研究課題/領域番号 |
21H05009
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須藤 祐司 東北大学, 工学研究科, 教授 (80375196)
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研究分担者 |
山本 卓也 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10804172)
入沢 寿史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ付 (40759940)
齊藤 雄太 東北大学, グリーンクロステック研究センター, 教授 (50738052)
谷村 洋 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70804087)
春本 高志 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80632611)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
191,750千円 (直接経費: 147,500千円、間接経費: 44,250千円)
2024年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2023年度: 38,350千円 (直接経費: 29,500千円、間接経費: 8,850千円)
2022年度: 48,620千円 (直接経費: 37,400千円、間接経費: 11,220千円)
2021年度: 63,440千円 (直接経費: 48,800千円、間接経費: 14,640千円)
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キーワード | 多形変化 / 相変化メモリ / 光誘起相変化 / 磁場誘起相変化 / 相変化 / 多形転移 / 光誘起相転移 / 磁場誘起相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
Society 5.0に向け、IoTを介して人と物が繋がる事で様々な知識情報が共有されてきており、今後、その共有は加速的に増加する事は間違いない。それ故、膨大な情報の保管を実現するメモリデバイスの革新が求められているが、隆盛を極めるSiテクノロジーはいよいよ物理的な限界に達しつつあり、ポストSiテクノロジーが世界中で活発に研究、議論されている。本研究では、新メモリテクノロジー材料としてMnTeをはじめとする多形転移半導体を提案し、新たな結晶多形の相転移の学理及びその外場応答制御手法を確立し、次世代メモリデバイスへ向けた多形メモリテクノロジーの創成を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、結晶多形転移半導体を提案し、その多形転移機構の学理を構築すると共に、多形体薄膜の熱、応力、電界、磁界および光によるメモリ応答制御を目指している。以下に本年度の主な実績を記述する。 昨年度に明らかにした相変化メモリの動作エネルギーを記述するモデルを基に、Cr2Ge2Te6系相変化メモリの省エネルギー動作メカニズムを明らかにした。(ACS Apple.Mater.Inter.2022) MnTe多形薄膜について、ラマン分光によるその場観察により、MnTe薄膜においてβ相からα相への構造変化を直接観察することに成功した。更に、MnTe多形薄膜について、MnTe/電極界面に大きな熱歪み(圧縮)が生じる場合は多形変化温度が低下することを明らかにし、その依存性は約-20.5MPa/Kであることを示した(Materialia,2022)。このことは、メモリ素子構造によりその動作性を制御できることを示している。更に、MnTeを用いた三端子デバイスについて、デバイス試作とトランジスタ特性評価を行った結果、スパッタ成膜時に得られるβ-MnTe薄膜においてON/OFF比が三桁程度のpFET動作を確認した。また、組成変化を伴わないアモルファス-結晶間の相変化により、GeTe2という準安定な層状物質を発見し、非線形な電流-電圧特性を示すことを見出した(Mater. Horizons,2023)。 SnSe多形体について、時間分解分光法を用いてその超高速光応答を測定した結果、励起強度を増大しても新しいコヒーレントフォノン振動モードの出現、即ち、光励起後の相変化を示唆する挙動は観測されなかった(国内学会発表)。一方、β-MnTe薄膜の光誘起多形変化を調査した結果、フェムト秒レーザー誘起によるβ相からα相への非熱的かつ不揮発的な構造変化を観察することに成功した(国内学会発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本期間では、先ず、相変化メモリの省エネルギー動作化に向け、Cr2Ge2Te6相変化メモリの省エネルギー動作性について、E=κ(1+C)ΔT/Δzの関係を基に理解を深めた(κ:熱伝導度、ΔT:融点、Δz:相変化材料厚さ、C:無次元数(ρ/(Δz/σ)、ここでρ:接触抵抗、σ:電気伝導度)。特に、電気伝導率及び熱伝導率を低減することが省エネルギー動作に極めて効果的であることを提示した。 MnTe多形薄膜については、(1)ラマン分光測定によるβ相からα相への多形変化の実証、(2)MnTe/電極間の熱膨張差に起因した多形変化温度制御、(3)MnTe三端子デバイスのトランジスタ特性、(4)MnTe薄膜の光誘起多形変化など、熱、応力、電場、光の外場応答性について明らかにし、種々の外場による多形変化制御および物性応答を実証している。また、MnTe薄膜の磁気特性については、現在のところ、β-MnTeは室温から液体窒素温度の範囲内においては強磁性を示さないことを突き止めた。更に、MnTeの多形変化に及ぼす第三元素の効果について調査を行っており、Cr添加により多形変化挙動が複雑に変化することが分かっている。 また、MnTe以外の材料についても調査を行っているが、MnTeのような結晶間の多形変化ではなく、組成変化を伴わないアモルファス-結晶間の相変化により、GeTe2という準安定な層状物質を発見した。本層状物質は、非線形な電流-電圧特性を示すなど興味深い電気物性を示し、今後、セレクタ材料などとしても期待される。光応答については、パイエルス転移を示すSnSe多形体について評価を行っているが、光誘起による多形変化は観察されていない。また、当初の研究では予見していなかったが、相変化に伴う電気抵抗変化を利用することで負性抵抗デバイスを実現できると考案するに至り、金属水素化物を用いた動作を実証した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降についてもこれまでに引き続き、MnTeをはじめとする多形体薄膜について、熱歪み応答制御、電界応答制御、光応答制御、磁場応答制御について調査を行う。これまでの研究により、MnTe以外の多形体薄膜(希土類カルコゲナイドや遷移金属窒化物)についても、ジュール加熱により大きな物性変化が生じることを突き止めており、それら薄膜材料の相変化挙動や物性応答メカニズムを解明していく計画である。更に、MnTeへの第三元素Xの添加(CrやZnなど)により、多形変化挙動が複雑に変化することも突き止めている。特に、Cr添加MnTe薄膜では、極めて特異な多形変化(多段階の多形変化)を示し、それら多形変化に伴い電気・光物性のみならず磁気物性が変化する知見も得ている。今後はX-Mn-Te薄膜の多形変化メカニズムの解明と共に、それら多形薄膜の熱応力、電界、光および磁場応答制御について試みていく。 また、Mn-Te二元系の化合物としてMnTe2が存在するこが、以前の研究報告より圧力によりMnTe2バルク材は多形変化することが知られている。これまで本研究では、ポリイミド基板上に成膜したMnTe2薄膜の電気物性に及ぼす引張変形の影響を調査してきたが、数十%以上の引張歪の付与により薄膜自体は割れているにもかかわらず電気抵抗が約二桁も低下することを見出している。これは、MnTe2の引張変形による多形変化あるいは化学結合状態変化を示唆しているが、今後は、Mn-Te系多形薄膜の圧抵抗効果現象についても調査を行う計画である。 また、MnTeを中心とする研究の遂行を通して、当初の研究では予見していなかったが、水素を利用した相変化に伴う電気抵抗変化を利用することで負性抵抗特性が得られることを見出すことにも成功している。今後は、新たな材料や新たな相変化メカニズムの理解を深化させ、多形メモリテクノロジーの確立を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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