研究課題/領域番号 |
21H05015
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 実 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (10312258)
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研究分担者 |
森 茂生 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20251613)
小林 亮 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (50613395)
山本 瑛祐 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (60827781)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
191,750千円 (直接経費: 147,500千円、間接経費: 44,250千円)
2024年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2023年度: 51,480千円 (直接経費: 39,600千円、間接経費: 11,880千円)
2022年度: 40,170千円 (直接経費: 30,900千円、間接経費: 9,270千円)
2021年度: 63,180千円 (直接経費: 48,600千円、間接経費: 14,580千円)
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キーワード | 2次元材料 / 誘電体 / 原子膜技術 / 蓄電デバイス / 酸化物原子膜 / ナノシート / キャパシタ / 蓄電キャパシタ |
研究開始時の研究の概要 |
温室効果ガス排出削減、SDGs達成など、環境・エネルギー分野の長中期的課題を解決するためには、蓄電デバイスのイノベーションが必要となる。誘電体を用いた蓄電キャパシタは、リチウム二次電池などの従来の「化学電池」と異なり、充放電に化学反応を伴わず、高い出力密度を有するため、究極の安全、全固体蓄電デバイスとして期待されている。本研究では、応募者らが独自に開発した「分子レベルの厚さで巨大な誘電分極を示す酸化物原子膜」を対象に、原子層からナノ・メソに至るマルチスケールな誘電材料・デバイス開発を行うことで、ナノ誘電体の学理を探究し、誘電分極を活用した革新的蓄電キャパシタの創成を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、次世代蓄電デバイスの開発を目指した新たな試みとして、酸化物原子膜「ナノシート」をベースとする革新的誘電材料・デバイスの開発を行う。本年度は、原子膜の材料開発、集積・デバイスにかかわる多角的な検討を行った。 材料面では、高誘電性ペロブスカイトナノシート(Ca2Nam-3NbmO3m+1; m = 3~6)(εr = 210~470)をベースに、第一原理計算を援用した材料設計により特性制御を実現し、Ti, Bi置換体において、当初目標値を上回る高誘電率(> 1000)を有する新規材料の開発に成功した。これにより、蓄電デバイスに好適な高誘電率(> 800)と高耐電圧(> 4 MV/cm)を併せ持つ新規材料の利用が可能となり、蓄電デバイスの高エネルギー化に向けた道筋が拓けた。さらに、典型誘電体におけるナノシート技術の適用や電極ナノシートの開発を目指し、ボトムアップ合成技術による非層状材料のナノシート化に挑戦した。その結果、BaTiO3強誘電体原子膜、高絶縁性アモルファスシリカ、白金ナノシートの精密合成など、材料合成、機能開拓において当初の研究計画において予見していなかった新たな展開がみられた。 他方、デバイス面では、Ca2Nam-3NbmO3m+1ナノシートのキャパシタを作製し、蓄電デバイスの特性評価を実施した。その結果、ナノシートキャパシタでは、高誘電率化と高耐電圧化が同時に実現し、従来の高誘電体、強誘電体薄膜で到達困難な高エネルギー密度(150~270 J/cm3)を実現した。以上の研究を通し、蓄電キャパシタの開発におけるナノシート技術の有効性を確認した。さらに、蓄電デバイス製造に向けた集積加工、デバイス技術の開発も進め、高速自動製膜、ダメージフリーリソグラフィーなどの周辺技術も充実させ、2次元材料分野の発展に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、ナノシートの材料設計、合成、評価、集積加工、デバイスにかかわる多角的な検討を行ったことにより、ナノシートをベースとする革新的誘電材料・デバイスの基盤構築につながった。 材料面では、高誘電性ペロブスカイトナノシートをベースに、第一原理計算を援用した材料設計により特性制御を実現し、当初目標値を上回る高誘電率(>1000)を有する新規材料の開発に成功した。これにより、蓄電デバイスに好適な高誘電率(> 800)と高耐電圧(> 4 MV/cm)を併せ持つ新規材料の利用が可能となり、蓄電デバイスの高エネルギー化に向けた道筋が拓けた。さらに、ボトムアップ合成技術によるBaTiO3強誘電体原子膜、電極ナノシートの精密合成など、材料合成、機能開拓において当初の研究計画において予見していなかった新たな展開がみられた。特に、今回合成に成功した単位格子3個のBaTiO3強誘電体は、自立膜としては最も薄い膜厚であり、超薄膜における臨界物性の解明やデバイスの小型化に重要な指針を与えるものと期待される。 他方、デバイス面では、研究代表者らのシーズ材料(Ca2Nam-3NbmO3m+1)に対して、キャパシタを作製し、蓄電デバイスの特性評価を実施したところ、従来の高誘電体、強誘電体薄膜で到達困難な高エネルギー密度(150~270 J/cm3)が実現することを確認した。さらに、集積加工、デバイス技術の開発も進め、蓄電デバイス製造に好適な高速自動製膜、ダメージフリーリソグラフィーなどの周辺技術も充実させ、2次元材料分野の発展に貢献している。 以上から判断し、「順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる」とさせて頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を通し、ペロブスカイトナノシートでは、巨大分極(高誘電率化)と高耐電圧化が同時に実現し、従来のトレードオフを解消した蓄電デバイスの設計・開発が可能となることが明らかになりつつある。2023年度以降は、材料開拓、デバイス応用に注力し、申請時に掲げた、以下の【核心をなす学術的問い】を探究し、2次元物質、誘電体分野の新しい材料フロンティア開拓、蓄電デバイスの革新の実現を目指す。
1)【ナノ誘電体の学理探究】ナノシートにより、高誘電率、高耐電圧を併せ持つ誘電材料を実現できるか?トレードオフを解消しつつ、どこまで高誘電率化できるか?
2)【蓄電デバイスの革新】ナノシートの誘電キャパシタにより、従来の誘電材料の性能を凌駕し、リチウム二次電池に匹敵する高エネルギー密度を実現できるか?
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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