研究課題/領域番号 |
21H05036
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桜井 武 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60251055)
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研究分担者 |
松本 正幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50577864)
佐々木 拓哉 東北大学, 薬学研究科, 教授 (70741031)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
189,670千円 (直接経費: 145,900千円、間接経費: 43,770千円)
2024年度: 32,630千円 (直接経費: 25,100千円、間接経費: 7,530千円)
2023年度: 33,540千円 (直接経費: 25,800千円、間接経費: 7,740千円)
2022年度: 36,270千円 (直接経費: 27,900千円、間接経費: 8,370千円)
2021年度: 54,600千円 (直接経費: 42,000千円、間接経費: 12,600千円)
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キーワード | 視床下部 / 冬眠 / 低代謝 / 体温 / 代謝 / 体温調節 / 視索前野 / 睡眠 |
研究開始時の研究の概要 |
Qニューロン誘導性低代謝の作用機構を明らかにし、Qニューロンの生体における活動様式および生理的意義を解明、およびQニューロンの発現遺伝子を明らかにし将来ヒトのQIHの誘導技術につながる知見を得ることを目指す。DMHにおけるQニューロンのターゲットニューロンを同定、Qニューロンの生理的な活動動態の解明、QIH中の意識・記憶や自律神経系機能および体内時計の機能の解析を行う。さらにQニューロンのトランスクリプトーム解析によりQニューロンを興奮させるための低分子化合物を探索する。
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研究実績の概要 |
Qニューロンサブタイプ(Qe、Qi、Qh)の機能を解明するべく、Qrfp遺伝子にlox-Flp-loxをノックインしたマウス(Qrfp-flox-Flp)を作成した。現在、Flp発現の確認を行っている。また、AAVにより発現した蛍光タンパク質を蛍光免疫染色し、QeおよびQiでの投射先パターンの比較を解析している。また、Qニューロンの制御機構の解明として、Qrfp-iCreマウスのAVPeへAAV-DIO-GCaMP6を投与することによりGCaMP6を発現させ、ファイバーフォトメトリーによってQニューロンの活動の変化を観察し、外気温の変化に対する応答や、絶食にともなう休眠誘導におけるQニューロン活動を明らかにした。 QIH中の生理・神経機能の解析を高時間分解能で行うため、光遺伝学により長時間のQIHを誘導する実験系を構築した。OPN4(メラノプシン)を用いて微弱な光でGqシグナリングを活性化させることにより神経の興奮を試みた。また感度を上げるために不活性化に関与するC末端側のリン酸化クラスター領域を欠損させた(hOPN4dC)。Qニューロンに発現させ光照射の体温への影響を観察した。3-10 mWという極めて弱い光で体温の低下を誘導することが可能であった。24時間という長期間にわたって光照射を持続させても神経の損傷は観察されず、何度もQIH誘導が可能であった。この系を用いて、これまでにQニューロンの活性化によって体温の低下に先行して心拍数が急激に低下することを見出しており、Qニューロンの新しい機能を提唱した。さらに、光照射を終了することで30分以内に元のレベルに体温が戻ることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DREADDによるQIHは、その回復に数日以上を要し、その間、ゆっくりと回復するため、QIHが生理機能に及ぼす役割を解明するために若干使いにくい点があった。 そこで、QIH状態を高い時間分解能でオン・オフできる、光操作によるQIH誘導法を確立した。まずは、QIH導入およびQIHからの離脱時の自律神経応答を明らかにした。OPN4を改変したオプシン(OPN4dC)をもちいて、極めて微弱な光で24時間にわたりQIHを操作できるようになった。この論文が出版されているほか、上記のように今後の推進に必要なQrfp-flpOマウスを確立するなど、着実な進捗が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
Qニューロンには、vGlut2陽性のQeニューロン、vGat陽性のQiニューロン、および両方を発現しているQhニューロが存在することがわかっている。そこで、それぞれのサブポピュレーションの機能と解剖学的特徴を明らかにする。上記のQrfp-Flpマウスをもちいて、Flp依存的なAAVをもちいて、hM3Dqを発現させ、QIHの誘導を確認しり。この系がうまく動けば、Qrfp-FlpマウスとvGat-ires-Creあるいは、vGlut2-ires-Creと交配し、Flp/Creの両方に依存的なAAVコンストラクト(Con/Fon)を用いて、hM3Dqを発現させ、Qe+Qhニューロンのみ、あるいは、Qi+QhニューロンのみによるQIH誘導を試みる。さらに、順行性および逆行性トレーシングを行い、QeおよびQiニューロンの入出力系を明らかにしていく予定である。一方、Q-loxP-Flp-loxマウスも確立した。このマウスをvGlut2-ires-CreやvGat-ires-Creと交配することにより、それぞれ、Qiニューロンのみ、QeニューロンのみによるQIHや、入出力系の観察が可能になる。また、Qrfp-Flpマウスをもちいて、AVPeにFlp依存的なAAVによりhM3DqやOPN4dを投与することにより、効率よくQニューロンにそれら の遺伝子を発現させることが可能になる。これにより、CreをもちいたTRAP2法を行い、ターゲットニューロンのラベルを進めていく。一方、ファイバーフォトメトリ―をもちいて、外気温の変化などに対するQニューロンの応答を明らかにしていく。さらに、Qニューロンに作用する生理活性物質をスクリーニングし、icvによる体温への影響を明らかにしていく。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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