研究課題/領域番号 |
21H04991
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大谷 航 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 准教授 (30311335)
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研究分担者 |
岩本 敏幸 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (20376700)
西口 創 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10534810)
森 俊則 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 教授 (90220011)
越智 敦彦 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40335419)
松岡 広大 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (70623403)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
188,370千円 (直接経費: 144,900千円、間接経費: 43,470千円)
2024年度: 33,020千円 (直接経費: 25,400千円、間接経費: 7,620千円)
2023年度: 40,040千円 (直接経費: 30,800千円、間接経費: 9,240千円)
2022年度: 40,560千円 (直接経費: 31,200千円、間接経費: 9,360千円)
2021年度: 45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)
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キーワード | ミュー粒子崩壊 / 荷電レプトンフレーバーの破れ / 超対称性 / 大統一理論 / ニュートリノ / ミュー粒子稀崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はミュー粒子が電子とガンマ線に崩壊する稀な現象μ→eγの探索によって、宇宙誕生時に実現していたと考えられる素粒子の大統一の実験的検証をめざすものである。世界最大強度のミュー粒子ビームを有するスイス・ポールシェラー研究所(PSI)において、独自に開発した革新的な測定器を用いたμ→eγ探索実験MEG IIを実施し、μ→eγの発見をめざす。さらに、 これまでとはまったく異なる巧みなアイディアにより、μ→eγ発見後の精密測定をも可能にする究極の探索感度を持つ新たなμ→eγ探索実験を実現し、他の追随を許さない素粒子の大統一の徹底的な検証をめざす。
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研究実績の概要 |
MEG II実験については、2021年の試験的な物理データ取得を行った後、PSI加速器のメンテナンス期間中に2022年の本格的な物理データ取得開始に向けた各測定器の立ち上げ作業を実施した。特に懸案だった液体キセノン検出器半導体光センサー(VUV-MPPC)の放射線損傷による感度劣化をアニーリングにより回復する作業が行われ、ほぼすべてのセンサーについて一年間のビームタイムで運用するのに十分な光子検出効率(平均15%)まで回復することに成功した。 各測定器の最終調整を行った後、2022年7月にいよいよ本格的な物理データ取得を開始した。停止ミュー粒子頻度3e7で開始、順調にデータ取得を行った。ビームタイムの最後には、荷電パイ粒子の荷電交換(CEX)反応により生成した単色ガンマ線を用いた液体キセノン検出器較正を実施し、アップグレード後初めて検出器全面での較正データを取得することができた。 MEG II実験と並行して、2027-2028におよそ100倍増強される予定のPSIのミューオンビームを利用してMEG II実験を大幅に上回る探索感度を実現する将来実験のための研究開発を進めている。新しい探索実験では、MEG実験とはまったく異なるコンセプトで測定精度を大幅に改善し、探索感度を目指す。2022年は新実験測定器の要となる光子ペアスペクトロメータ用アクティブコンバーターの開発が進められた。2022年11月には、KEK PF-ARに新設されたテストビームラインにおいて、アクティブコンバーターの候補となるLYSO検出器の性能試験を行い、暫定的な結果ではあるが、既に目標に迫る時間分解能(40-50ps)を達成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MEG II実験については安定した長期データ取得を継続し、2023年までに取得したデータによりアップグレード前のMEG実験を大きく上回る探索感度が得られる見込みであり、今年度以降も引き続き物理データを取得し目標実験感度達成を目指す。新μ→eγ実験については、実験の要であるアクティブコンバーター型ペアスペクトロメータについてSiPMで読み出すLYSO検出器のプロトタイプを用いてビーム試験を実施し、エネルギーおよび時間測定について既に要求性能を大きく上回る精度を実現可能であることを示した。これは当初の研究計画の想定を超える成果であると言える。さらに、MEG II実験液体キセノン検出器較正用の低エネルギー陽子加速器およびドリフトチェンバーを用いて、Atomki研究所で観測されたアノマリを高精度に検証することが可能であることを示し、実際MEG II実験がデータ取得を実施しない加速器のメンテナンス期間を利用してデータ取得を行い、アノマリ探索解析を進めている。Atomkiアノマリは未知のボゾンの存在による可能性が指摘されており、独立にこのアノマリを検証するデータを取得した意義は大きい。 以上のように当初の研究計画の想定を超える研究の進展があり、今後も関連した物理解析結果も得られる予定であるため期待以上の成果が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
MEG II実験については、本年度も引き続き長期物理データ取得を行う。並行して、2021-2023年度に取得した物理データを用いたμ→eγ探索解析を進める。順調に行けば令和6年度中に2022年までに取得したデータを用いた探索結果を公表できる見込みである。これによりMEG 実験の探索感度を超える見込みであり、いつμ→eγの兆候が見つかってもおかしくない状況となる。さらに来年度以降も測定器性能・データ収集効率の改善等に取り組みつつ長期物理データ取得を継続していく予定である。MEG II実験を実施しているビームラインを使用する他の実験グループの動向にも依存するが本研究期間内に目標実験感度に到達、μ→eγの早期発見を目指す。 新μ→eγ探索実験については、昨年度に引き続き、各測定器に使用する要素技術の開発およびシミュレーションを用いた実験装置設計の最適化を継続して行う。来年度以降は要素技術を組み合わせたプロトタイプを製作し、性能評価試験を行う。各要素の性能実証機を用いて目標測定器性能を実証した後、崩壊分岐比感度1.5×10^(-15)の新μ→eγ探索実験の計画を立案する。最後にLetter of Intentとして実際にPSIに提案することを目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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