研究課題/領域番号 |
21H05042
|
研究種目 |
基盤研究(S)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分H
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩原 正敏 京都大学, 医学研究科, 教授 (10208423)
|
研究分担者 |
粟屋 智就 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20589593)
武内 章英 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90436618)
吉澤 拓也 立命館大学, 生命科学部, 講師 (50779056)
網代 将彦 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (60761864)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-05 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
189,280千円 (直接経費: 145,600千円、間接経費: 43,680千円)
2024年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2023年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2022年度: 36,790千円 (直接経費: 28,300千円、間接経費: 8,490千円)
2021年度: 42,120千円 (直接経費: 32,400千円、間接経費: 9,720千円)
|
キーワード | 病的液-液相分 / SRタンパク / RNA ポリメラーゼII / 転写 / スプライシング / 病的液-液相分離 / SRタンパク質 / RNA結合蚕白質 / 液-液相分離 / RNAプロセシング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、我々が開発してきた技術・化合物と、液-液相分離を細胞内で観察・介入するケミカルバイオロジーの新しい研究手法を駆使して、RNA結合タンパク質やRNA合成酵素のリン酸化依存的制御機構の新断面を開き、ウイルス感染、転移がん、遺伝病等に伴う遺伝子発現の異常について病的相分離という新しい観点から分子病態に新解釈を提起することを目指す。本研究によって、種々の疾患に対する創薬理論が根本的に変化する可能性がある。
|
研究実績の概要 |
液-液相分離は化学分野では古くから知られた現象であるが、特に近年、KHドメインやRRM(RNA recognition motif)とLCドメインの双方を有する複数のRNA結合タンパク質が濃度依存的に相転移を起こしてハイドロゲル上の分巣集合体を形成するなど、細胞内のRNP下流形成モデルが示され、RNAバイオロジーの新しい研究対象として注目されるようになった。 本研究では、我々が開発してきた技術・化合物と、液-液相分離を細胞内で観察・介入するケミカルバイオロジーの新しい研究手法を駆使して、新しい視点からSRタンパク質のリン酸化依存的スプライシング制御機構の新断面を開き、遺伝性疾患、ウイルス感染、がん等に伴う遺伝子発現の異常について病的相分離という新しい観点から分子病態に新解釈を提起することを目指す。近年勃興してきた液-液相分離による遺伝子発現制御機構の新解釈が、これらの疾患の分子病態をどこまで説明出来るのか、またその病的液-液相分離の是正が、新たな創薬理論となり得るのかという学術的「問い」に挑戦している。 SRタンパク質SRSF1の液-液相分離状態をin vitro再構成系を構築することに成功し、その制御によりCOVID19のようなウイルス感染症や悪性腫瘍に対する効果的な薬剤を開発できる可能性が見出された。またCDK9阻害剤であるFIT-039を作用させることで、マウスモデルでKSHV陽性腫瘍細胞の増殖の顕著な抑制が認められたため、FIT-039がウイルス依存的な悪性腫瘍治療薬になり得る可能性が見出された。これによって、本研究から病的な液-液相分離状態の正常化を図る創薬を実現できる可能性が大きくなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担研究者の一人がアカデミアから民間企業へ異動した事情で分担研究者からはずれたが、研究協力者として引き続き当該課題への協力を依頼し、研究代表者および他の研究分担者が連携して研究計画を実施することで本研究の更なる効率化を図り、以下の成果が挙がった。SRタンパク質SRSF1の液-液相分離状態をin vitro再構成系を構築することに成功し、その制御によりCOVID19のようなウイルス感染症や悪性腫瘍に対する効果的な薬剤を開発できる可能性が見出された。またCDK9阻害剤であるFIT-039を作用させることで、マウスモデルでKSHV陽性腫瘍細胞の増殖の顕著な抑制が認められたため、FIT-039がウイルス依存的な悪性腫瘍治療薬になり得る可能性が見出された。これによって、本研究から病的な液-液相分離状態の正常化を図る創薬を実現できる可能性が大きくなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
精製SRSF1タンパク質を用いた液-液相分離のin vitro再構成系を構築することが出来たので、in vitroで観察された液-液相分離のリン酸化依存的制御機構が、in vivoでも重要な役割を果たしていることを実証し、その異常に起因する病態を改善する方策を見出すことが次の課題となる。また、Sfpqの機能異常による液-液相分離構造の異常と、それよる転写・RNAプロセシング制御の変化を解析し、正常な液-液相分離構造の生理機能の解明と、病的液相分離構造による細胞機能の異常を明らかにする。転写・RNAプロセシングを制御するRNAPIIを含む流動性の高い液-液相分離構造内の分子複合体を免疫沈降と質量分析により網羅的に同定して、分子制御マシナリーを明らかにしてさらに転写・RNAプロセシングの新たな分子制御メカニズムの解明を行う。トリプレットリピート病の核内RNA-RNA結合タンパク質の相互作用について解析し、我々の保有するリン酸化制御化合物がその核内構造へ与える影響と、治療薬としての開発可能性について検討する。KSHVウイルス遺伝子の転写調節をCDK9経路に依存したRNAPIIの液-液相分離状態を変化させる、新しいカポジ肉腫阻害剤の可能性が見出されたため、その実用化に向けた検討を開始する。またCLKによるSRタンパク質のリン酸化と機能を亢進する薬剤RECTASによって、ガン細胞のネオ抗原の発現が高められる可能性が見出されたため、RECTASをがん免疫増強剤として実用化できる可能性について検討する。
|
評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
|