研究課題/領域番号 |
21H05002
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分C
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖 大幹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50221148)
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研究分担者 |
鼎 信次郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (20313108)
木野 佳音 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20963234)
田中 賢治 京都大学, 防災研究所, 教授 (30283625)
芳村 圭 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50376638)
花崎 直太 国立研究開発法人国立環境研究所, 気候変動適応センター, 室長 (50442710)
山崎 大 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70736040)
小槻 峻司 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (90729229)
金 炯俊 東京大学, 生産技術研究所, 特任准教授 (70635218)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
186,550千円 (直接経費: 143,500千円、間接経費: 43,050千円)
2024年度: 36,660千円 (直接経費: 28,200千円、間接経費: 8,460千円)
2023年度: 35,230千円 (直接経費: 27,100千円、間接経費: 8,130千円)
2022年度: 36,530千円 (直接経費: 28,100千円、間接経費: 8,430千円)
2021年度: 48,230千円 (直接経費: 37,100千円、間接経費: 11,130千円)
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キーワード | 水文学 / 衛星観測 / 陸域モデル / データ同化 / 地球表層水動態 |
研究開始時の研究の概要 |
地球物理学的なモデリング先行であった近年の全球水動態研究を、衛星観測に軸足を置いた新たな地球表層水動態モニタリング研究へと変革し、全球水循環の人間活動を含む実態を解明する。このため、これまで申請者らが世界を先導して開発してきた人間活動および河川動態を考慮可能な陸域モデルに最新の人工衛星による地球観測情報等をデータ同化するアルゴリズムを開発・実装し、水面面積・高度、河川流量、ダム貯水量、水利用量など、これまで分布・変動の広域観測推定が困難であった水循環要素のグローバルな動態を明らかにし、世界中で頻発する水問題の現状把握・将来予測・解決に貢献する。
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研究実績の概要 |
初年度は、陸域水循環データ同化システムの構築に最優先で取り組んだ。全球河川モデルCaMa-Floodに衛星高度計の実観測データをデータ同化するアルゴリズムを、モデルの誤差特性が異なる場合を想定して複数開発した。衛星高度計を全球河川モデルに同化するために、高度計の観測点が全球河川モデルのどの格子に対応するかを分析するコードを開発し、河道データへの配置が完了した。 データ同化による陸面過程モデルの水文変数の改善を定量化するため、陸面過程モデルの出力を評価するベンチマークシステムを導入した。特に、河川流量や土壌水分などの新たな変数を導入した。また、陸域データ同化システムの開発を進め、アンサンブル変換カルマンフィルタに粒子フィルタを新しくハイブリットした手法を開発した。 また、人間活動を考慮した陸域水循環の再解析を実現するため、河川モデルと水資源モデルの結合を進めた。全球水資源モデルH08の最下流ダム以降の流下計算をCaMa-Floodに引き渡して実行するための一連のプログラムを整備した。また、H08のダム貯水量を水位・湖面積に変換するアルゴリズムを試作・実装することに成功した。水平5分グリッド高解像度全球水資源モデルを利用可能とし、また大都市を対象としてグリッド間の水輸送機能評価を実施、全球高解像度での都市の水需給評価を可能とした。 さらに、統合陸域シミュレータILSに治水ダム操作モデルを実装し、河川流量予測性能の評価を行った。 氷河に水資源を依存している地域におけるシミュレーション高度化を図るため、気象外力の高精度化にも取り組んだ。1km解像度と30m解像度の標高データを用いて,地形による斜面の向きと勾配,周囲の地形による遮蔽,開空度が入力短波放射量に与える影響を考慮して解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心となる陸域水循環データ同化手法の開発は順調に進んでいる。アマゾン川流域を対象として、全球河川モデルのシミュレーションに衛星河川水位観測をデータ同化した再解析プロダクトのパイロット版を構築し、精度評価と他流域への展開も準備中である。再解析プロダクトの精度評価を行うベンチマークシステムは、観測変数を用いた陸面過程モデルの精度評価に利用可能であると同時に、データ同化の文脈における観測演算子としての役割も果たす。そのため、データ同化アルゴリズムとベンチマーキングシステムを組み合わせることで、モデルの未知パラメータ推定などが可能になる。 全球水資源モデルと衛星観測データを用いた、人間活動を考慮した水循環再解析に向けた準備研究も順調である。詳細な取水プロセスの表現にむけて、水平5分グリッド高解像度での気候フォーシングデータ等のテストデータを準備し、全球水資源モデルを高解像度で運用可能とした。また、人口分布データ等から世界の大都市グリッドを高解像度で抽出し、取水源からのグリッド間の水輸送量を推計し、全球高解像度水循環シミュレーションの出力を用いての都市水需給評価を試みた。さらにH08とCaMa-Floodの連動ならびにH08の推定する水量を水位や面積に変換する最も基本的な技術を構築した。 高精度な陸域水循環再解析に必要な気象外力データの高度化も進んでいる。水循環の季節予測の精度向上に向けた取り組みとして、AIを用いた降水・気温予測のバイアス補正手法の構築を試みている。また、氷河水資源モデルにとって重要な入力データとなる高標高帯における気象観測の準備を中央アジアで進めている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発された数値モデルを活用したデータ同化アルゴリズムに取り組むと共に、更なる数値モデルの高度化を行う。 ●河川流量や浸水域の衛星観測をデータ同化するための、全球河川モデルの精度評価を進めるとともに、同化アルゴリズムの開発に取り組む。 データ同化アルゴリズムとベンチマーキングシステムを組み合わせることで、モデルの未知パラメータ推定を進める。また、土壌水分などの 衛星観測水文量を取り込む手法を開発する。その際、モデル観測間のバイアス除去や、誤差分布の非ガウス性が問題になると考えられるため 、ヒストグラムマッチングや、経験的ガウス分布変換 (Kotsuki et al。 2017)の実装など、衛星観測量の同化に適した方法を模索する。人間活動の影響をデータ同化によって推定する手法を、全球河川モデルCaMa-Floodと全球水資源モデルH08を組み合わせた仮想実験によって 開発する。 ●統合陸域シミュレータILSの高度化と、それを用いたハインドキャスト実験を並行して行い、予測性能に関するモデルのベンチマークを作成 し、今後強化・改善するべき項目の指針としていく。 CaMa-FloodとH08の連動については、ダム操作と人工導水路に着目し、水収支関連項目を共有した形での結合に移行する。またH08の水量の水 位・面積への変換については、得られた誤差情報を解釈し、モデル改良作業に接続していくための技術開発に注力する。 近年を対象とした5分空間解像度での全球水資源モデルシミュレーションを行い、世界の主要都市を襲った大渇水の再現を試みる。また、都 市への導水路のモデル化と水ストレス指標について、さらに検討を進める。 より標高の高い地点(氷河平衡線あるいは氷河涵養域)にも気象観測を展開し、特に山岳域における気象変数の分布を改善することにより、 氷河質量収支モデルの精度改良を試みる。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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