研究課題/領域番号 |
21H04992
|
研究種目 |
基盤研究(S)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪木 和久 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (90222140)
|
研究分担者 |
辻野 智紀 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (00899148)
伊藤 耕介 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10634123)
山田 広幸 琉球大学, 理学部, 教授 (30421879)
堀之内 武 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (50314266)
篠田 太郎 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (50335022)
高橋 暢宏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60425767)
清水 慎吾 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (70462504)
大東 忠保 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 契約研究員 (80464155)
南出 将志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90884916)
榎本 剛 京都大学, 防災研究所, 教授 (10358765)
山口 宗彦 気象庁気象研究所, 応用気象研究部, 主任研究官 (80595405)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
189,150千円 (直接経費: 145,500千円、間接経費: 43,650千円)
2024年度: 45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2023年度: 47,840千円 (直接経費: 36,800千円、間接経費: 11,040千円)
2022年度: 48,360千円 (直接経費: 37,200千円、間接経費: 11,160千円)
2021年度: 42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
|
キーワード | スーパー台風 / 強度予測 / 航空機観測 / 急速強化 / 二重壁雲構造 / 急速強化過程 / ドロップゾンデ / 高解像度モデル / 台風強度予測 / データ同化 / 台風 / 数値モデル / レーダ観測 / 二重壁雲 |
研究開始時の研究の概要 |
台風は自然災害の最大要因であり、なかでも最強カテゴリーのスーパー台風は甚大な被害をもたらす。地球温暖化に伴い、日本本土へのスーパー台風の上陸が懸念されている。しかし台風強度の推定値と予測値の両方に大きな誤差があることが大きな問題となっている。その最大原因は台風が急速に発達する「急速強化」である。さらにそのとき眼の壁雲が二重となる構造がしばしばみられ、その力学的・熱力学的構造が未解明だからである。本研究課題では、スーパー台風が、なぜ、そしてどのように形成されるのか、それにおける急速強化と二重壁雲構造はどのような役割をしているのかを、航空機観測、地上観測、数値シミュレーションの三本柱で解明する。
|
研究実績の概要 |
航空機を用いて2022年9月16日と17日にスーパー台風Nanmadolのドロップゾンデ観測を実施し、スーパー台風になる前後の眼内部の暖気核の熱力学的構造を観測するとともに、二重壁雲の力学的・熱力学的構造を観測することができた。ドロップゾンデの観測データは、リアルタイムで気象庁および世界中の気象予報機関に送信され、数値予報モデルにデータ同化され、この台風の現業予報に利用された。さらにこの航空機観測では飛行経路上の温度等のデータを取得し、二重壁雲構造の暖気核の水平方向の広がりを観測した。 台風Nanmadolの航空機観測の実施時に、南大東島で高層気象観測を実施し、航空機が上空を飛行するときに同期観測を実施した。これによりドロップゾンデ観測データの検証を行った。航空機からのドロップゾンデなど台風中心のゾンデデータを用いて中心気圧と気温偏差の関係を調べ、両者に強い相関があることを明らかにした。 2022年5~8月に、米国・台湾・日本の国際共同観測を航空機観測と連携して実施した。与那国島では、気球による高層気象観測を連続して実施し、暖候期の台風発生環境を観測した。7月5日に台風Aereが太平洋から東シナ海を北上しときに与那国島地上観測と連携して航空機観測を実施した。 名古屋大学および気象庁の複数の数値大気モデルを用いて、スーパー台風の再現実験を実施した。その結果から、急速強化時に見られた角運動量輸送が急発達に重要であることをあきらかにした。また複数モデルの比較からNanmadol の急速強化の再現性はモデルの乱流過程によって大きく影響を受けることをあきらかにした。 ひまわり8号による30秒間隔の観測を用いて,台風の眼の中の風速の時間変換とその要因を明らかにした。また,低軌道衛星搭載合成開口レーダーによる地表風観測を検証に用いて,静止衛星の赤外画像から最大風速半径を推定する方法を開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題はスーパー台風を対象とするので、観測対象として適切なスーパー台風が発生するかどうか、またそれが観測可能範囲に入るかどうかが最も懸念されていた。航空機観測は2~4年度目の3年間に実施を計画し、台風の状況よって実施できない場合は、航空機観測の予算を翌年度に繰り越すなどの対応で、研究の5年度目前半までに、スーパー台風を観測する計画であった。それが2年目の本年度にスーパー台風Nanmadolの観測により、スーパー台風の観測、急速強化過程の観測、二重壁雲構造の観測という当初目的の観測を達成することができた。特に申請時の計画になかったがヒアリングで審査委員から出された要望の、スーパー台風になる前の状態からの観測も実施することができたことは、想定以上の成果といえる。 これらにより申請書に示した研究のフレームワークと役割分担の実施項目として、「航空機観測」の各項目は達成できたことになる。また「地上観測」の与那国島における国際共同観測と南大東島での高層気象観測およびドロップゾンデ検証観測も実施した。「データ同化と予報実験」における多様な数値モデルを用いたシミュレーションとデータ同化、および「数値シミュレーション」と観測の連携も十分行われており、また、それぞれのモデルを用いた研究も進んでいる。主要な3つの研究目的の(i)「二重壁雲の暖気核構造の解明」と、(ii)「航空機観測により台風の直接測定を行い、精度の高い測定値を取得し、そのデータを高解像度の数値モデルに取り込み観測されたスーパー台風を再現する。その結果に基づき、眼の暖気核などの力学的・熱力学的構造と急速強化のプロセスをあきらかにする」はほぼ達成できており、未達成の(iii)「台風の進路と強度の予測を高精度化できることを示すこと」についても、それを達成するために必要なデータも得られている。 これらのことから上記の達成度と判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年以降も当初研究計画に沿って研究を進める。特に8月下旬から9月下旬を観測期間として、台風の航空機観測を実施する。今後の航空機観測は台湾大学の実施する航空機観測と連携して、沖縄本島から南西諸島の南または南東海上で実施する。対象とする台風はできるだけ強い台風で、可能な限りスーパー台風をねらう。また、観測は2日間に2回のフライトを実施し、急速強化プロセスの観測をねらう。さらに可能であれば二重壁雲構造のスーパー台風の観測を行う。ただし、これは台風の発生・発達状況によるので、台風の状況によって観測の実施と中止を判断できるように、観測には十分な準備期間を設けて臨む。観測はこれまで実施してきたようにドロップゾンデによる観測を中心とし、フライトレベルのデータも同時に取得する。さらにドロップゾンデ観測データの検証のために南大東島での気球によるゾンデ観測を航空機の通過に同期して実施する。 航空機観測を実施したドロップゾンデ観測データおよびフライトレベルのデータの品質チェックを高度化し、データを整備するとともに、DOIを附して公開を検討する。これらのデータを解析して、台風の力学的・熱力学的構造をあきらかにする。特にスーパー台風Nanmadolについて、急速強化プロセスと二重壁雲構造に着目してこれらのデータの解析を進める。 スーパー台風Nanmadolについての、高解像度シミュレーションを実施し、ドロップゾンデ観測データ等と比較しつつ、急速強化プロセスと二重壁雲構造の特徴をあきらかにする。観測データを雲解像モデルCReSSに同化する方法を開発する。特に2022年に取得されたデータに対して、連続的にデータ同化を行い、予測インパクトを定量的に評価する。これらにより航空機で観測されたスーパー台風周辺の多点におけるデータを、台風の予報モデルに取り込み、台風の進路と強度の予測を高精度化できることを示す。
|
評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
|