研究課題/領域番号 |
21H05013
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 昌治 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90343110)
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研究分担者 |
小田 悠加 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (30784508)
大崎 寿久 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 人工細胞膜システムグループ, サブリーダー (50533650)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
189,150千円 (直接経費: 145,500千円、間接経費: 43,650千円)
2024年度: 36,010千円 (直接経費: 27,700千円、間接経費: 8,310千円)
2023年度: 37,960千円 (直接経費: 29,200千円、間接経費: 8,760千円)
2022年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2021年度: 42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / ナノバイオ / バイオセンサー / 生体膜および受容体 / ハイブリッド・スマート・生体材料 / 生体膜及び受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
生物は感度・選択性・シグナル増幅能において既存の人工物センサを凌駕する性能もって様々な物質を検出している。この生物の物質認識機能を工学技術と融合できれば革新的センサシステムの構築が可能になると考えている。本研究では生物の物質認識機能を有する細胞を工学デバイスとして直接活用し、センサシステムを構築するための学術基盤を確立することを目指す。犬や昆虫と同等の感度で物質を観測できれば、爆発物・麻薬探知などの安全安心分野、室内・屋外の汚染物質検出や疾病の早期診断などのヘルスケア分野、農作物の鮮度・熟度評価や食品・化粧品・香料の製品開発・品質管理などの製造業分野など、多岐にわたる用途への展開が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、人工物を凌駕する感度・選択性・シグナル増幅能を有する細胞を生体素子としてデバイス内で直接用いたバイオハイブリッドセンサの工学基盤を確立することを目的とする。所望の嗅覚受容体が発現した細胞(センサ細胞)を用いて「生物のセンシング能を直接デバイス内で活用するための設計論はなにか」ということを学術的な問いに設定し、以下の3項目の検討を行うことで、バイオハイブリッドセンサに関する学術基盤の確立を目指す。 (1) 複数のセンサ細胞による細胞アレイの構築法および保存搬送技術を確立する。 (2) 細胞と人工物を繋ぎ、効率的に信号を検出するための計測技術を確立する。 (3) バイオハイブリッドセンサの応用探索と概念実証を行う。 2021年度の研究実績として、項目1については、各センサ細胞に発現している受容体の位置を制御してアレイ状に配置するデバイス設計論を確立することを目指して検討を行った。また項目2については、細胞が本来もつセンシング特性を発揮するための、シグナル抽出技術と、匂い計測デバイス技術について検討を開始した。研究成果として、査読付き論文2報、国際会議を含む学会発表10件、図書1件、特許出願2件を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は本研究の目的において示した3項目のうち、(1)アレイ構築および(2)計測技術についてそれぞれ研究を実施した。 1. 【アレイ構築】(東京大学) 本項目では複数のセンサ細胞をアレイ化し、それぞれの反応を可視化することで複数の匂い情報を取得することを目指す。このために各センサ細胞に発現している受容体の位置を制御してアレイ状に配置するデバイス設計論を確立することを目指して検討を行った。2021年度は細胞を生きたままデバイス化することを念頭に細胞周辺材料の組成や硬さ、中性pH・常温常圧下での反応利用など、高分子設計の面で検討に着手した。この時、アレイ上の定位置にセンサ細胞が固定された状態で、基板や接着剤など他の材料も破損することなく凍結・解凍する方法を新たに確立する必要があるため、アレイ作製のための高分子設計を行う際に凍結時の温度変化に伴う物性変化も考慮し設計を行った。ここで当初の予想に反し、ファイバアレイ作製の過程でバイオプリンタを用いることで効率よく細胞アレイを構築することが可能であることが判明し合わせて条件検討を行った。 2. 【計測技術】(神奈川県立産技総研) 本項目では、細胞アレイを搭載し人工物上で嗅覚受容体の機能発現を実現するための計測技術の学術基盤を確立することを目指す。2021年度は、細胞が本来もつセンシング特性を発揮するための、シグナル抽出技術(センサ細胞からどのように信号を取り出すか)と、匂い計測デバイス技術(匂いをどのようにセンサ細胞に届けるか)について検討を開始した。シグナル抽出に関しては、光学および電気計測技術による取得信号の比較を行った。また、センサ細胞特有のシグナル誤差に関しても検討を開始した。一方、匂い計測デバイスに関しては、センサ細胞が存在する水溶液中へ匂い物質を効率良く分配・送達するためのデバイス構造のシミュレーションを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本研究の目的において示した3項目のうち、(1)アレイ構築および(2)計測技術についてそれぞれ研究を実施する。 【アレイ構築】(東京大学)本項目では複数のセンサ細胞をアレイ化し、それぞれの反応を可視化することで複数の匂い情報を取得することを念頭に、異なる受容体を発現しているセンサ細胞の位置を制御してアレイ状に配置するデバイス設計論を確立する。2022年度は前年度に引き続き細胞の生存を保ったままデバイス化し凍結保存を行うため、細胞周辺材料の組成や硬さや、凍結・解凍時の物性変化などを念頭に高分子設計論の視点から検討を行う。また高分子材料を薄く加工するという技術を支える物理現象について高分子の粘弾性特性の側面からも検証を行う。 【計測技術】(神奈川県立産技総研)本項目では、細胞アレイを搭載し人工物上で嗅覚受容体の機能発現を実現するための計測技術の学術基盤を確立する。2022年度は、前年度に引き続きシグナル抽出技術と匂い計測デバイス技術について研究を行う。シグナル抽出については、光学的・電気的計測技術によりセンサ細胞から得られるシグナルの定量性・誤差に関して検出・解析の基盤技術の研究を継続する。複数の標的匂い物質に対するセンサ細胞の応答シグナルの計測技術についても研究を開始する。また、匂い計測デバイスに関しては、水溶液中に匂い物質を効率良く分配・送達するためのデバイス構造について、理論・シミュレーションによる検討と、デバイス実機による検証の両面から研究を進める。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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