研究課題/領域番号 |
21H05010
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿尻 雅文 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (60182995)
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研究分担者 |
西堀 麻衣子 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (20462848)
石原 達己 九州大学, 工学研究院, 教授 (80184555)
笘居 高明 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80583351)
横 哲 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (80807339)
名嘉 節 琉球大学, 理学部, 客員教授 (30344089)
成 基明 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任助教 (30747259)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
187,590千円 (直接経費: 144,300千円、間接経費: 43,290千円)
2024年度: 37,960千円 (直接経費: 29,200千円、間接経費: 8,760千円)
2023年度: 42,640千円 (直接経費: 32,800千円、間接経費: 9,840千円)
2022年度: 37,050千円 (直接経費: 28,500千円、間接経費: 8,550千円)
2021年度: 31,980千円 (直接経費: 24,600千円、間接経費: 7,380千円)
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キーワード | ハイエントロピーナノセラミクス / 超臨界水熱合成 / 超微細粒子 / ナノサイズ効果 / 構造歪による機能発現 / 超臨界合成 / 超微細金属酸化物 / 粒径制御 / 格子歪 / ハイエントロピー / 放射光分析 / 非古典的核発生 / ナノ粒子 / ハイエントロピーセラミクス / ナノ粒子巨大歪 / 超臨界水熱法 / 放射光その場測定 / 触媒 / 有機無機ハイブリッドナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
従来、気・液・固相プロセスで行われてきた材料合成を超臨界相で行えば、新材料を創成できる。最近、超臨界相合成により、巨大歪・欠陥を有するナノ粒子(ハイエントロピー・ナノセラミクス)が生成し、その特異な構造により低温での電子・酸素イオン伝導性が3桁以上も大きい(超イオン伝導)ことが新たに見出された。機構解明によりさらなる高機能化も可能であり、従来不可能だった低温廃熱を利用する化学反応も期待でき、産業社会インパクトが大きい。この現象は既知の「量子サイズ効果」とは機構とは異なっており、新たな学術の創成も期待される。
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研究実績の概要 |
超臨界水熱合成場で得られる微小有機修飾ナノ粒子の歪・欠陥の生成と消失に焦点を当ててナノ材料合成の研究を行った。反応時間とともに成長・再配列する過程を追跡するため、高速混合・急速冷却クエンチが可能な流通式装置を作製した。従来と比較してより短時間での高速クエンチを達成し、生成物の構造のミリ秒単位での変化を評価した。 CeO2ナノ粒子の合成をモデル反応系として、この短時間反応制御の検討を行うことにより、生成するナノ粒子の粒子径と反応時間との関係を明らかにした。ミリ秒単位の制御を行うことで最も小さい場合には2 nm以下の超微細粒子が得られた。同一温度・同一濃度で、反応時間のみを変化させる簡便な操作により高精度な制御が可能となった。 粒子径と反応時間の関係から、核発生および成長過程のデータを取得し、反応物の転化率測定の結果と合わせて考察することにより、ナノ粒子の形成初期の機構が古典的核生成理論だけでは説明できず、非古典核発生(核発生後の凝集)が大きく寄与していることを明らかにした。さらに、ナノ粒子生成過程における結晶の歪を評価したところ、4 nm以下の粒子について、結晶格子が、大きく膨張することが明らかとなった。 放射光X線吸収分光により、大きな歪を含む超微細粒子の化学状態解析を行った。カチオンだけでなく酸素も併せて分析することにより、超微細金属酸化物の化学状態が明らかとなった。カチオンのセリウムは酸素欠損が少ないことにより、サイズが極めて小さい場合を含めて、4価の化学状態を取っていた。一方で酸素については構造歪の影響を受けて、4 nm以下の微細粒子については、対称性の乱れた多様な化学状態を取っていることが明らかとなった。核生成直後、結晶化するまで対称性の低い乱れた状態を取っており、非古典的核発生により粒径が大きくなるとともにバルクに近しいナノ結晶へと変化していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極めて短い反応時間の制御により、大きな歪を持つ粒子が、想定通り得られただけでなく、非古典的成長の解明とそれに基づく、5 nm以下を含む超微細領域での粒径の厳密制御が達成されており、当初の狙い以上に様々な材料研究に対してインパクトのある結果が得られているため、想定を超える研究の進展があったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度については、2022年度と同様の体制で研究を行う。ナノ粒子合成については、阿尻・横グループにおいてPD研究員一名を雇用しており(2022年10月~)、CeO2以外のZrO2やTiO2などの金属酸化物や、CeO2への金属ドープの系で、3 nm以下の超微細粒子を合成し、その生成機構を解明するとともに、ナノサイズ化による新規物性発現の可能性を検討する。また、2023年度後期からはさらに、PD研究員1名(決定(2023年10月~))を配置し、ナノ粒子合成や光触媒性能に関する研究を推進する。さらに、2023年度後期からは、放射光を専門とするPD研究員(予定(2023年10月~))を雇用し、西堀グループとの連携をさらに促進し、東北大ナノテラスが利用できるまでの間、SPring-8を中心に放射光実験を行い、超微細粒子の電子状態の解明を行う。笘居グループでは、超微細粒子の熱的安定性・焼結性に着目し、非古典的核生成と関連付けながら、超微細粒子の焼結機構に関する速度論的研究を行う。石原グループでは、阿尻・横グループから提供される新規超微細粒子の歪―触媒性能評価を行う。阿尻・横グループでは、反応性評価についても、別途専門の研究員1名を雇用しており(2022年4月~)、バイオマスの触媒反応等について研究を継続して進める。さらに、2023年度は、触媒性能やイオン伝導だけにとどまらず、光物性や磁性など、超微細化により期待される物性発現の可能性についても研究を展開する予定である。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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