研究課題/領域番号 |
21H05023
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山元 公寿 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (80220458)
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研究分担者 |
神戸 徹也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00733495)
今岡 享稔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (80398635)
春田 直毅 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 特定助教 (90784009)
塚本 孝政 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10792294)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
193,180千円 (直接経費: 148,600千円、間接経費: 44,580千円)
2024年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
2023年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
2022年度: 27,300千円 (直接経費: 21,000千円、間接経費: 6,300千円)
2021年度: 83,980千円 (直接経費: 64,600千円、間接経費: 19,380千円)
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キーワード | サブナノ粒子 / クラスター / デンドリマー / サブナノ合金粒子 / 合金粒子 / サブナノ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代のポストナノ材料として注目されている原子精度のサブナノオーダーの合金粒子(サブナノハイブリッド合金)は、118種類存在する元素を原料に、元素種、原子数、原子組成の組み合わせが無限大に存在する新物質として、化学の分野に残された未開拓のフロンティアである。これまで、元素の原子数・組成を自在に操る精密合成プロセスと設計指針が見当たらず、手付かずの領域として残されていたためである。そこには想像を超える新しい物質群、新しい材料群が存在すると期待されている。本研究は、従来の絨毯爆撃型の物質探索研究ではなく、材料研究の醍醐味でもある所望の機能物質を設計して得る事が特徴である
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研究実績の概要 |
新しい機能性ハイブリッドサブナノ合金の設計と合成を可能とするため、準サブナノ粒子の新合成法の確立に取り組んだ。「アトムハイブリッド法」を応用し、これまで困難とされた「準サブナノ粒子」の精密な合成に初めて成功した。ナノ粒子とサブナノ粒子の境界に位置する準サブナノサイズの物質は、固体と分子の中間の性質を持ち得る興味深い物質群であるが、これまで精密な合成はほとんど達成されていなかった。 準サブナノ粒子の新たな合成法の開発を目指し、分子カプセルを利用してサブナノ粒子の合成を行う「アトムハイブリッド法」を応用するアプローチを検討した。具体的には、カプセル内部の金属イオンだけでなく、デンドリマーそのものを配位結合によって組み上げる手法を新たに採用することで、「超分子カプセル」の合成に成功した。
異なる元素を結合して協働効果を生み出すことは、金属触媒の性能向上に効果的な方法である。我々は高性能の水素発生触媒を設計するため、AIを用いて合金サブナノ粒子を探索した。その中でZr酸化物とPt金属との合金粒子の触媒としての可能性を突き止めた。しかし、酸化物(無機物)と金属のように物質のカテゴリーが異なる場合、ナノ粒子化でも決して混合しない。これに対し、概ね粒径1.3nm以下のサブナノスケールの粒子ではその組み合わせによらず自由な混合が可能であると予想した。 具体的にはSTEMのzコントラストを応用した元素識別動態イメージングを用いて、様々な二元素サブナノ粒子の原配列構造を解析した。通常は絶対に混ざり合わないZr酸化物とPt金属という異質な材料同士が、正則溶液に近いレベルで均一に混合することを発見した。このいわゆる「サブナノ超相溶効果」ともいえる現象を原子レベル構造から解明している(Angew. Chem . Int. Ed. 2022, 61, e202209675)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定した下記研究項目は極めて順調に進展しており、論文出版を行っている。 1. 機能性ハイブリッドサブナノ合金の設計と合成 2. 超周期表による元素代替超原子の設計と合成 3. 超多元素サブナノ合金の創製 4. サブナノハイブリッド合金の原子構造と機能解明、さらに、当初の研究計画外として研究途中で新たに下記の新概念や新手法につながる成果が得られている。(1)高分子金属錯体の立体構造解析の確立(2)AuAgCuの3原子分子の発見と原子ダイナミクス観測法の開発(3)ボロフェンナノシートの液晶性の発見、(1)の成果は高分子錯体の新たな構造解析法として今後、高分子分野への波及は大きい。(2)は従来知られていないサブナノ合金物質の発見につながる手法である上、化学の根幹をなす化学結合の開裂、形成のダイナミクスを直接観察する方法でもあり、新しいサイエンスにつながると期待できる。(3)はグラフェン、ボロフェンの類縁体の新物質であり、機能材料としてのグラフェンと同等のインパクトのある物質である。いずれも、今後大きな発展が期待できる成果であり、その端緒を開くものである。当初の想定を超える研究の進展があり、期待以上の成果が見込まれると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
周期表上の多様な金属元素に着目し、これまでに開発に成功した「アトムハイブリッド法」を用いることで、様々な金属サブナノ粒子及び合金サブナノ粒子の新規合成を行なう。これらの電子状態・立体構造の調査を通じてサブナノ物質群の基礎的物性について明らかにするとともに、特にサブナノ物質群特有の物性と元素固有の性質・反応性を組み合わせることで、光学特性・触媒特性などの新規機能を解明し、ライブラリとして纏める。 高酸化な遷移元素を含む複合酸化物は低酸化状態の配位不飽和点を形成しやすく、酸化反応触媒に適している。一般に、複合酸化物は、水熱合成や焼結などの高温下における加熱反応を必要とするため、複合酸化物のほとんどは高い結晶性を有している。そのため、非晶性に富む複合酸化物は、従来法では合成できず、その化学特性はほとんど理解されていない。アトムハイブリッド法により非晶性複合酸化物の合成に挑戦し、新しい触媒機能の開発を目指す。 原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、サブナノスケールの物質特有の原子動態をリアルタイムかつ定常状態として捉えることに成功している。これと組み合わせるAI画像処理・解析技術を開発することで、全く新しいナノ物質動的構造解析手法の自動化を目指す。例えば原子の座標トラッキングに基づく構造の分類、さらには原子の種類識別までをAI(人工知能)で可能とするサブナノ粒子構造解析法の確立を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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