研究課題/領域番号 |
21H05040
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
皆川 純 基礎生物学研究所, 環境光生物学研究部門, 教授 (80280725)
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研究分担者 |
村田 和義 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 特任教授 (20311201)
山本 大輔 福岡大学, 理学部, 教授 (80377902)
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研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
189,150千円 (直接経費: 145,500千円、間接経費: 43,650千円)
2024年度: 36,010千円 (直接経費: 27,700千円、間接経費: 8,310千円)
2023年度: 36,010千円 (直接経費: 27,700千円、間接経費: 8,310千円)
2022年度: 36,010千円 (直接経費: 27,700千円、間接経費: 8,310千円)
2021年度: 45,110千円 (直接経費: 34,700千円、間接経費: 10,410千円)
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キーワード | 光合成 / 緑藻 / 環境適応 / NPQ / クライオ電子顕微鏡 / 高速AFM / 葉緑体 |
研究開始時の研究の概要 |
光合成系の集光アンテナは最適な集光をするために発達したが、同時に過剰光環境下にあっても光化学系が壊れないよう保護機構も備えた。過剰な光エネルギーを安全に熱散逸するNPQ(non-photochemical quenching)が極めて有効な保護機構であることがわかってきたが、必要因子の誘導伝達系、熱散逸場の構造、反応メカニズムなど不明点は多い。本研究は、強光シグナルによって開始される一連の光保護反応の一般則を確立する。
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研究実績の概要 |
Ostreococcus tauriは、海洋に偏在するピコ植物プランクトンであり、初期分岐型緑藻である。クライオ電子顕微鏡による構造解析により、その光化学系I超複合体は、光捕集複合体I(LHCI)および原始生物特有の光捕集複合体(Lhcp)と集合することによって光捕集能力を拡大させており、陸上植物型とコア緑藻型のPSI超複合体のハイブリッドな特徴を示していることがわかった。PSIコアの片側にはLHCIベルト、もう片側にPsaGとPsaHの間にはLHCIハーフベルトが結合していた。Lhca6とPsaKの間の第三の側面にはアミノ末端のスレオニンがリン酸化された1個のLhcp1モノマーと8個のLhcp2モノマーが、3つの三量体としてオリゴマー化しPSIと会合していた。Lhcp1のリン酸化とPSIの光捕集能は可逆的な光化学反応を示したことから、OtPSI-LHCI-Lhcp超複合体の形成は光強度変化によって誘導されるリン酸化依存的な機構による可能性が高いことも示唆された。非光化学消光(NPQ)は、緑藻類においては光保護タンパク質LHCSR1、LHCSR3、PsbSによって制御されている。最近、これらの光保護タンパク質をクラミドモナスにおいて過剰発現させることで、NPQ応答が著しく高くなるdet1-2 phot変異体が発見された。この応答がクラミドモナス細胞に与える生理的影響を詳細に解析したところ、野生型細胞が生存できないような高照度下で、det1-2 phot変異株は効率よく増殖できることがわかった。この変異体は、暗所でのPSII断面積が小さく、暗所での光化学消光のクロロフィル蛍光パラメータの上昇(qPd > 1)を示したことから、NPQ状態における周辺部の光捕集複合体II(LHCII)アンテナの剥離が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が始まり1年半の時点であり、まだ研究項目全判に亘り展開を図っている時期だが、ほぼすべての研究項目において研究は着実に進展し成果が得られている。論文化も順調に進んでいる。当初計画どおりに進めた場合では期待値が低いと判断した課題は基盤技術の根本的な整備を図ると同時に、予備課題「原始緑藻における光環境適応の構造基盤」を立ち上げたが、その結果が想定以上であり、これは重要論文としてすでに出版された。本研究は、今後の研究展開において、緑藻、陸上植物双方の光環境適応戦略を理解を深める上での重要な布石となることは確実である。さらに、順調に進んでいる緑藻の LHCSR 強光発現誘導研究の成果の中からも予期外の結果が得られており、光合成研究の枠を越える重要な貢献に至る可能性も出てきた。総じて順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.緑藻のNPQはゼアキサンチンに依存しないとされてきたが再検証が必要である。これらの解析に有効な変異株det1をすでに見出しているため、各種変異株を作成した上で、緑藻におけるゼアキサンチン依存NPQを詳細に解析する。 2.植物チラコイド膜の高速AFM解析技術基盤が整備されたので、PSII超複合体マクロ構造とNPQ機能の連関に関するin situ動態解析を進める。 3.原始緑藻PSI超複合体構造は、従来色相順化と考えられてきたステート遷移の再検証の必要性を示唆している。この可能性を、各光化学系超複合体の精密精製、光学特性の解析、生化学特性の解析により検討する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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