研究課題/領域番号 |
21H04971
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青木 正治 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (80290849)
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研究分担者 |
上野 一樹 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20587464)
東城 順治 九州大学, 理学研究院, 教授 (70360592)
三原 智 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (80292837)
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研究期間 (年度) |
2021-05-18 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
634,790千円 (直接経費: 488,300千円、間接経費: 146,490千円)
2024年度: 125,710千円 (直接経費: 96,700千円、間接経費: 29,010千円)
2023年度: 148,460千円 (直接経費: 114,200千円、間接経費: 34,260千円)
2022年度: 133,510千円 (直接経費: 102,700千円、間接経費: 30,810千円)
2021年度: 114,140千円 (直接経費: 87,800千円、間接経費: 26,340千円)
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キーワード | 荷電レプトンフレーバ非保存過程 / ミュー粒子 / 荷電レプトン非保存過程 / 荷電レプトン・フレーバ非保存 / 稀反応 / 素粒子実験 / 大強度ミュー粒子源 / 稀崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
素粒子の標準理論を超えた新物理は必ず存在すると誰もが信じているが、どのようにしてそこに至るのか手探りの状態にある。本研究では、新物理においてはその存在が自然であると考えられている「ミュー粒子・電子転換過程」を、100兆分の1よりも良い感度で探索する。そのために、世界第一級の大強度陽子加速器J-PARCの特長を活かして、革新的なミュー粒子ビームラインとそれに最適化したミュー粒子実験装置を活用した物理測定を遂行する。本研究は世界で最初に事象を発見できるポテンシャルを持つ。この過程が発見されれば宇宙・素粒子研究に大きなインパクトを与えることは必須である。
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研究実績の概要 |
本研究計画では、ミュー粒子・電子転換過程を従来よりもはるかに高い感度で探索することを目指している。そのために、先進ミュー粒子ビームラインから飛来する大強度負電荷ミュー粒子を超伝導検出器ソレノイド(DS)の中央に設置したミュー粒子標的に静止させ、ミュー粒子の反応によって発生する電子の運動量を正確に測定する。実験に使用する超伝導電磁石などは大型でありその製造には時間がかかる。最初の3年間(2021-2023年度)は、超伝導ブリッジソレノイド(BS)や超伝導検出器ソレノイド(DS)の製造、ならびに電子検出器の開発に集中する計画である。 2021年度にはまず、BSの製作を行なった。さらに、2023年度にDSを組み立てるために、DSの熱シールドおよび取り付け品一式の製造調達を2021年度繰越事業として実施した。 2021年度6月には、J-PARC 主加速器からのパルス陽子ビームを測定する実験を実施し、物理測定を実施するために充分な品質であることを確認した。 電子検出器は円筒形状をしたドリフトチェンバー(CDC)とトリガーカウンター(CTH)から構成される。オーストラリア・モナシュ大学と共同で、機械学習の技術を用いて高いバックグランドヒットの中から目的とする信号を抽出するCDCトリガー回路の開発や、-40°Cに冷却することによって高い放射線環境下においてもノイズを抑えて半導体光検出器(SiPM)を動作させるためのCTH-SiPM冷却読み出し装置の開発を行った。 2022年度に予定している先進ミュー粒子ビームラインの試験に備えて、ミュー粒子ビームの運動量分布を測定する為の装置、レンジカウンターシステム、の開発を行なった。特に、低運動量負電荷ミュー粒子も測定できるように、厚さ0.5 mmのプラスチックシンチレーターを用いたレンジカウンターの基本性能評価を行い、良好な結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画で使用する超伝導電磁石などの装置は大型であり、製造を単年度で完了することは不可能である。そのため研究計画立案当初から、最初の3年間(2021-2023年度)は超伝導ブリッジソレノイド(BS)や超伝導検出器ソレノイド(DS)の製造に集中する研究計画であった。 2021年度中に、先行研究で調達済みであった超伝導コイルを活用してBSの製造を完了することができたことは大きな前進である。その際、DSとの取り合いの設計に変更が必要となったために超伝導電磁石システム全体の設計完了が遅れてしまったが、計画当初からDS製造は2023年度であったこと、繰越事業としてDS熱シールドや部品などを製造することができたことなどから、この部分による計画全体への遅延はない。 先進パルスミュー粒子ビーム源を実現するために重要であるJ-PARC主リングからのパルス陽子の品質も十分高いことが確認できた。 CTHの開発も、国際共同研究によって、SiPM冷却読み出し装置の開発などで順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、2023年度中の完成を目指して超伝導電磁石システム(DS、BSおよび鉄ヨーク)の製造を推し進める。 CTH-SiPM冷却読み出し装置は、SiPM1台を使用するプロトタイプの試作ならびに中性子照射環境下での動作試験を完了したので、複数台のSiPMを同時冷却できる第2世代プロトタイプの製作と性能試験を行い、最終的には256台のSiPMを冷却する装置の製造を行う。オーストラリア・モナシュ大学が開発・製造を担当している光ファイバー読み出しシンチレーションカウンターに当該SiPM冷却読み出し装置を組み合わせることによって、CTHが完成する。 CDCとCTHをDS内部に実装する具体的な手順や装置の開発設計と製造を進めて、超伝導電磁石システムが完成し次第、CDCとCTHを内部に実装して宇宙線を用いた電子検出器の総合性能試験を実施する。先進ミュー粒子ビーム源が完成し次第、物理測定を開始する。 主な宇宙線背景事象の一つである「逆走正電荷ミュー粒子起源ノイズ」を削減するために重要となるチェレンコフ型CTHの開発を実施し、2024年度中に装置に実装することを目指す。可能であればミュー粒子ビーム大強度化に先立って実装し、物理データの品質向上の早期実現をはかる。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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