研究課題/領域番号 |
21H05022
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 東京理科大学 (2024) 東京大学 (2021-2023) |
研究代表者 |
塩谷 光彦 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 教授 (60187333)
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研究分担者 |
山添 誠司 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (40510243)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
186,290千円 (直接経費: 143,300千円、間接経費: 42,990千円)
2024年度: 26,650千円 (直接経費: 20,500千円、間接経費: 6,150千円)
2023年度: 22,490千円 (直接経費: 17,300千円、間接経費: 5,190千円)
2022年度: 87,230千円 (直接経費: 67,100千円、間接経費: 20,130千円)
2021年度: 21,060千円 (直接経費: 16,200千円、間接経費: 4,860千円)
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キーワード | Chiral-at-Metal錯体 / キラル金属クラスター錯体 / 不斉金属触媒 / 不斉反応 / 置換活性錯体 / Chiral-at-Metal 錯体 / 動的立体制御 / 置換活性金属錯体 / 不斉誘導 |
研究開始時の研究の概要 |
金属中心キラリティーを有するChiral-at-Metal錯体は、化学反応の基質活性化や電子の授受に直接関わる金属がキラル中心として、不斉反応場やキラル物性を提供する物質群である。本研究は、分子設計と置換活性制御に基づく金属中心の不斉誘導法を開拓し、不斉金属を有する分子の動的立体化学制御と金属触媒反応への応用を図ることを目的とする。具体的には、分子設計と化学環境設定により配位子の置換活性を制御し、置換活性金属錯体の不斉誘導法と配置安定化法を開拓する。さらに、配位結合の動的特性やラセミ化の問題を解決しつつ、置換活性なChiral-at-Metal錯体を用いた高効率・高選択的不斉反応の開発を行う。
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研究実績の概要 |
Chiral-at-Metal錯体は、化学反応の基質活性化と立体制御、電子授受が可能な不斉金属中心を有し、不斉反応場やキラル物性を提供する。本研究は、分子設計と配位子置換活性制御に基づく金属中心キラリティーの不斉誘導法を開拓し、Chiral-at-Metal錯体の動的立体化学制御と不斉触媒反応への応用を図ることを目的とした。 当該年度は、四面体型単核Chiral-at-Metal錯体(Metal = Zn(II), Ni(II), Co(II), V(V))、およびNヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を用いた炭素中心六核Au(I)クラスターを対象とした、置換活性金属(クラスター)錯体の不斉中心の構築と不斉誘導法を開発した。ホモキラルな四面体型Chiral-at-Zn(II)錯体による種々の基質を用いた不斉反応の条件最適化に加え、四面体型Chiral-at-Ni(II)錯体の自然分晶、四面体型Chiral-at-Co(II)錯体の合成、四面体型および三方両錐型Chiral-at-V(V)錯体のキラル補助配位子による不斉誘導を検討し、Ni(II)およびV(V)錯体のホモキラルな結晶のX線結晶構造の決定や、溶液中の構造安定性の確認ができた。 さらに、光学活性な単座およびビス二座NHC配位子により、炭素中心六核Au(I)クラスターのCAu6部分が方向選択的にねじれる不斉誘導に成功した。X線回折分析の結果、キラルなNHC配位子が結合した金クラスター部分は、Au-Au接触部の方向選択的な結合の伸び縮みによりジアステレオ選択的にねじれ、ホモキラルなCAu6クラスターに変化することがわかった。さらに、このねじれたキラルなCAu6構造は溶液中で安定に維持されることが、円偏光二色性分光法により確認された。今後は、キラルNHC配位子のライブラリーを利用した不斉触媒反応や新キラル材料の開発を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、光学的に純粋な四面体型Chiral-at-Metal錯体(Metal = Zn(II), Ni(II), Co(II), V(V)、およびNヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を用いた炭素中心六核Au(I)クラスターの完全不斉誘導に成功した。光学活性配位子を用いた不斉誘導法を確立し、さらに自然分晶法によるホモキラルNi(II)錯体の結晶の単離に成功した。後者のX線構造解析により、単一の鏡像体の分子間水素結合が、低温での自然分晶を容易にしたことを明らかにした。自然分晶が可能なラセミ体化合物は全体の5-10%と言われているが、この知見は自然分晶法の一般化に寄与することが期待される。以下に、二つの不斉誘導の例を挙げる。 【Chiral-at-V(V)錯体の不斉誘導】アキラルな非対称二座配位子を用いて、V(V)を不斉中心とする四面体型単核Chiral-at-V(V)錯体のラセミ体合成に成功した。これらは、それぞれ光学活性なアルコール配位子や光学活性スルホキシド配位子による配位子交換により、ホモキラルなChiral-at-V(V)錯体に誘導された。 【Chiral-at-Metal Cluster錯体の不斉誘導】単座の光学活性NHC配位子により、炭素中心六核Au(I)錯体クラスターの中心部分は、方向選択的にねじれたキラル構造に誘導された。X線回折分析の結果、キラルなNHC配位子により金(I)クラスター部分がジアステレオ選択的にねじれ、C1対称性を持ち光学的に純粋な金(I)クラスターに変化した。さらに、ホモキラルな金(I)クラスター部分の構造が、溶液中でラセミ化しないことが円偏光二色性分光法により確認された。この結果は、種々のキラルNHC配位子を利用した不斉触媒反応やキラル光学材料への展開が可能であることを示している。 現在、これらの錯体を用いた不斉触媒反応を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、キラル補助配位子を用いるChiral-at-Metal錯体の不斉誘導法の確立と自然分晶法の一般化を継続するとともに、光学的に純粋なChiral-at-Metal錯体を用いた種々の不斉触媒反応を行い、それらの触媒反応機構を実験・計測・計算により解明する。具体的には、以下の種々の不斉反応を検討する。 (1) 不斉Lewis酸触媒反応(M* = Zn, Ti):Diels-Alder反応、1,2-/1,4-付加反応、アルドール反応、(2) 不斉還元反応(M* = Zn):アルコールデヒドロゲナーゼ様還元反応、(3) 不斉加水分解反応(M* = Zn):meso体基質を用いるリパーゼ様加水分解反応、(4) 不斉酸化反応(M* = V):アリルアルコールのエポキシ化や1,3-水酸基転位反応、(5) 不斉重合反応(M* = V):ラクチドの開環重合反応、(6) 不斉転位反応(M* = Fe):Cloke-Wilson転位反応、(7) 炭素-炭素結合開裂反応(M* = Co) また、Chiral-at-Metal Cluster錯体については、炭素中心型錯体に加え、他の一原子中心型錯体(N, P, O)の分子設計・合成およびキラリティーの導入と不斉誘導を行う。さらに、異なる2種類以上の金属を含むヘテロ金属クラスターやクラスターの二量化を検討し、触媒活性中心の導入を行う。さらに、金属クラスター部分を混合原子価型に変換し、酸化還元触媒への適用を図る。高量子収率・長寿命の強リン光性Chiral-at-Metal Cluster錯体については、細胞内バイオイメージングに適用し、キラル構造の効果を調べる。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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