研究課題/領域番号 |
21H05028
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梶原 康宏 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (50275020)
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研究分担者 |
武田 陽一 立命館大学, 生命科学部, 教授 (20423973)
佐藤 あやの 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 准教授 (40303002)
和泉 雅之 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (80332641)
川本 晃大 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90631523)
岡本 亮 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (30596870)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
189,670千円 (直接経費: 145,900千円、間接経費: 43,770千円)
2024年度: 35,230千円 (直接経費: 27,100千円、間接経費: 8,130千円)
2023年度: 35,230千円 (直接経費: 27,100千円、間接経費: 8,130千円)
2022年度: 35,230千円 (直接経費: 27,100千円、間接経費: 8,130千円)
2021年度: 48,750千円 (直接経費: 37,500千円、間接経費: 11,250千円)
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キーワード | 糖鎖 / タンパク質 / 糖タンパク質 / 糖水和 / 糖鎖タグ / 水和水 / チオアシッド / メルカプトアミノ酸 / 糖ペプチド / 水和 / 糖鎖水和殻 / CryoEM / 膜貫通型糖タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、単一構造の糖鎖をもつ糖タンパク質を短工程で合成できる新規法の確立を目指す。そして、その糖鎖を自在に換えて糖タンパク質の物理化学的性質や水との相互作用能力の変化、およびタンパク質間相互作用への影響を調べる。また、生細胞上での膜1回貫通型糖タンパク質の合成ならびに細胞表層での動的挙動を追跡する。さらには、合成糖タンパク質プローブを細胞内のゴルジ体へ挿入し、そこを始点とする糖鎖生合成の追跡、CryoEMによる合成糖タンパク質―受容体複合体の構造解析を検討する。これら実験により、合成法も含め糖鎖、タンパク質の機能を理解する世界的に例のない統合的アプローチを実施する。
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研究実績の概要 |
インターロイキン(IL)6は、二本のN型糖鎖をもつ。IL6の3次構造はprotein data bankに報告されている(PDB:1IL6)が、43、143位にはあるべき糖鎖が結合していない。その結果143位のアスパラギンの側鎖はIL6の内部に配向している。もし、143位に糖鎖が結合すれば側鎖および糖鎖が外側に向く3次構造となる。そこで、この143位に糖鎖をもつIL6の合成を検討した。まず1-141位のペプチドのC末端に故意にシステインを導入したセグメントを大腸菌で発現した。そして1-141(+142Cys)をフォールディングさせ天然型の位置のジスルフィド結合を形成させた。その結果、C末端のみシステインを遊離とすることに成功した。そして、このシステインチオールを利用するprotein-folding-assisted thioesterificationに成功し1-141ペプチドチオエステルを得た。しかし、この1-141位のフラグメントはすぐに沈澱し次の反応は不可能であった。そこで、4つのシステインのチオールにN型糖鎖を保護基として導入し、糖鎖の浸水性を利用してペプチドを可溶化した。そして142-180位(143位にN型糖鎖を導入済み)セグメントとの連結後、糖鎖保護基を脱離、全長のフォールディングをおこない標的IL6の合成に成功した。また、この合成では固相合成法を一切使っておらず、次世代の合成法を確立したといえる。そして、得られた化合物の生理活性を調べたところ市販のIL6と同等の活性を示した。また143位に糖鎖をもつIL6の構造をMD計算で解析したところ143位が水の相に配向した真の糖タンパク質構造を推定することができた。糖鎖と水の相互作用をNMRで調べるために特殊なサンプリング法を開発した。その結果、糖鎖が長くなるほど水のT2緩和値が極端に小さくなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疎水性により沈殿するために合成が不可能と思われていた疎水性糖タンパク質を、糖鎖タグをつかうことで合成に成功した。これまで、タンパク質の構造が多く調べられているが、そのほとんどが糖鎖を除去した形で報告されている。これは、糖鎖がつくことでタンパク質の結晶化が阻害されることが原因である。その結果、一部のタンパク質は糖鎖がついた場合と違う構造が報告されていた。本研究では、それら糖タンパク質も化学合成し、生理活性があることを確認することで、そのような分子の存在がありえることを示すことができた。このような生理活性糖タンパク質は、1-2個の分子があれば細胞1つに対して活性を示すと思われるのでその存在を無視することができない。また本研究では、最近急激に進歩しているコンピューターシュミレーションを使い得られた結果と、化学合成、生理活性試験と合わせ、本来の糖タンパク質の構造を推定することができた。これにより、いままで糖鎖が結合していないことで生じる違う構造のタンパク質の3次構造を修正できることができた。βメルカプトアミノ酸の合成例を増やすことができた。糖鎖タグとβメルカプトアミノ酸を利用することで世界的にもっとも簡便な糖タンパク質の合成を実施する方法を提案することができた。糖鎖の機能として水と相互作用し、タンパク質複合体を安定化するという仮説を証明するため、必要な実験およびそのデータを集め解析している。この研究も順調に進んでおりR6年度にはまとめ論文発表できる目処がたってきた。
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今後の研究の推進方策 |
糖鎖の機能として水と相互作用し、タンパク質複合体を安定化するという実験をさらに推進する 簡便な糖タンパク質の化学合成法が確立できたのでさらに合成例を増やす CryoEMでヒト型フォールディングセンサー酵素の構造が解けつつあるのでさらに推進する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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