研究課題/領域番号 |
21H05020
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鶴田 健二 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (00304329)
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研究分担者 |
竹澤 晃弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10452608)
松田 理 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30239024)
畑中 大樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (60601771)
O・B Wright 大阪大学, 大学院工学研究科, 招へい教授 (90281790)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
159,250千円 (直接経費: 122,500千円、間接経費: 36,750千円)
2024年度: 31,200千円 (直接経費: 24,000千円、間接経費: 7,200千円)
2023年度: 37,050千円 (直接経費: 28,500千円、間接経費: 8,550千円)
2022年度: 51,740千円 (直接経費: 39,800千円、間接経費: 11,940千円)
2021年度: 13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
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キーワード | トポロジカルフォノニクス / フォノニック結晶 / 表面弾性波イメージング / スピンメカニクス / トポロジー最適化 / スピンメカ ニクス / 音響メタマテリアル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,波動現象における不変量として近年注目される〝トポロジー”の工学応用により,損失の極めて少ないマルチモード音響波・弾性波デバイスを実現する。計算科学的最適化法ならびに力学系マッピング,光学可視化手法を用いて,縦波・横波・表面波・板波といった伝搬モードごとに“トポロジーに保護された”エッジモードを設計する。さらに,磁性体によるスイッチング機能や整流効果など,新奇能動デバイスの動作原理実証と高集積化を行い,kHzからTHzまでカバーするトポロジカルフォノニクスの学理を構築,さらに超低消費電力マルチチャネル情報伝送素子を実現し,それらを通してIoT社会実装加速に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究では,計算科学的バンド設計とそれに基づいてエッジモードの発現を予測,力学系にモデル化・実証し,トポロジーに保護されたエッジモードを介した極めて低損失な音響波・弾性波伝搬を実現,その上で磁性体のスピン振動との結合や非線形増幅などの新機能開発を本提案の期間全体における研究遂行フローとする。特に,弾性波ならではの波動伝搬の多自由度(縦波・横波,薄板内対称・非対称モード等)を活かし,弾性波・音響波をマルチモードで制御することで,他に類を見ない新奇な超多重化弾性波デバイスの実現を目指しでいる。第2年度では主に以下の成果をあげた: (A) C3v対称性を持つフォノニック構造の計算科学手法による最適化と,それに基づいてkHz帯で動作する薄膜状のトポロジカル弾性波導波路の設計・試作・ロバスト性実証に成功した; (B) GHz帯でのトポロジカル弾性導波路を設計し,その試作と極超音波伝搬の実証と伝搬状態の可視化,さらに導波路上に形成した共振器との結合によるスイッチング機能付与に成功した; (C) 音響トポロジカル非線形効果発現機構,スピンメカニクスの基礎特性など,トポロジカルフォノニクスの多機能化の基盤構築を実施した。 特に,(B)は高周波化とともに限界に近づく電子デバイス(ゲート素子)の微細化に対し,電子をキャリアとしない新たな高集積回路実現の可能性を示した重要な成果と言える。また,これらの成果は単独のグループによるものではなく,本研究を推進する3つの件給付ループがそれぞれ緊密に連携することで初めて可能になった成果であり,当該研究分野においては国内では唯一といってよい連携体制である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で達成を目指す課題の内,中間評価までの目標として設定した,“トポロジカルエッジモードを発現するフォノニック構造の,位相最適化法・力学モデル構築・試作・計測(可視化・透過損失)による設計・評価・検証”については,3つの研究グループでそれぞれ分担して,kHz帯からGHz帯までトポロジカルフォノニック構造の設計・試作・光学可視化に成功している。この内,“弾性波の異なる伝搬モードごと”として設定した目標について,上記の設計を行うことは可能ではあるが,エッジモードの伝搬実証に薄膜・薄板の面外変位を光学的に計測する実験手法を用いていることから,直接の実験検証は現時点では困難であり,残りの期間の課題である。 一方,トポロジカル非線形効果としての音響スキルミオン発現のモデル化や,エッジモードとして伝搬する弾性波と磁性体との結合吸収によるスピンメカニクス系の実験検証は,本研究の後半で掲げた目標である,“トポロジカルエッジモード励起に基づく非相反表面弾性波デバイスや信号増幅機能”, “スピンメカニクスデバイス開発”の達成に直結する順調な成果といえる。 以上より,課題が残る部分もあるが,後半に想定した成果を前倒しで得ている項目もあることから,総じて,ここまでの進捗状況を,「順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度までに顕在化した課題として,(i) 計算科学バンドトポロジー最適化と多重モード設計,(ii) GHz帯の極超音波の時間分解音響波イメージング,(iii) Beyond 5G/6Gに向けて更なる高周波化(~THz)がある。これらを踏まえ,3つの研究グループでそれぞれ以下を遂行する予定である。 〇鶴田(T)班・・・T1: トポロジカルフォノンモード探索・設計・試作,T1’: 高次トポロジカルフォノンモード探索・設計・試作,T2: 再構成可能なトポロジカル導波路設計,T3: 第一原理計算等によるフォノン-スピン結合解析,THzトポロジカルフォノニック構造; 〇松田(M)班・・・M1:時間分解音響波イメージング技術によるGHz領域のフォノニック結晶中・表面弾性波計測,M2: ウェーブマシン等による力学系メタマテリアル,エッジ状態発現のフロケ動的制御実験,非線形効果の実証,M3: 球表面を伝播するトポロジカル音響波の物理; 〇畑中(H)班・・・H1:MHz超音波/GHz極超音波トポロジカル弾性体の作製と局在・エッジモード観測,H2:MHz超音波/GHz極超音波フォノニック素子フロケエンジニアリング・非線形弾性効果観測,H3:トポロジカルな回転振動波と電子スピンとの結合を用いたスピンメカニクス素子の動作実証。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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