証するため、高圧力下で蛍光分光器を構築し、Ca2+濃度指示薬の蛍光強度は圧力変化に対して顕著に変化しないことを確認した.②伸展刺激への応答:心筋細胞の急性伸展刺激は、SGLT1への刺激ではなく、SMIT1を介したNOX2によるROS産生を増加させることが示唆された.この仮説は、マウス心から単離した心室筋細胞を用いた実験によって検証され、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジン(EMPA)の存在下では伸展刺激誘発性ROS産生が抑えられることが示された.SGLT2は心筋細胞には発現していないが、EMPAはSGLT1とSMIT1の活性もある程度阻害することが明らかになった.③血行動体負荷への応答:心臓の血行動態負荷に対する適応能力の形成機構を明らかにすることを目的として、心臓の成長と機能的成熟におけるTRPV2の役割を検討した.その結果、心筋細胞の成熟に先行して生じる膜局所でのTRPV2を介したCa2+流入が、血行動態負荷に対する心臓のしなやかな応答に必須であるという実験事実を見出した. マイクロ流体チップ上で血管内皮細胞を培養する実験系において、圧力刺激、伸展刺激、および剪断応力刺激を負荷して一酸化窒素放出をライブイメージングで記録する実験方法を確立した.さらに、本助成事業で購入した光造形機にて生体材料用の樹脂を用いてマイクロ流体流路をプリントし、その流路上に細胞を培養してレーザー共焦点顕微鏡で観察を行うことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧環境下にて細胞内カルシウムイオンを測定し、記録することができた. マイクロ流路中で血管内皮細胞を培養し、圧力、伸展、および剪断応力のマルチメカニカルストレスを負荷して一酸化窒素応答をライブイメージングする技術を確立した. 光造形機にて生体材料用の樹脂を用いてマイクロ流体流路をプリントし、その流路上に細胞を培養してレーザー共焦点顕微鏡で観察を行うことに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
開発したメカニカルストレス装置を利用した細胞のメカニカルストレス応答と、その破綻による病態発症機構の解明細胞内情報伝達機構の解明:高静水圧およびストレッチ刺激を負荷した細胞のマイクロアレイ解析の結果から、それぞれの刺激に対する遺伝子発現の変化を特定する.特に、細胞接着斑および細胞骨格形成に関与する遺伝子に着目する.さらに、細胞の遺伝子発現変化に対する高静水圧およびストレッチ刺激の複合的な影響を解析する.歯周膜細胞に同時またはシークエンシャルなストレッチ・高静水圧刺激を負荷し、細胞内カルシウム応答の高時間分解能・高空間分解能な解析を行う.この目的のため、カルシウム濃度濃度可視化試薬またはGCAMP導入細胞を用いる.剪断応力・ストレッチチャンバーでのiPS心筋細胞3次元培養:血管内皮細胞は通常、血管の走行に並行に配向する.しかし昨年度の研究により、屈曲部を持つ流路上に血管内皮細胞を培養した場合、内皮細胞の配向が不規則となることが分かった.このことは、細胞培養に用いるマイクロ流体流路の設計には、乱流が起こらないよう、流体力学に則った適切なデザインが必要であることを示唆する.今年度は、流体力学シミュレーションを用い、乱流の発生を抑えた流路設計を行う.設計したデザインを用い、3Dプリンティングによりマイクロ流体チップを造形し、血管内皮細胞を培養して配向の状態を確認する.さらに、肺胞上皮細胞、線維芽細胞および血管内皮細胞をマイクロ流体チップ上で培養する肺チップを開発する.この肺チップに伸展刺激を与え、生体内で過剰な伸展刺激によって生じる肺線維症のモデルを開発する.
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