研究課題/領域番号 |
21H04986
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村松 憲仁 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 特任教授 (40397766)
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研究分担者 |
宮部 学 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 助教 (10613672)
清水 肇 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 名誉教授 (20178982)
堀田 智明 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (30332745)
時安 敦史 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 助教 (40739471)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
194,220千円 (直接経費: 149,400千円、間接経費: 44,820千円)
2024年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
2023年度: 20,540千円 (直接経費: 15,800千円、間接経費: 4,740千円)
2022年度: 72,150千円 (直接経費: 55,500千円、間接経費: 16,650千円)
2021年度: 83,200千円 (直接経費: 64,000千円、間接経費: 19,200千円)
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キーワード | ハドロン質量の起源 / エータプライム中間子 / 原子核内光生成 / カイラル対称性の自発的破れ / UA(1)量子異常 |
研究開始時の研究の概要 |
真空の性質変化によってハドロン粒子が質量を獲得する機構を実証するため、カイラル対称性が部分的に回復する超高密度環境である原子核内においてエータプライム中間子の質量が減る現象を捉える。本研究では、SPring-8の高エネルギー光子ビームを使って銅原子核内にエータプライム中間子を生成し、世界最高性能の大立体角電磁カロリメータで2個のガンマ線への崩壊を検出する。高統計・低バックグラウンドの次世代実験を推進して核内質量を直接測定すると共に、減少量の測定を通してハドロン構造の理解へ繋げる。
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研究実績の概要 |
本研究では、η'中間子の核内崩壊信号に対して大きなバックグラウンドとなる多重π中間子生成事象を効果的に除くため、電磁カロリメータ系の全立体角化が必要である。そのため、2021年度は前方PWO電磁カロリメータのインストールおよびデータ収集系の整備を進めた。前方PWO電磁カロリメータは我々の主要検出器である大立体角高分解能電磁カロリメータBGOeggの前方不感領域を覆うように移動式架台へ設置し、252チャンネル分のADC・TDC信号ケーブルの配線作業、ロジック信号の構築、高電圧印加システムの整備などを行った。VME規格をベースとしたデータ収集系を構築するのに必要な回路モジュールは調達が遅れたが、一部予算を2022年度に繰り越して全て入手し、データ収集系の整備とテスト実験による試験を問題なく完了している。また、2021年度は光子ビームの大強度化に向けた新型パルスレーザーの導入も進めた。同レーザーは、蓄積リング中の電子ビームバンチに同期して出射しコンプトン散乱を効率化できる特殊仕様であり、開発メーカーと打合せながら特注製造した。製造に時間がかかり納品が2021度末まで遅れたが、2022年度にLEPS2ビームラインへのインストールと光学系の整備・調整を終えた。2021年度はその他、光子ビームを照射する銅原子核標的を厚くするために必要なビームダンプ増強に向けてEGSシミュレーションによる放射線漏洩量の見積りを進め、原子力規制庁への放射線施設等変更許可申請を手続きした。更に、本研究の技術的な実現可能性を検討した上で詳細な実験プロポーザルをまとめ、SPring-8の専用ビームラインLEPS2を運用する大阪大学核物理研究センターのLEPS実験課題検討委員会へ提出し承認を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、2021年度は前方PWO電磁カロリメータの整備と新型パルスレーザーのインストールを予定していた。これに対し、2021年度から2022年度にかけて全ての計画事項が良好に完了している。2021年度はコロナ禍に起因する世界的な半導体不足が発生し、本研究で必要となるデータ収集系の回路モジュール一式やパルスレーザーの製作期間が大幅に伸びた。それにより、多くの必要物品は2021年度末の納品となった他、一部のデータ収集系構成品は予算を次年度に繰り越して調達せざるを得なかった。このようなやむを得ない理由により2021年度の研究計画は次年度まで延長したが、2021年度中に回路モジュール以外のデータ収集系整備やレーザー用光学系の準備等を行っておいたことにより、2022年度内に当初目的を果たすと同時に短期のビーム試験で良好な動作を確認するところまで進むことができた。2年計画で物理データ収集の準備を行う予定となっており、2021年度計画分は物品調達の遅れで次年度まで持ち越したものの、時間がかかる配線作業などを前倒しして行う工夫により、当初計画からの遅れはそれほど無い。よって、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大立体角高分解能電磁カロリメータBGOeggと前方PWO電磁カロリメータを組み合わせた実験セットアップで数か月の物理データ収集を行う。このデータ収集では、大強度化した光子ビームを厚みの増した銅原子核標的に照射して進める。銅原子核標的に含まれる単位面積当りの核内核子数をこれまでの1.8倍まで増やすにはLEPS2ビームライン最下流のビームダンプを増強する必要があり、追加のコンクリートブロックを設置する。また、長期の実験を行う前に、大立体角電磁カロリメータBGOeggの老朽化したデータ収集系を更新し、回路モジュールのスペアを十分に用意できる状態にする。物理データの収集後は、速やかにエネルギー・時間較正の作業を進め、核内η'中間子崩壊による2個のガンマ線の不変質量分布を系統的に解析する。この物理データ収集と並行して、大立体角電磁カロリメータBGOeggと前方PWO電磁カロリメータの間に残る極角16~24度の不感領域を埋める更なる実験アップグレードの準備を進める。PWO結晶150本を追加して前方PWO電磁カロリメータを拡張する予定であり、そのための設計や部材調達、テスト機によるビーム試験を行う。上記の物理データ収集後に前方PWO電磁カロリメータの拡張改修を行い、核内η'中間子崩壊信号に対する感度を当初計画通りに上げる。その完了後に1年程度の長期物理データ収集を再び行い、最終的な解析作業を進める。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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